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第21話 三国同盟

エレナ女王の提案を受け入れる。その国は俺の国‥と言うか街の隣にあったのだ。

立地的に言うとセリス王国は俺の自治領(仮)の左下、その国はセリス王国の真上だ。お隣さんじゃねえか。そんな情報聞いてねえぞ。それとも俺が情弱なだけ?泣くよ?偵察隊は情報得てこいよ。諜報部隊設立するかな。

まぁそんな精神的な悲しさは乗り越えるとして、教えられたその国の名前はセレスティア王国と言う。規模はセリス王国とほぼ同じだ。

事情が事情なので俺たちは滞在し、エレナ女王が使者を送る。3日後には帰ってきて日程を決める。2回も短期間で会談するとは恐れ入った。


「ジェイク!山賊の格好より似合ってるな!」

「お前は昔っから騎士の格好が似合ってないけどな!」


ジェイクとザックがバカ笑いにしながら話し合っている。ジェイク率いる山賊…いや、独立愚連隊は報告を受けて戻ってきたのだ。国を守るとは言え無礼同然である。責任は我にある。と謝罪するとエレナは謝罪を受け入れた。

信頼を欠いた自分にも責任があると、国のために動いたものを罰するつもりはないと。

とはいえ、流石に国を混乱させたのは事実。そのため騎士団長から隊長に降格された。まぁ名目と言うのは必要だ。何も罰しないのなら法と言うのは必要ないのだから。団長は誰かって?ザックだ。


「しかしよ、お前…こっちに戻ってきていいのか?北部自治領の人間だろ?」

「まぁな。だけどよ、かつては元セリス王国に仕えてたんだ。賊になったのも家族を食わせるためよ。とは言っても襲ったのは悪徳商人ばっかだがな。」

「お前が罪のない人を襲うなんて思わないさ。何年共にいたと思ってんだ?」


互いに拳をコツンとぶつける。ザックは俺に頼んできた。無礼を承知で、またセリスに仕えたいと。無論、それを認めた。故郷に帰りたいのは仕方ないだろう。人間だもの。それにセリスと北部自治領は必ず別れない。俺にはある計画があるからだ。統一するのだから。


セリスと北部自治領の軍、合わせて600名がセレスティア王国に出立する。

移動大変だよなー。車乗りたい。馬車で寝たい。馬車で寝たいと提案したら高橋に蹴られたよ。エレナとクリストフ絶句してたよ。トップの扱いこれだもん。そりゃ驚くわ!蹴り返して殴り合いましたよええ!


「蹴るんじゃねえよこのボケ!」

「バカな提案してるご主人が悪い!」

「隣国の王族の前でやる奴があるかこのボケが!しかも数ヶ月ぶりに殴りやがって!」

「ちょっ、ええ!?」

「な、何をやってるんですか!?」


クリストフ君なんて目を丸くしてるしエレナさんなんて驚愕してる。そりゃそうだわ!普通じゃ重罰になるわこんなの!


「クオラァァァァァァ!!!」

「ンダトゴラァ!」

「やめなさいバカ2人!」


ハナにジャーマンスープレックスと卍固めをかけられました。痛えよ母ちゃん。2人揃って土下座ですよ。格闘技の大会で優勝できるよあんた。


「頭痛いでゲス。」

「どうなってるんですか…」

「部下と領主が殴り合うなんて‥と言うか人間とオークが互角に殴り合うなんて…」


王族がため息ついてるよ。うん、自重しよ。あと葉巻吸ってニヤついてんじゃねえよジャグ。なんだよこれ、統制も統率もクソもねえよ。我が軍全員簀巻きにして蜘蛛の巣に放り込むぞ。アズチ達の仲間にワシワシさせてくれるわ。


「やめろ、トラウマになる。オークでも怖い。」


心の声が聞こえてました。

と言うわけでセリス王国の兵士と王族を絶句させたが、まーそんなこんなで到着する。


今回は会談室にすぐ入室する。昔馴染みってすげえな。王族同士の対談とは思えねえよ。なんか穏やかな雰囲気があるぞ。女王と2人の王女がいる。母娘か。苦労してるだろうに。つうか若すぎるだろ見た目が!あとなんでなんか妹っぽい方鎧きてるんだ!?王族だろお前!


「遠路の来訪、感謝します北部自治領主殿、わたくしはセレスティア王国女王、ノーラ・クロフォードと申します。こちらは長女のセレナ・クロフォード 、次女のクレア・クロフォード。本日はこの場を実りあるものにしたいと思います。」

「ご丁寧にありがとうございます。私は北部自治領主、弘中牧男と申します。貴国女王陛下にお会いできることを、光栄に思います。」


また形式ばった挨拶をする。


「エレナから聞いたわ。形式ばった挨拶はここまでにしましょ?」

「緩いですね。曲がりなりにも国家の対談ですよ?」

「ええ。あなたの事は聞いてるわ。アストリスに対抗しようとしてることもね。」


エレナ女王から聞いたのか。まぁ隠すことじゃないしな。


「同盟することに異論はないの。それに、あなたの自治領で作られてる糸、私の国でも評判がいいの。蜘蛛の糸とは思えないわ。糸を経済に活かすなんて…見事ね。さらには短期間で廃村を復活させるどころか発展させてる。」


穏やかな雰囲気だが、妙な違和感を感じる。鋭い感じだ。


「糸は確かに交易品よ。だけどそれだけで経済を発展させるのは難しいの。国には特産品があり、それを広めるのも、隣国や周辺の街と売買して成功させるのも‥普通はかなりの年月がかかるわ。あなたのその知識はどこからきたの?」

「あー、俺が異世界から来たってのは多分知ってますよね?」

「ええ。」


なら話は早い。


「あくまで俺の世界での歴史を覚えてただけですよ。俺の世界ではかつて蚕と言う虫で作った糸でシルクと言うんですがね?それが凄いものだったんですよ。シルクロードと呼ばれるほどの交易路を作ってしまうくらいに。」

「凄いわね…。にわかには信じられないわ。」

「ええ、俺はそれをヒントにしたのですよ。蜘蛛の糸だって、最初は巨大蜘蛛と聞いて全力全開で森ごと焼き払おうとしたんですけどまぁ取引しまして、蜘蛛達が糸を作ると提案してきたので。蜘蛛の糸も元の世界ではかなり研究されてるんですよ。鉄の約5倍の強度を持ち、伸縮性を持つ…それを知っていましてね。まぁ売り捌こうとしたら失敗しかけて、マルクスっていう商人と出会えたのが良かったのですが。」


事実を説明する。ちなみに蜘蛛の糸の説明は王族達は「…マジで?」みたいな顔になってるぞ。嘘じゃないよほんとだよ。昔ネットで見たもん。テレビでも見たもん。


「なるほど‥異世界の知識ですか。」

「まぁ調べ物には苦労しない世界でしたからね。だからうまく動けた。それだけですよ。」

「なるほど…。知恵が豊富なのね。」

「いや、バカでもすぐ調べられる世界なんで。マジで。」

「それほんと?お母様、私でも調べられるかな?」

「クレア、あなたねえ‥」


クレア王女が目を輝かせて笑顔になり、女王様が頭を抱えてる。あ、この次女アホの子だ。

気を取り直すように長女のセレナが手を挙げる。


「あの、私から質問です。エレナ様が軍を強くすることにしたそうですが…我が国の現状を聞いたらあなたはどのように対策しますか?」

「…はい?」

「我が国は人口も、国の広さもセリス王国と同じですが、この国は軍はなく、少数の精鋭騎士団に守られています。通称『白薔薇近衛騎士団(ホワイト・ローズ・ガード・ナイツ)』。女性だけで構成され、100人だけですが一騎当千の強者揃いです。」


…滅びるぞおい。100人で守れるわけねえだろ。物量差で押し負けるわ!


「うん、きついよね。物量ってものがありましてね。この前エレナ女王にも説明しましたがランチェスターの法則と言う言葉がありましてね。」


説明しましたよええ。100人じゃ守れませんよ。村の防衛どうすんだ。


「つまり…やはり兵力は必要なのですね。」

「だけどあの騎士団なら守り切れると思うの。」

「女王様、戦争というのは戦うだけじゃないんですよ。城攻めというのは、攻める側があえて何もせず、相手を根負けさせる方法だってあるのですよ。あと、対処が難しいんですよ。全方位から侵入されたらどうします?五千の兵士が侵入してきたら対処できますか?」


100人の精鋭でも物量差には押し負けるのは確定だ。というか国家総力戦で大惨事になるわ。

敵の本陣を奇襲するのだって全軍投入したら誰が城を守るんだって話しだ。守るのは城だけじゃないんだから。領内の村とか。


「だから俺の自治領では2万の人口に対して二千の兵士を保有してるんですよ。とは言ってもそれはオークやゴブリン、ケンタウロスなど戦うのが主とする者達が多いからですがね。それに、半分は普段は兵士ではなく民、このような時や戦争の際には兵士にする感じです」


普段から人口の10%を兵士にしたらやべえよ。何人かのオークは農民にされるの嫌がってるけど。


「ふむ…平和のために少数の精鋭騎士団で守ろうと思いましたが…」

「ノーラ様、私もその気持ちがありました。だけど…私達が平和を願っても…他国は違います。」

「エレナ…。そうね、私も軍を設立するわ。民を守るため、武力は必要ね。」


決断早いな。まぁおそらくエレナ女王が手紙で伝えてただろうし、昔からの付き合いだから決心してたのが想像つくな。


「ヒロナカ様、我がセレスティアも盟を結びます。ヒロナカ様の北部自治領、我がセレスティア、エレナ女王のセリス王国…3国による同盟を結び…タキア連合に対抗します。」

「良いのですか?」

「ええ、エレナからから全部伝えられてるもの。アストリスは人間至上主義国家だから確実に北部に来たら私たちは攻められるわ。それに…」


ノーラ女王が目を瞑ると一呼吸おく。一つの歴史を教えてくれたのだ。


「アストリスに人間しかいないのは、人間以外の種族を追い出したからなの。人間だけの国を作るというそれだけのためにね。さらにあの国は魔法使いも兵士として運用しているわ。その強さゆえに…中央を統一できたの。エルフとドワーフはバラバラで、連携も取らなかったから。」

「元から人間至上主義だったわけか…だがなぜ今の王は多種族を恨んでるんだ?教えとかか?」

「20年前、エルフとドワーフの連合国が戦争を仕掛けたのよ。故郷を追い出され、迫害された恨みを晴らすために。それで両軍共に犠牲を出して、アストリスの王は多くの友人と親族を失った…。だからよ。」


なるほど、逆恨みもいいところじゃないか。追放して、堂々と我が物顔で暮らしてたら報復されるのは当たり前だろうに。自業自得だ。


「そしてエルフもドワーフの国も壊滅に追い込まれました。」

「ドラゴンか…」

「はい。さらにそこをついて北部の人間の街、それも百を超える場所と結託して追撃しました。それゆえ、ここもアストリスの領土なのです。我が国やセリス王国のエルフやドワーフはそこから逃げてきた者達なのです。中央にいた生き残りなのです。アストリスは私たちを知ったら許さないことは確実。同盟を結ぶのに異存はないわ」


こいつは酷いな。おそらくだが、30億もいる人口を活かすために、領土を広げるためにやったのだろう。もしくは、大陸の各地にいる人間至上主義の街や人々が合流したのかもしれない。国が滅びても国民が死に絶えるわけじゃない。首都や主要都市がやられても地方が無事ならなんとかなる。北部のそういう連中が合流したんだろうな。でなければそんなに人口は増えんよ


「実のことを言うとね?エリナが同盟を結ぶと決断してる程なら最初から私達も受け入れる気でいたわ。エリナとクリストフは家族同然だもの。彼女は聡明なの長い付き合いだからこそわかるわ。彼女が信用したのなら私達も信用する。王族としては問題かもしれないけどね?」


微笑みを浮かべて少しイタズラっぽく言う。やべえ、美人でこれとか反則だろ。子持ち美人人妻やぞ。俺と歳ちけえし…美しすぎるやろ。


「あたしも賛成だよ!仲間が多い方がいいし!弱いものいじめとか、許せないもん!」


クレアが胸を張る。アホの子だと思ったが正義感は強いのだろう。クリストフも頷き、エレナも同意の意思を示す。


「あ…ママ、時間が…」

「仕方ないわね…ヒロナカ様、申し訳ありません、クレアは少し用事がありまして、席を離れても?」

「ん?ああ。構いませんよ。」


頭を下げるとクレアは部屋を出ていく。この場でママかよ。俺は内心苦笑いしながら思ってしまうが、まぁいいか。しかし用事って?


「失礼ながら、娘さんは何かをやっておられるのですか?」


ノーラは返答するかに少し困ったような、なんと言うか、親特有の悩みのある表情になっている。あ、これ何かあるな。

代わりにエレナが答えてくれる。


「ヒロナカ様、クレアは騎士に憧れてて、稽古を受けてるんですよ。」

「…え?」

「その、昔騎士団に助けてもらったの。白薔薇近衛騎士団の団長にね?それから姫騎士になる事を目標にしてるの。」


いい夢じゃないか。俺だって昔は戦争映画とか見て自衛隊に憧れあったぞ?だけどなんでそれで困った感じになるんだ?戦場に行かなければいいと思うが。


「いい事だと思うが…何か不安なことが?」

「ええ…その、あの子実力がね…。優しくて、民とも交流を深めてるから人望はあるの。だけど騎士団の皆様が身分を気にして稽古でわざと勝たせてくれてて…それが変に自信がついてしまって、騎士団が賊の討伐に出陣すると一緒に行こうとしてしまうの。指揮も取ろうとして…毎日訓練にも参加してて困らせてるのよ…」

「あー…」

「クレアは俺も幼馴染なんでわかるんですけど、ほんとなんかこう、やる気はすごいんで」

「クリストフよ、お前苦労したな?」

「ええ…。外に遊びにいくと大変でしたよ…」


クリストフの苦笑いに流石に肩を叩く。苦労してんだなぁ。しかしこれあれだ。子供がお相撲さんと勝負してわざと負けてもらったのに強いと勘違いしてるやつか。だけど仕方ない部分はある。騎士に憧れてて、本人もちゃんとした意味で正義感が強いんだから。とはいえ人望があるとはいえ迷惑はかけちゃいけないよな。王族が相手だと断りにくいし。と言うか断れないし。


「私も止めようとしてるのですが…クレアはその…」

「セレナとは逆で活発ですから…。親としても悩みの種になってるの。」

「んー、考えますか、みんなで。」


3国同盟…のちに北部三国同盟と呼ばれることになるこの出来事の最初の仕事は戦争ではなく、活発次女による母親と姉の悩み解決であった。


その日の夜、俺はエレナ女王とノーラ女王を呼ぶ。


「何かしら、ヒロナカ殿?」

「どうしました?」

「これだけは3人だけの話にしたい。大切なことだ。」


今は内緒だが、これは必ず国家のために必要な会話だ。


「この3つの国が一つになる時、俺はある制度を作りたい…」


新たな制度…それはこの世界にはないが、多種族国家には合っている制度であった。

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