第5話 Cランク配信者との出会い
ギルドに登録した初日、来生雅也は少しだけ自信を持ち
訓練施設の前に立っていた。
昨日の面談で、和泉ギルド長に及第点をもらったことが
胸の奥で温かく残っている。
「よし、今日は訓練だ」
小さく呟き、深呼吸をして施設の扉を開く。
中では、Cランク探索者の松浦かなが配信の準備をしていた。
彼女はヘッドセットをつけ、カメラに向かって話しかけている。
「みなさん、今日も安全第一で行きますよ!」
画面越しに、にこやかに視聴者に語りかける。
雅也は少し離れた場所で、ただ見つめるしかなかった。
「……すごいな……」
呟くと、松浦がふと画面から顔を上げてこちらを見た。
「新顔ね。君も探索者?」
声をかけられ、雅也は慌てて頷く。
「え、ええ……まだFランクですが」
ぎこちなく答える。手のひらには汗がにじむ。
「そう、じゃあ少しだけ見学していく?」
松浦は優しく微笑み、配信機材の横に雅也を誘った。
画面には小型ダンジョンの様子が映し出されている。
モンスターの動き、罠、光の演出――
まるで冒険を目の前で体験しているようだった。
「これが、ダンジョンの世界か……」
雅也の胸が高鳴る。
恐怖とワクワクが混ざり合い、足が自然に前に出る。
「初めて見るなら、まずは安全なところからね」
松浦はそう言い、簡単な回避方法や注意点を丁寧に教える。
雅也はメモを取りながら、慎重に画面を観察する。
「なるほど……こうすれば罠を避けられるのか」
少しずつ理解が深まる感覚に、胸の奥が熱くなる。
「ねえ、君も配信やってみる?」
松浦が軽く提案する。
「えっ……ぼ、僕がですか?」
驚きと戸惑いが入り混じる。
「そう、最初は見るだけでも勉強になるし
慣れれば配信もできるわ」
その言葉に、雅也は小さく頷く。
少しずつだが、自分もこの世界に足を踏み入れられる気がした。
「……ありがとうございます」
ぎこちなくも、心からの感謝を口にする雅也。
松浦は笑顔で頷き、再びカメラに向き直る。
「じゃあ、今日も安全に行きましょう!」
雅也は画面に映る小さな冒険者たちを見つめながら
自分もいつか、あの世界で活躍する姿を思い描く。
夕日が施設の窓から差し込み、床をオレンジ色に染める。
雅也の心も、少しずつ明るさを取り戻していた。
「よし……まずは、基礎からだ」
小さな決意を胸に、Fランク探索者としての本格的な訓練が始まった。
その日、雅也は初めて、
ダンジョンの世界が自分のものになりつつあることを実感した。




