第6話 基礎訓練開始
ギルドに登録した翌日、来生雅也は訓練施設に立っていた。
昨日、配信探索者・松浦かなの動画でダンジョンの世界を見たことが
胸の奥で熱を帯びている。
「よし、今日から本格的に訓練だ」
小さく呟き、深呼吸をする。
Fランク探索者として、一歩ずつ前に進む覚悟を決めたのだ。
施設の中では、Aランクの大木将司やBランクの笠木ゆみが
軽やかに戦闘訓練をこなしている。
その姿を見て、雅也は思わず目を見開いた。
「……俺、本当にやれるのか……?」
小さな声で呟く。手は汗で少し濡れている。
しかし、昨日の勇気がわずかに背中を押していた。
まずは基礎体力訓練。
簡単な障害物走、跳躍、回避動作の反復だ。
雅也は初めて体を動かすことに戸惑い、何度も転倒する。
「ぐわっ!」
段差に躓き、床に手をつく。
笠木ゆみが軽く笑いながら声をかける。
「大丈夫? Fランクってこんなもんよね」
「は、はい……」
ぎこちなく返事をする。
心臓が跳ね、息が荒くなる。
次は、戦闘基礎訓練。
木製の訓練用剣で、指定された標的を打つ練習だ。
雅也は剣を振るが、力の入れ方が分からず空振りばかり。
「ぐっ……また外した」
思わず唸る。
周囲のA・Bランク探索者たちは軽く笑いながらも、見守ってくれる。
「焦らなくていい、雅也君。フォームを意識して」
七瀬のアドバイスが耳に届く。
ぎこちなく頷き、再び剣を握る。
少しずつではあるが、標的に当たるようになってきた。
完璧ではない。しかし、自分でも前より動けていることが分かる。
「……これなら、少しは戦えるかも」
小さく自信をつぶやく雅也。
体はまだぎこちないが、心には小さな誇らしさが芽生えていた。
訓練が終わると、和泉ギルド長が声をかける。
「初日の動きとしては上出来だ。焦るな。成長は少しずつだ」
雅也は深く頷く。
「はい……ありがとうございます」
その言葉に、胸の奥が温かくなる。
夕暮れの光が窓から差し込み、床にオレンジ色の影を落とす。
街の喧騒が遠くに聞こえ、訓練施設は不思議な静けさに包まれていた。
「よし……明日も頑張ろう」
小さな決意を胸に、雅也は施設を後にする。
Fランク探索者としての成長は、まだ序章に過ぎない。
その日、雅也は痛感した。
ダンジョンに挑むには、まだまだ力も技術も足りない――
だが、少しずつ自分を変えていけるという希望があった。




