第3話 仲間
敢えてアストリス王国に戻る。とはいえ首都には戻らない。この王国の最北部の街に向かうんだからな。俺はある目的があって大陸の最北端に行く予定がある。なぜなら大陸北部は空白地帯だらけだ。身を隠すのにうってつけで計画遂行のために完璧な土地だ。だからちょっと、全財産とまではいかなくても半分は使うぞ。
「さて…まずは馬車買って…馬も買うからこれで500Gは使うな…あと1ヶ月分の食料、薪と炭…テント…。」
メモを見ながらクソうるせえ喧騒の中買い物をしていく。愛馬がいるとはいえ1頭では馬車を引くのは辛いだろう。あと5頭買って、馬車は2台買って、それも人が3人乗れるのと食料やさまざまな荷物を入れられるかなり大きい馬車だ。見た目なんかどうでもいいから完成品を見つけ、あちこちの店に行き食料と薪を買いまくる。テントも5個購入する。荷台はもうパンパンだ。いやー600枚は使ったね。お前の国の経済発展させてやったよバカ王。あ、あと2人は寝れるスペース作らんと。
さて…次は仲間を探すか。馬車と荷物は一旦預け、あるところに向かう。それはこのクソ王国の黒い部分だが、この世界では当たり前と言える場所だ。少し治安の悪い場所に向かおう。歩いて、角を曲がり、たまにチンピラに絡まれたけどむかついたからボコして金強奪するが、そのおかげで例の場所を探すのに迷っているとボロいフードを被った一人の男が話しかけてきた。
「へへへ…旦那、何をお探しです?」
「ん?おまえ…『商人』か?」
「へへへ…ようわかりやしたね。欲しいのならこちらへ…」
下衆い笑みだねえ。ま、金さえ払うから文句を言われる筋合いもないしそんな不安もないが。
『商人』についていき、路地裏に隠されていた階段を降りて入る。
薄暗く、蝋燭で照らされたそこにはさまざまな種族の奴隷が売られていた。前に傭兵として参加したジン王国は人間同士で戦争していたとはいえ、捕虜には人道的な対応をしていたからそんなことはなかったが、この国は…やはり亜人にやってるな。
獣人やそのほかにもゴブリン、オーク…ちっ、エルフとドワーフもいると聞いていたが先に買われていたのか。…ってん?ゴブリン?オーク?
「お、おい店主、なんでゴブリンとオーク?ナンデ?ナンデナノ?」
「あー…実を言いますとね、最近この国も奴隷売買で『入荷』しないんですよ。エルフとかドワーフとかはそれで人気でしてね…間が悪く北部のスラムも身動きが取れないとかで。んで、知能のあるゴブリンとオークを頼んで入れてみたんですよ。」
「天災かお前?」
だからってオークとゴブリンはねえだろ。知能あるとはいえ連れてたら誤解されるわ。つか間違いなく弓矢打つド畜生いるだろ。…?待てよ‥?使えるかもしれん。
「まぁいいや、選びたいから見て回っていいか?」
「いいですよ。ランク…まぁ奴隷の状態ですが、傷ついてたり病気だったりしている者はランクが低く、状態が良ければランクが高いです。Dランクは10枚、Cは20枚、Bは50枚、Aは100枚、Sは200枚でっせ。」
なんでそこ英語やねん。おかしいやろコラ。気にしたら負けかもしれんが気にするわこの馬鹿たれが。まぁいい早く探そ。
「へいへい。Sランクなら5人は買えるが…そんな無駄遣いはできないな、とりあえずBランクのゴブリンとオークを一人ずつ。」
なんとなく目の前にいた2人を選ぶ。ガチャッ、と言う音を立てて牢が開いて契約して100枚渡す。あとは獣人が欲しいな。Aランクの。
場所を聞き、「ここですよ。」と案内される。
…ひでぇな、痩せこけてるじゃねえか。ガリガリだぞ…
「おい、ちゃんと飯は食わせてるのか?」
「…1日にパンを2枚だけですね。あと水です。選ばれなければ死ぬまでですよ。」
「そうか、ならそこの女の子の獣人を。Sランクだろ?」
契約しなくちゃならんな。200枚渡して…。おや?
「ケホッ…ケホッ…」
「大丈夫だよ。大丈夫だからな?」
人間的に見ればまだ10代くらいか?15歳と13歳くらいに見えるが日本だと中学生だぞ?しかも兄妹か…この国腐ってんな。しかし兄の方はなんだ、目つきは鋭く、筋肉もついてる。妹の方はうーん、大丈夫か?多分咳といっても喘息とか身体が弱いから埃とかにやられたかだな。
「おい、この二人のランクは?買いてないが。」
「ん?この二人は入荷したばっかりですが、女の方は少し体が弱くてですね、まーセットで売ろうかと。60枚でどうです?」
「契約するわ。」
商人が鍵を開ける。いやお前よくどの檻と鍵か覚えてんな。すげえよ。300あんぞ?表の仕事でも上手くやってけるだろ。鍵開けてるこいつの後ろ姿見てたらなんか腹立ってきたな。尻蹴ろうかな、なんかクソ上司思い出したわ。
予想外の出費だが、兄妹が怯えながら出てくる。兄の方は俺を睨みつけてくるがそんなんじゃ怯まないぞ?戦場帰り舐めんな。
まぁそんなことはどうでもいい!のこり1040枚か…。やるか。
「おい店主。」
「なんですかい?」
おれは340枚の金貨を渡す。店主が本気で驚いており、俺を凝視する。
「な、奴隷を買わないのにな、なぜ?」
「これで食料を買え、340枚ならそれなりのスープでも5ヶ月分は買えるだろ?あと蝋燭も腐るほど買え。」
「へ、へい!!」
甘いことをしてるな俺は…。だがこの檻を見てたらな…。
「ま、今回は俺の気分だ。ガリガリの奴らよりちゃんとした身体してる奴の方が見栄えがいいだろ?あととにかく明るくしろ。そしてたまに太陽の陽を浴びさせろ。壊れるぞ。狂うぞ。いやまじで。」
「…光と太陽が人間の身体になにか関わりがあるんですかい?」
ある。まじである。太陽の光を浴びないとビタミンD不足による骨粗しょう症のリスク上昇免疫力低下、気分の落ち込み・うつ病リスク増加睡眠の質の低下など、心身に様々な悪影響が出るのだ。暗いところに良すぎるのもよくないのだ。光の強さは自律神経系とホルモン分泌に影響を与えるのだ。まじだぞ?本当だぞ?まぁこの世界にはそんな単語はないから砕けて伝えるが。
「まーようはどんな強え奴でもダメになるってことだ。商品をダメにするより、よくした方がいいだろ?」
「いやーこれについては初めて知りましたわ。感謝しますよ。」
「んじゃ買い物終わったから俺はいくわ。あーあと…」
俺は店主に振り向いて睨みつける。
「食料と蝋燭代をてめえの私腹に使ったら…知った瞬間殺すからな。ちゃんと奴隷に使えよ。」
「ヒッ…わ、わかりました!」
俺は5人を連れて出る。とりあえず服と鎧と武器を買わせねえと。あと喋らせません。今はしゃべられたら困るんです。あと…Sランクの獣人すっげえ。んー美人!!犬耳だぞおい!人間と同じながら犬耳ですよ!最高ですよ!ヒャッハー!!
意気揚々と鎧とか服買って。あと匂いがアレですのでお風呂に入らせて綺麗にした後街から出る。いやー5人驚いてたね。そりゃそうよ、大量の荷物が乗ったやつと3人は乗れる2台の馬車だもん。馬6頭だもん。すごいね金持ち。
5人を乗せて道を移動して俺が手綱を引き、暇つぶしに草原を眺める。右手を挙げてしゃべっていいぞと合図する。最初に口を開いたのは男の子と獣人だった
「な、なぁ…いや、ご、ご主人…様?なんで俺たちを…?」
「ご主人様って呼ばなくていい。恥ずかしいからな。弘中って呼んでくれ。そっちの方が気楽だ。少ししたら昼飯にするからそこで話す。」
「は、はい…ヒロナカ様。」
意外と可愛いじゃねえか。買った理由?単純だよ。昼飯の準備を始める。
落ち葉を集めるよう兄妹の二人に頼んで、薪をくべてライターで火をつける。5人がライターに驚くが気にしない。肉と野菜のスープとパン、栄養をつけなきゃな。おいおい、目が輝いてるよ。そんなに腹減ってたのか…。
兄妹なんてスープ食って涙流してるな。オークも顔が赤くなり頷いてる。ひでえな…。
「おかわりもあるぞ。それでだ坊主、お前たちを買ったのはな、まぁなんだ、仲間が欲しいと言うのもあったが、お前ら二人は偶然だよ。ただ目に入ってな、あのクソ野郎が気に食わねえってのもあったしそれでだ。しばらくはあそこの奴隷たちはまともな飯を食えるだろうよ。」
「そ、そんな理由なの!?」
「い、いいのかな…?」
いやまじで。気にするな女の子よ。まー3人はちゃんとした理由があるがな。
「3人は別だ。オークはとにかく力がある。馬車がぬかるみに挟まってもどうにかなるし、戦いになったら暴れさせてやるよ。ゴブリンは偵察で使う。」
「オデ、役ニ立ツ。マカセテクレ。」
「俺ハ偵察担当デゲスネ?ワカッタデゲス。」
オークとゴブリンが力強く頷く。頼りになるな。契約書があるとはいえ無碍には扱わないぞ。うんうん。あれ?獣人の美人さんが俺を見ているな。
「あの…私は…?」
「そりゃ花ですよ花。オークですよ?ゴブリンですよ?子供獣人兄妹がいるとはいえおっさんの俺ですよ?ほぼ珍獣パーティーですよこんなの。やはり美人がおらんとね?最高ですわ!ぬはは!」
「…は?」
俺が笑いながら言うと獣人の美人さんが俯いて震えている。顔を上げるとにこやかな笑みを浮かべてくる。青筋立てて。あ、アカンわこれ。なんか俺の背後に立って腹掴んできたぞ!?
「私はそんな事で買われたんですかー!!」
ジャーマンスープレックスだとォォォォォ!?いてえ!俺じゃなければ首いってた。さすが俺。
「最低だ…」
「最低だよ…。」
「オデデモワカル、最低。」
「最低デゲスネ。」
「最低よ!」
ボロクソじゃねえか!やめて、みんなして可哀想な目で見てくるのやめて。オーク!!おいこらお前!なんで青筋立てとんじゃ!?
「すいませんでした、お許しください。」
「わーかりました。許します。」
「ナンダコレ」
俺が知りてえよ。
「半分は冗談だが、本当のことを言うとな?俺には目的があるんだよ。」
「目的ですか?」
「これから俺たちはこの大陸の最北端に3〜5ヶ月かけて向かう。足りない食料は北部に入ったら調達するから安心しろ。それでだ…目的はな…?」
5人が俺を見つめる。
「村から始めて…そして国を作る。」
5人の表情が本気で崩れた。嘘に聞こえるか?俺は本気だ。まじで作るぞ国を。




