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ホットケーキ

掲載日:2025/12/08

目覚ましより早く起きた。

今日は休日だ。

 俺は人生最高のホットケーキを焼こうとしていた。


 生地を混ぜ、フライパンに流し込む。

 ふくらむ、ふくらむ。

 何だこの立体感。建築物か。


 ぶくぶく泡が開き、そこから声がした。


『やっと起きたな、人間』


「え?」


『俺は選ばれしホットケーキ。貴様を食べるために焼かれたのだ』


「逆じゃない!?」


 ホットケーキはベコンと跳ね、俺の胸へ飛びついた。

 ふわふわなのに力が強い。

 パンケーキ界のイノベーション。


『抵抗しても無駄だ。俺はバターとシロップを味方につけた』


 テーブルのバターが勝手に動き、ナイフに乗って俺に塗られていく。

 ひんやりするな!

 シロップが天井へ跳ね上がり、滝のように俺をコーティング。


「やめろ!甘くされるのは俺の役目だ!」


『今日は逆転の日だ。朝食革命だ』


 ホットケーキは大きく口を開け――

 え、口あるの!?

 それはまるで、ふわふわのブラックホール。


「お、おい!俺は食べる側……」


『もう“食べられる側”だ』


 ばくっ!


 視界が黄金色に包まれる。

 甘い。香ばしい。

 これは……幸せの味……?


『そのまま眠れ。お前は今から……俺のカロリー』


「カロリー……!」


 意識が遠のく。

 胃袋の奥底へ沈んでいく。

 完全に敗北した俺が最後に見たのは――

 満足そうに膨らむホットケーキの笑顔だった。


 ――そこで目が覚めた。


 ベッドの上。

 汗だく。

 台所は静まり返っている。

 ホットケーキなんて焼いてない。


(夢……か…………)


 安心して、俺は布団に寝転んだ。

 心の底から、安堵の息を吐いた。


「いやぁ……夢でホッとケーキ」

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