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第20話 初の同盟

あの出来事から1週間後に使者がやってきた。日程を決め、使者に伝えた後、会談の日の2日前に兵士300人といつものメンバーと共に出発する。今回は早めにつきたいので全員騎馬にまたがり、ルキとシルク、ドワーフ達は馬車に乗せて突っ切る。この速さなら余裕で間に合うだろう。あーこの日数がかかるのを考えると車が欲しい、バイクでもいいから欲しい。車がありゃ100〜200キロなんて馬や徒歩で移動するのに比べりゃあっと言う間なのになあ。


この前の事で山賊もオークもいない。今はあの賊達とやり合おうとしていたオーク達の元の住処の洞窟や森の中にアズチ達蜘蛛の仲間を住まわせてる。なんか最近数が増えすぎて、子蜘蛛含めて8000匹になっちまったとかで困ってたのだとか。あとアズチ達蜘蛛族の中で知能のある500人は明確に人口に含めることにした。知能のない子蜘蛛?とりあえずちゃんと教育させてそこらの知能のないゴブリンやオークとドンパチさせてます。ゴブリン並に増えるんじゃないか?と不安になりアズチ達も流石に自重し…と言うか本気でやばいと感じたらしくしばらくは繁殖はやめるとかなんとか。当たり前だ。その繁殖力じゃ俺の領地が巨大蜘蛛まみれになるわ。蜘蛛とゴブリン、コボルトの戦場になるわ。お前ら増えまくるんだから全く。まぁ教育を受けた蜘蛛は糸の生産に役立ってるけど。


セリス王国に到着する。衛兵に使者から贈られた手紙を見せて許可を得て入国する。各種族を率いる軍勢に街の人々は驚きの声をあげる。オークとゴブリン、コボルトまでもが仲間になってる軍など想像がつかないはずだ。

城下は露店が立ち並び、商品も大量に売られ、市場は盛り上がっている。しっかりと復興した証なのだろう。コソ泥とかもいない。もちろん俺たちの軍も規律を乱さずに進む。とは言え見渡してしまうが。田舎者が都会に行ったみたいな感じのあれだよあれ。


「はー、グリムフォードよりすげえや!」

「倍以上の人口ですからね。人口は一万五千、街の治安も王の率いる自警団が治安を維持してるので良好だそうです。女王も民との交流を深めてるのだとか。」


立派な女王だ。18歳で王になり、国を納める立場に就くのは相当な覚悟だろう。本来なら先代から色々引き継がねばならない。だが過去のドラゴンの襲撃により滅ぼされ、当時は8歳と6歳だった2人は恐怖に怯え、親の死に絶望したのは想像に難くない。忠臣に助けられ、世話をしてもらったとはいえ心の傷は癒えないだろう。それでも再興して王になったのだ。尊敬に値するとしか言いようがない。だが…侵略が近づいてるのに軍を拡大せず、話し合いをしようと言うのは流石に国としてはまずいだろう。若さ故の甘さなのかもしれないが。


「しかし、王様が相手だからかなり礼儀よくいかないとな。」

「親分は口悪いっすからねー。」

「ご主人、口調気をつける。」

「タメ口とか厳禁でゲス」

「本当に危ないですからね。」


泣いていいか?ボロクソじゃねえかよ俺の評価。咽び泣くぞこのこの野郎。


しょんぼりとした表情になるが気を取りして馬を降り、ハナ、高橋、山田、ザック、ジャグを護衛に城内に入る。


「ここでお待ちくだされ。」


従者に案内され、応接室に入り、指示に従い椅子に座る。流石に身なりを整えてハナと小声で話し合う。もちろん重要なことだ。バカの俺でもわかる間違いなく隣の部屋にいるからな。無礼な態度は取れない。


「では、こちらへ。」


従者に案内され会談室に向かう。流石に緊張するものだ。なんせ元工場勤務の会社員だった人間が外交の場に立つなど想像もつかないだろう。扉の前に立ち、一呼吸すると従者が扉を開ける。


「北部自治領主、ヒロナカ様、ご入室でございます。」


若き女王と王、そしてそれを補佐する摂政が立って待っていた。自分達も席に案内され、椅子の横に立つ。

ところでいつのまに俺の街に名前がついたって?それはね?なくて焦ったから急遽つけた。いわゆる(仮)。無礼?しょうがないじゃない、名前がなかったんだもの。もちろん手紙に謝罪文書いたからな!


「遠路の来訪、感謝します北部自治領主殿、わたくしはセリス王国女王、エレナ・エーデルハイドと申します。こちらは弟のクリストフ・エーデルハイド。本日はこの場を実りあるものにしたいと思います。」

「ご丁寧にありがとうございます。私は北部自治領主、弘中牧男と申します。貴国女王陛下にお会いできることを、光栄に思います。」


当然ではあるが女王が挨拶の後お辞儀をし、俺も自己紹介の後返礼をする。

女王が一拍おいて続ける。


「…どうぞ、お掛けください。形式ばった挨拶はこのくらいにいたしましょう。」

「ええ、よろしくお願いします。」


さて、会談の始まりだ。しかしどうもぎこちないな。もしや女王も初めてか?妙に緊張しているように見える。


「弟から聞きました。我が国と同盟したいと。」

「ええ。あなた方はセリス王国はタキア連合に狙われ、我々はダークエルフの仇討ちのために奴らと戦う所存です。ですが、我が街とタキア連合は互角の規模であり、苦戦は免れません。だからこそ損害をなるべく出さず、勝つために仲間を増やしたいのです。」

「ええ、私としても彼らの暴虐に怒りはあります。ですが、私は対話を第一としたいのです。戦争をせず、話し合いで事を収められるのならそうしたい。」


対話で解決したいのは世界中でもそうだろう。戦争なんてするものではない。対話で解決できるのならそれがベストなのは言うまでもないのは事実であるだろう。戦争をすると言う事は戦死者がでる上に自国の領内に侵攻されたら被害は尋常ではないからだ。

だがそれができるのは友好国が相手なこと。そして、軍事力が強大なことが条件だ。


「お言葉ですが女王陛下、それができるのは強大な軍事力があってこそでしょう。あなた方の国の今現在の兵力では守り切れるかどうかも分かりません。タキアのク…連合は二千の兵力、総人口の10%を投入しているのです。かなり無茶な事をやってますがね。」

「だからこその外交なのです。必要最小限の軍を持ち、瀬戸際で食い止める。私の父はかつて、北部が竜に襲われる2年前に怒りで隣国に戦争を仕掛けました。祖父が今はもう無いぜリス帝国の兵士達に殺されて…。」


エレナ女王が、過去の出来事を語り始める。苦い思い出なのだろう。


「賢王と呼ばれた父が私戦で戦争を行ったのです。臣下も、お母様の説得を無視して…帝国の謝罪と賠償を受け入れず、侵攻して一つの街を襲撃したのです。罪もない人々を殺戮し、ぜリス帝国も徹底抗戦し…1年近く続きました…結果、両国の疲弊、引き分けに終わったのです。」


摂政も俯いている。これ、かなりガチの虐殺やったやつだ。歴史上家族を殺された結果報復で敵国を攻め、大量虐殺を行った出来事はある。当然認められることではないし許されることではない。


「終戦後、父は自分の行為に絶望しました。母上に全てを譲位する程に。戦後、父は国民からは恨まれ、虐殺の被害にあった街に行き贖罪をしに行くほどに。両国の民から石を投げられ、殴られても、必死に耐えました。私はそれを見たからこそ‥対話による解決を望んでいるのです。」


なるほどな。前王の行いによる反動か。それなら仕方ないのかも知れない。だが正規兵200人ほどでは守るのは無理だろう。


「それ故に…ですか。エレナ女王、その御志は立派です。ですが、タキア連合を相手にはそうはいかないのですよ。奴らは人間至上主義との報告も上がってます。あなた方も他種族を受け入れてるのならばわかるはず、タキアは許さないでしょう。」

「姉さん、ヒロナカ殿の言う通りだ。タキアはエルフ、獣人を受け入れてると言うだけで戦争を仕掛けてくるんだ。」

「クリストフ、それは分かってるわ。だけどかつての父上の過ちを繰り返したくないの。軍事力を拡大したら…」


クリストフの気持ちはわかるがそれでも…。と言う。若いし仕方ないのだろう。ならこの言葉を伝えねば。


「エレナ女王、ランチェスターの法則という言葉をご存知ですか?」

「いえ…初めて聞く言葉ですね。」

「分かりやすく言えば、同数でもかなり戦力差が出るって考えです。」


この言葉は俺のいた世界の言葉で異世界にはない言葉だ。

例えるなら、剣や槍で戦うだけなら500人と600人が戦うなら100人の差だが、近代戦、例えるなら銃やミサイルを使う戦争だとほぼ同じ数でも、2乗に計算したら実際はかなりの戦力差になる。

この世界は中世に近いか武器は剣や槍、棍棒、弓やクロスボウ、場所によっては魔法使いもいるから色々と条件は変わるが、まぁ単純に言えば同数に見えても、戦場によっては。時代によってはこれだけ戦力差があると考えておけばいいだろう。ちょっと違うだろうけど。勿論戦争は数だけではなく、地形、指揮、兵士の質、兵器の質、装備や軍備など色々あるから一概には言えないと言っておく。


とまぁ色々とランチェスターの法則をエレナ女王に教えると真剣に聞き入れてくれてるし、クリストフも目を丸くしてメモを取っている


「そ、それじゃ俺達の戦力じゃ…」

「7〜800に対して相手は2000、防衛戦でならなんとかギリ互角ってところだな。」

「親分、口調が戻ってるっす。」


ザックのツッコミは無視しする。違和感半端ねえんだよ。あと素が出そうで疲れるんだよ。めんどくさいんだよ色々と。


「だからこそこちらも連合しなくちゃいけないんだ。戦争は数が全てだからな。少数で大軍を破った例もあるが、基本は数だ。」

「どれほど兵力が…?」

「敵兵力の3倍だ。敵国に侵攻する場合は3倍は必要と言われてるんだ。」


これは軍事の基本と言えるだろう。攻める場合は3倍の戦力が必要なのだ。特に城攻めにおいてはかなり重要だ。攻めるというのはそれだけ苦労する。

さて、軍事において重要なのは兵力だけではない。兵站…補給や食料などの問題もある。敵に攻め入るのならそれだけ大量の食料も兵器も準備しなければならない。

近代ならトラックなどがあるから移動は楽だし美味いものも食える。弾薬も装備も人もトラックや車輌でどうにでもなる。徒歩での行軍?頑張れ。だが、中世は違う。長い距離を行軍し、徒歩で移動する。さらに食べる物も考えると士気の問題も出る。近代って便利だよねほんと。お馬さんも移動なんて無くなって楽になっただろう。


「俺が同盟を結びたいのは兵力だけではないんだ。北部統一…セリス王国と俺の自治領は理念も思想も同じなんだ。女王の理念と思想は否定しない。だが‥守るためには変わる必要ってのがあるんですよ。」

「ヒロナカ殿、貴方の目的は一体…?」

「アストリスと魔王軍を潰す。それだけだ。多種族国家による国を作り、横合いから殴りつける」


迷いなんてない。あの日から決意していたことだ。その発言にエレナもクリストフも摂政も固まる。


「ほ、本気ですか!?確かに北部の多くはアストリスを恨んでいます。人間以外の種族は見捨てられ、他種族を保護していた国も、他種族の国も見捨てられました。それでも‥アストリスは大国ですよ!?いえ、大陸最大の国家です!」

「最強の国だぞ!?ひ、ヒロナカ殿は本気なんですか!?」


エリナとクリストフはあることを思い出す。北部にあった廃村が急に復興した事を。様々な種族を受け入れ、100人もいなかった村が急に糸を売りはじめ、経済も何もかもが発展し、村を傘下にし、さらに治安の悪い街と戦争して勝利し、さらに治安を良くし人口も増やしたところを。グリムフォードですら傘下になった街…それを作った男だと。この男は本気だと。


「な、なんで…?恨みでも…?」

「ある。俺はあのクソ王国に召喚されてな、魔王軍と戦わされたんだよ。たった1人でな。一部の人は武具を安く売ってくれて、ある人は美味いものを食わせてくれた。その恩義はあるさ。だが、勇者という名の人間は使い捨てさ。助けを求めたら兵士に弓を向けられた。あの国はエルフやドワーフだけじゃない、異世界の人間すらゴミなんだよ。この世界にもう2年もいるのさ。帰りてえよ。」


自重気味に笑いながらあの出来事を教える。


「元の世界じゃそこらの一般人さ。仕事して、遊んで、好きなことやって寝る。その日常を奪っておきながら奴らには罪悪感なんてないのさ。遊びてえよ、友人と会いてえよ。趣味に没頭してえよ。」

「ありえない…。」

「狂ってるな…」


2人は怒りを露わにしている。真っ当な人間ならドン引くよこんなの。


「それがあのクソ国家に対する恨みさ。だが…奴らに対抗するには北部を統一するしかない。今は魔王軍とやり合ってるが、奴らは必ず北部に目を向けるぞ。南部には手を出せなくても、北部はあいつらからすればすぐ攻め落とせるところしかないからな。」

「待ってください!その…我がセリス王国は再興したばかりですが…北部には殆ど国なんてありません!その…治安は悪く、まともな国もないのになぜ!?」

「旨味しかないからだ。」


旨味しかない。これは断言できる。南部の諸国…ジン王国やアラン帝国と戦争したらかなりの損害が出るだろう。だが北部は?国なんてものはなく、人口も多い。この大陸は様々な種族を合わせると100億の人口がいるが、北部は35億もいる。アストリスは30億だが。ほんの一部を占領してもかなりの人口を増やせる。片手どころか小指だけでどうにかなるレベルだ。


「だからこそ俺は先手を打つ。女王様…。こいつは断言するが、もしあのクソどもが攻めてきたらこの国は間違いなく滅びる。いや、確実に言いがかりをつけて潰しにくる。だが…」

「私達は同盟を結ぶ…いや、連合国となり、理念、理想、思想を元に統一する…ですね。」

「そうだ。大義名分は俺たちにある。タキアは虐殺を行った…。だが俺たちはダークエルフと言う種族を助ける。差別はなく、これはまだ言えないが、その時が来たら伝えるが…新しい制度を作り、北部を治め、魔王に対する聖戦をを、アストリスに対し正義を示す。」


断言する。今北部で再興した国はそんなにない。だからこそ即座に動かねばならないのだ。弱小国は躊躇いもなく攻められる。タキアのような野心のある連合は国となり、周辺の街を吸収していくだろう。

だがこちらは?オークやゴブリン、蜘蛛だけじゃない。コボルトとケンタウロスが駆けつけた。ダークエルフの為に、義の元に駆けつけたのだ。多種族国家を設立するのなら問題はいずれ起こるだろう。だが…今はその他種族が仁道大義の元に集まってきている。裕福な街も傘下になった。ならセリス王国はどう動く?同盟を結び、タキア連合と戦うか、それともセリス王国のみで戦うか。女王は決断した。


「盟を結びます。我がセリス王国は北部自治領と共に、タキア連合と戦う道を選びます。」

「姉さん!!」

「クリストフ、貴方の自警団を正規軍に編入します。ジェイク殿にも連絡を、我が国も軍事力を拡大すると。再び貴方の力を貸して欲しいと。」


迷いもないまっすぐな目だ。18歳とは思えない、責任を、全てを背負うと言うのはこの事か。


「そして伝えて。私が間違っていたと。国を守る為には対話のために力が必要だと。」

「いや、姉さんは間違っていない。もっと話し合うべきだったんだ。これから前に進もう。セリス王国をかつてのあの頃のように…そして過ちを繰り返さないようにしていこう。」


姉弟が和解する。思想による対立はあったのだろう。だが国を思う気持ちは変わらない筈だ。

セリス王国と北部自治領は同盟を結ぶ。俺とエリナ女王は握手する。盟は成った。これなら勝てるだろう。そう思った時だった。


「私から提案です。近くに再興した国があるのですが…昔から我が国と良好の関係で、変な言い方かもしれませんが、家族ぐるみの付き合いがあったほどです。そちらとも盟を結びましょう。心強い仲間になってくれる筈です。」


それは予想外のだが、後にこの北部を揺るがすことになる出来事になるのだった。

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