第26話 問題解決の道 part1
クレアとクリストフが訓練を受けている間、俺も何度か領地に戻りやることをやっていた。シルクを鍛えるだけではなく、3国同盟の話を聞き、傘下になりたいという街や村からバンバン使者がきたのだ。勿論受け入れて、3国同盟の人口は7万になる。
兵士の数は6千。戦う準備は整った。タキア連合も傘下の街を増やし、合計の人口3万になり総兵力は3千に増えた。俺たちはあの馬鹿どもの倍の戦力だ。負ける気がしない。だが全戦力を投入するわけにはいかないので三千七百人を投入することにしたい。
セリス=セレスティア王国の城はまだできてないから旧セレスティア王国の城に向かい、全幹部と女王による軍議が始まる。
あとシルクとの鍛錬はしばらくお休みだ。戦争が近いからな。
「というわけで時が来た。タキアに対し宣戦を布告する!」
「異議なし!」
「やっと故郷を取り返す時が来た!長かったな…」
リュシアンの気合いが凄い。それも当然だろう。仲間の仇を取れて、しかも故郷を取り戻す日が来るのだ。義のために参加したアルス、リュック、ザックも士気が高く、闘志を漲らせてる。
「総力戦と行くか!」
「待ってくれヒロナカ殿、実は我が騎士団に2人の知恵者がいるのだ。ぜひ紹介したい。」
「え?まじで?」
リーゼが頷くと2人の女性が入ってくる。片方は20代後半辺りに見える。だがもう片方は…ルキと歳が変わらねえぞ!!
俺達北部自治領のメンバーはざわつき、ノーラとレベッカは笑みを浮かべる。
「アネットとアリシアだ。北部自治領には武人はいても軍師がいないと聞いてな、この会議に参加させようと思ったのだ。二人とも、自己紹介を。」
「アネットと申します。大軍同士の戦での指揮は初めてですが、必ず勝てる策を献策します。よろしくお願いします。」
「ア、アリシアと申します!まだ見習いですがよろしくお願いします!」
アネットは礼儀正しく、アリシアは少し緊張している。そりゃそうだ。オークとケンタウロスとかビビるもの普通は。
「…小娘が軍師だと?」
「見習いと言っていたな。しかし…」
アルスとジャグが難色を示す。いや、北部自治領のメンバーも同じ気持ちだろう。
「彼女は誰よりも賢い。知略に関して、アネット以外は勝てなかった。だからこそ経験を積ませるために連れてきたのだ。」
「不安になるのもわかります。ですが、まずは私とアリシアの話を聞いてから決めるのも遅くはないのでは?」
「わかった。では2人の意見を聞こう。」
アネットの発言にも一理ある。知らずに批判するのは言語道断であろう。人を見かけで判断してはならない。
「はい、それではまず私達3国同盟は訓練により練度が高く、兵力も相手の倍は揃えています。戦略的にも勝てる条件は整っているように見えるでしょう。」
アネットの意見は正しい。敵を攻めるなら相手の倍は必要だ。俺たちはその意見に頷くがアリシアが問題点を指摘する。
「ですが、これは相手も同様ですが指揮権が統一されておらず、その、北部自治領の皆様には申し訳ありませんが多種族連合故に、連携が難しいです。」
「無礼を承知で申し上げれば、ケンタウロスとオークとコボルトを同部隊にしても、機動力に差が出ます。」
「個々の種族は強くても、弱点を突かれれば各個撃破の的、つまり各種族の族長の連携の意思があっても難しいのです。」
自衛官達がその発言に頷き、こちらは頭を抱える。確かにその問題に気づけなかった。個々の種族の能力を活かせば良い。それだけしか考えなかったから。
「私達三国同盟はトータルで考えるといまこの北部では上位に行きますが、それは表向きで問題が多く、開戦するにはまだ時期尚早なのです。」
「それだけではありません。今の人口だからこそ、表面化しませんが大国になったら間違いなく問題が起こります。政治制度、民に対する対応…多種族国家の建国を試みるヒロナカ殿はそれについての対策はあるのでしょうか?」
全員が俺を見る。一つだけある。いや、恐らくこれしかないだろう。昔から歴史好きだった俺が考えついた物。
「ある。民主主義と立憲主義のハイブリッドだ。民主主義は部分的だがな。」
「そうくるか‥」
「民主主義?異世界の制度か?」
ジェイクが質問してくると俺は頷く。
「王は必要だが、全種族から1人ずつ王にすると混乱するから流石に1人しかいないが…。議員を各種族3人ずつにする。だが選ぶのは‥国民だ。最終決定権は王にあるが、政策を考えるのは政治家だ。そして各種族の政治家達が話し合い、政治家の多数決で決め、王が決定する。ただし五分で拮抗した場合は王が決める。」
「ど、どういうことですか?議員を国民が決めるとは!?」
「俺や弘中の世界の制度の一つだわかりやすく言えば議員や政治家になりたい者が立候補する。それを国民が誰がいいかを名前を書いて投票する制度だ。」
この世界にはない制度だろう。俺が提案した時、2人は驚いていたからな。
「そして不平等防止のため、先程の通り、全種族3人までしかなれないし、必ず全種族立候補してもらう。だが人間が10人立候補しようが、エルフが1000人立候補しようがエルフも人間も3人ずつしかなれない。」
「そ、それは人口が多い種族にとっては不公平になるのでは?」
「確かにな。だが、そうしなければならない。それじゃエルフが1万人いるから10人なれて、人間は2000人しかいないから3人しかなれないなんてやってみろ、エルフが有利な政策ばっか通るぞ?」
これは仕方ないことだろう。反発は招くかもしれないが平等のためだ。
「わ、私から質問です!投票はどうするのですか?」
「どゆこと?」
「その…民主主義というのはわからないのですが、ゴブリンはゴブリンに、獣人は獣人にしか投票できないのか、それとも種族関係なしに投票できるのかです!各種族の議員数は固定されてるとは言え…」
あー、やっぱ同種族のみじゃねえの?議席固定だし。
「そりゃ同種族の方がいいと思うぞ?なんか変に思わないか?」
「いえ、その制度なら間違いなく自由投票制にした方が良いかと。。同種族のみにするのはデメリットしかないと思われます。」
アネットが反対する。
「確かに、多種族国家としては民主主義という制度は正しいのかもしれません。なのになぜ反対するのかというと各種族の小国家が並立する形になりやすいからです。王がいても、種族の対立が固定化して、過激な種族主義者が当選しやすくなる…つまり、内乱が起こる可能性があります。」
「なので、一旦ここはヒロナカ様や自衛隊の皆様の世界の制度と既存の制度のことを考え『協調型立憲君主制』という名の制度名にしましょう。」
なるほど…確かにそれは一理ある。まじでこの2人頭良すぎるだろ。民主主義(極一部)と立憲主義のハイブリッドを瞬時訂正して提案してくる。まぁこれは実を言うと民主主義とは完全には言えないのだが。なぜなら民主主義は主権は国民にあり、最終決定権も国民にあるからだ。だが俺が考えてる制度は確かに民主的ではある。民主主義的ではあるが民主主義ではないのだ。王が最終決定権を持っているからである。後議員も固定の人数だし。制度って大変だよね。
「だが自由投票制にしたら下で問題になるんじゃないか?俺の世界、賄賂とかやって票を貰ってる税金泥棒いたからよ。あとエルフが立候補したのにエルフの支持がほとんどなくて他種族の投票で当選するぜ?言い方悪いが、それこそ少数民族の不満がたまるぞ。」
「それについては少々お待ちを。アリシアと考えますので。」
アネットが一言だけ言うとノートに対策案を書いていく。アリシアもそれを見て頷き、2人がこれなら良いと判断する。
「まず、自由投票制にすると必ず『種族の自己決定権と国家全体の民意』がぶつかります。中には言い方は悪いですが、他種族の過激派をわざと当選させたり分断させるものも出てきます。」
「なので、二重条件制にします。例えるなら「投票数は多いが、エルフなのにエルフの票が少なすぎたらダメ。」と言うことです。当選するには自種族の最低投票率30%以上を必須にします。」
「…君ら本当に民主主義知らないかったんだよね?対策早すぎない?」
「オデら、必要ない。」
「頭痛え…」
おい高橋、アルス、頭痛めんな。気持ちはわかる。これ怖えよ。この2人の知能やべえよ。
するとノーラが手を挙げる。
「私からも提案よ。これだけだと王になった者が暴走するわ。だから…王が拒否しても議会の2/3が再可決することも可能にするわ。まぁ多数決で決めるからそのようなことはないと思うけどね。」
「流石ですノーラ様。そしてもう一つ、二院制にしましょう。上院は3人ずつなのは変わりません。ですが、下院は最低保証3席。総議席100にします。」
いや待て!それじゃ下院でエルフや人間、獣人で埋まったらどうすんだよ!?
「待て待て!それじゃ下院がもしかしたら…」
「だからこそです。確かに、この場合少数の種族は下院で影響力が弱まります。ですが…これをすれば国民の民意を反映できますし、少数派の保護にもなります。ヒロナカ様、確かにこれだと少数派の影響力は上院頼みになり平等制は完全にはなりませんが、何もかも平等というのは難しいものです。」
「もう一つ、王の裁量次第でバランスが崩れます。自由投票制の弊害で演説や人気だけで当選する者も現れる可能性もあります。つまり、ポピュリズムや戦略投票のリスクと後に無能な王になったらバランスは崩壊します。」
「うわ、めんどくせえ!自分で提案して何だがめんどくせえ!」
「完璧な政治制度というのはないのよ?ヒロナカさん、貴方のいう民主主義も、専制主義も、共和主義も必ずメリットとデメリットがあるの。仕方ないわ。」
ノーラが教えてくれる。それはそうだが…。
「ヒロナカ様、私たちで訂正しましたが、今のところこれなら良いかと思われます。」
「あ、うん。それでいいよ。うん。君ら頭良すぎて俺いらなくね?ってなったよ?」
「すまないヒロナカ殿…あの2人はまぁ…天才だからその…まぁ。だが政策が決まってよかったじゃないですか。」
やめてリーゼ、泣きたくなるから。まあ、これならいい国になるだろう。決定しようとしたその時だった。
「悪いが、それなら俺たちは降りる。」
アルスがまさかの政治参加を拒否したのだった。




