第16話 ダークエルフと北部の歴史
議論を中止して急いで郊外に向かう。そこにはダークエルフの難民たちがいた。ボロ切れを身に纏う者、赤ん坊をあやす者、うずくまる者、疲れ果てて座り込む者。あまりにも悲惨な現状に即座に指示を出す。
「手の空いてる者は食料を持ってこい!スープや柔らかいものなど胃に優しいやつだ!怪我人は急いで治療しろ!!」
人々が一気に動き出す。涙を流して感謝する者までおり、相当疲れ果てて、悲惨な目にあったようだ。
「代表はいるか!何があったのか話しがしたい!」
俺の叫びに1人の男が立ち上がる。
「私だ…名はリュシアンと言う。頼む‥助けてくれ。」
「俺の街は全ての種族を受け入れる。それは任せろ。だが何があったのか教えてくれ。手の空いてるものはテントを設営しろ!風呂にも入らせるんだ!」
指示を出し、手の空いてる人々が急いで準備をする。代表のリュシアンも食事をとり、風呂に入った後役場に入る。議論なんてできない。とにかく話を聞かなければ。
「本当に感謝する…もう…もうダメだと…。」
「何があったのですか?私の記憶では、あなた達ダークエルフは沼地や地下に住んでいたはずです。それに…北部の目立たないところでは?」
「ああ…。2週間ほど前だ。私達の町はここにあったのだが…」
リュシアンが地図を指差す。俺たちの街から少し離れてるな。徒歩で1週間と言ったところか。人間の街が近くにあるな。
「急に人間たちが攻めてきたのだ。我々は何もしていないし、攻められる覚えもない。我々を不浄な生物と呼び殺戮を繰り返したのだ。男達は武器を持ち抵抗したが…」
「多勢に無勢…か。」
「ああ…多くの犠牲が出た。5000人ほどの街だったのだが一方的な虐殺だ。我々ダークエルフはよく思われていないから逃げてる間…だれも、どこの村も助けてくれなかった。だが、あなた達なら受け入れてくれると思ってきたんだ!」
「落ち着け!」
「我々は何故迫害されなけれならないんだ!何もしていないのに…迫害されて…それでも同胞達が集まって作った街だ!祖先が行った事で今でも我々は…ふざけるな!!」
悔しさを滲ませ、涙を流しながら訴える。間違いない、これは一方的な虐殺だ。街の理念と理想のもとに助けるのは当然だ。だが一つ気になることがある。なぜダークエルフが嫌われているのかだ。
「クレアナ、なんでダークエルフは迫害されているんだ?わかってると思うが俺はこの世界の人間じゃないからな。何ヶ月どころか2年近くも経ってるからわからん。」
「説明します。私達普通のエルフとほぼ同じなのですが、ダークエルフは過去に魔王軍に属し多くの種族と戦っていたのです。ですが、ある時を境に、穏健派と魔王軍派の内乱が起き、穏健派が勝利して北部に住んだのですが、恨みを買いすぎたのです。魔王軍の下、多くの種族を奴隷にし、殺戮してきたのですから。それでも500年以上前ですけど。」
「その恨みが今でも残っていると?」
「はい。それだけでなく、一部のダークエルフは魔王軍に所属してネクロマンサーになっていると聞きます。だから過激な者によってはダークエルフは即殲滅‥と言うところも。」
「なるほどな…。」
過去の恨みを買った…か。だがそれでもやりすぎだ。ハナは明確に怒りを露わにし、高橋も腕を組み、ジャグと頷きあう。
「クレアナはどう思っている?」
「昔の私なら何も思わなかったでしょう…。エルフとダークエルフは昔ほどではないですが対立してますから。ですが、今は別です。このような行いは許しません。」
「ああ。偵察隊を派遣しろ。犯人はこの人間の街の可能性が高い。5箇所はあるから連合を組んでいるかもしれないな。」
兵士を呼び、即座に偵察に向かわせる。しかし俺はもう一つ気になることがある。何故北部に国がないのかと言うことだ。人口はめちゃくちゃいるのに。
「すまない、これは俺個人の質問なんだが…俺は傭兵生活で北部のことを知ったからここから国づくりを始める事にしたんだが…なんで国がないんだ?今更だが。街や村は多くあるのに」
「それは魔王軍のせいなんです。」
「どゆこと?」
魔王軍のせい?こんなクソ広い北部に侵攻してしたっての?
「まずこの大陸…アレス大陸は北部、中央部、南部に分かれます。」
「ああ。中央部は魔王軍とアストリスしかないな。」
「そして南部、ここはアストリス王国と国境を面してるジン王国とアラン帝国、そのほかにも各種族オークとゴブリンも国を建てていて大小合わせて50カ国はあります。」
やはりアストリスはでかいな。中央を完全に制圧してるから人口も、経済も全てを圧倒している。ジン王国とアラン王国は人口3億ほどなのに対し、アストリスはおそらくは10億を超えていると言う話だ。いや、もっといるのがしれない。もしかしたら30億はいたりしてな。
「そして北部…かつては北部も様々な国が60カ国ありました。ですが、魔王の使役しているドラゴン、炎竜、氷竜、雷竜の3体のドラゴンを使い襲撃しました。」
「たった3匹のドラゴンを相手に壊滅したのか?」
「いえ、そのほかにも千をこえる小型のドラゴンも投入して多くの国を焼き払ったのです。各諸国も徹底抗戦して氷竜、雷竜、そして800を超えるドラゴンは倒し、炎竜にも深手を負わせたのですが…」
「国は滅んだか、経済崩壊や食糧不足による内乱…か。」
「ああ。オデ達オークやゴブリンも多くがやられたと聞く。小型のドラゴンはその体格を活かし洞窟の中に入ってくる。焼き払われ、食われた。」
ひでぇなぁ。あいつらドラゴンまで持ってるのかよ。…?なんで今魔王軍は使わないんだ?
「まて、大陸の三分の一を壊滅させることができる化け物を飼っておきながらなんでアストリスや南部に使わないんだ?」
「強力すぎる故にです。その力故に魔王軍に反乱を起こし、魔王軍もかなりの犠牲を払いながら倒したとか。今の魔王軍は馬と同じくらいの大きさのドラゴンを使役し、竜騎士部隊を編成しているようです。」
「スケルトンナイトや骸骨兵乗せてるのか?」
「いえ、リビングアーマーです。魂や魔力で動いています。」
「あーまじか。魔王軍戦力やべえな。」
空軍持ってるとかマジか。確かにファンタジー作品だとペガサスやドラゴンに乗ってる騎士とかいるが‥この世界でもか!
「アストリスはそんな奴らにどうやって対抗してるんだ!?」
「グリフォン騎士とワイバーン騎士です。アストリスの航空騎士は精鋭部隊で竜騎士と互角に戦えます。」
「制空権取られたらやばいな。北部にもグリフォンやドラゴンがいることを願いたい。」
空軍はマジで戦争の要だ。航空全力は偵察、戦闘、全てを賄える。
「しかし…アストリスは何もしなかったのか?北部がやられてる時。」
「人間国家には人道支援を行いましたが復興までは手伝いませんでしたが、食糧や難民受け入れなどを行い人口を増加させたのです。ですが、私達エルフや獣人、ドワーフなどには別でした。人道支援と偽り、捕え、奴隷にして売り、それで経済をさらに発展させたのです。」
「あいつら本当になぁ…」
「だから今でも北部の人間以外の種族はアストリスに憎悪と恨みを持っています。この出来事は10年前ですから…」
「ふざけた国だな…。あの腐れジジイ…」
アストリスは人間には良い国だが亜人には差別するのは知っているが度がすぎている。いや、歴史上敵に対してはそう言う扱いするのも常であったろう。
「故に国はもうないのです。いえ、あるにはあるらしいのですがそれでも10の国があるかないかと言われているほどです。残った国の話は聞きませんし…どこにあるのかもわかりません。」
それに関しては仕方ないだろう。混乱で情報はメチャクチャになる上にこの広さではどこが国を再興したのかなんてわかるわけがない。それに、生き残り達は気にもしないだろう。何せ今を生きるのに精一杯なのだから。
「なるほどな。北部の詳細はわかったから…議題に戻そう。これからの目標はダークエルフを襲った街を攻める。だが相手が連合を組んでいたら勝てない…これからの方針は…」
「た、大変です親分!」
「またか!?今度はなんだ!!」
また兵士が入ってくる。さっきと同じくらい慌てた顔で。
「けけけけけ…ケンタウロスです!ケンタウロス2000人があああああ現れましたぁ!!だ、代表と話したいと!!難民ではないようです!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
流石に口をあんぐり開けて叫んでしまう。同じ日にどうなってんだい!




