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エクソシスター:灰の中の希望  作者: 紫咲 咲
始まり

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13. 音のない涙

しばらくして、ヒカルはようやく酒に酔ったサカイ少佐を二人の休憩室まで引っ張ってくることに成功した。

サカイ少佐はまだ口の中で何かをぶつぶつとつぶやいていたが、ヒカルはそんな言葉を気にしている場合ではなかった。

サカイ少佐は酔いすぎて、座り上がることも、目を開けることすらできない状態だった。


彼女が持ってきた空の日本酒の瓶は、いつの間にかどこかへ消えていた。


引きずられている途中で捨ててしまったのかもしれない。

一方、現在のヒカルは部屋にある唯一のシングルベッドへサカイ少佐を乗せようと必死になっていた。


もしサカイ少佐が協力してくれれば簡単な作業のはずなのだが――今のサカイ少佐はヒカルの脚にしがみついて離れない。


そのせいでヒカルは彼女を引きはがすこともできず、困り果てていた。


途方に暮れていたそのとき、ヒカルは一振りの刀に気づく。

「技術移転が必要だ」と思っていたその刀は、ベッドの上に静かに置かれていた。


こんなときに安堵する理由なんてないはずなのに、ヒカルはなぜかほっと息をついた。自分でもなぜそんな反応をしたのか分からず、内心驚いていた。


刀をしばらく見つめているうちに、ヒカルはサカイ少佐を引きはがす方法に気づいたかのようだった。ヒカルはベッドの上に置かれた刀を片手で持ち上げようとた――本来なら簡単にできるはずだった。だが理由は分からないが、その刀は異様に重かった。片手ではまったく持ち上がらない。


仕方なくもう片方の手も使い、ようやく持ち上げる。

ヒカルの感覚では、この刀は少なくとも二十キロはあるはずだった。


それなのにサカイ少佐はそれを左腰に常に下げている。風呂に入るとき以外は一度も外さない。サカイ少佐の怪力はやはり只者ではない。そう理解した瞬間、ヒカルは思わず息を呑んだ。だがそれは恐怖からではない。これから自分がやろうとしている行動へのためらいからだった。


ヒカルは両手で重い刀を構え、鞘ごしの切っ先をサカイ少佐の頭へ向けた。何も言わず、そのまま力任せにサカイ少佐の頭へ叩きつけた。


ぶつぶつとつぶやいていたサカイ少佐はその瞬間、ぴたりと黙り、ヒカルの脚を掴んでいた腕の力も徐々に抜け、ついには離した。


そう、サカイ少佐は一撃で気絶したのだ。それでも彼女の骨はあまりにも硬く、頭部から血が出ることもなかった。


ただ気絶しただけのようだった。サカイ少佐を失神させたあと、ヒカルは驚くほど簡単に彼女の身体を抱え上げた。

想像していたより軽いことに、ヒカルは思わず目を丸くする。


その逞しく引き締まった体つきを見れば、誰もが重量級の女性を想像するだろう。だがサカイ少佐は、時にはヒカルより痩せて見えるほどで、体重は三十六キロしかない。さらにその身体は、驚くほど柔らかくしなやかだった。柔らかいとはいえ、骨が極端に硬いからこそ、あの一撃でも頭蓋が割れなかったのかもしれない。その体重なら、ヒカルはサカイ少佐を難なくベッドへ寝かせることができた。さっきの刀は、ヒカルによって金属製の床の上へ無造作に放り出された。


サカイ少佐を寝かせたあと、ヒカルの視線は彼女の海軍帽に向けられた。ヒカルはふと好奇心に駆られる。――彼女の髪はどんな感じなんだろう。風呂のとき、よく見ていなかった。


ヒカルは帽子を取ろうと手を伸ばしたが、すぐにためらった。

「髪を見たら、サカイは怒るかな?」

そう思うと踏み切れない。


だが、好奇心の力はあまりにも強かった。

「まあいいや、ちょっと見るだけだし」そう覚悟を決め、ヒカルは海軍帽を外した。


その瞬間、帽子に押さえ込まれていた長い髪が、一気に解き放たれた。ヒカルは唖然とする。


その髪は、ヒカル自身の髪にあまりにも似ていたのだ。

海軍帽を落としてしまうほど、ヒカルは衝撃を受けていた。

ヒカルはそっと髪を一房摘み上げ、もう片方の手で自分の髪を触った。


滑らかさを比較するためだ――そして予想どおり、二人の髪はまるで同一人物のもののようだった。よく見ると、サカイ少佐の頭頂部には小さな傷跡があった。何が原因かは分からない。ヒカルは自分の髪を離し、身をかがめてその傷跡に触れようとした。だが、サカイ少佐の髪から漂う香りが、ヒカルの意識をさらっていった。


その香りは、まるで自分の香りと変わらなかった。

ヒカルはもっと近くで嗅いでみようと顔を寄せた――すると突然、サカイ少佐の両腕がヒカルを抱き締め、そのままベッドに引きずり込んだ。サカイ少佐はまだ完全には意識を失っていなかったのだろう。


意識が残っているからこそできた行動だった。

ヒカルはその突然の抱擁から逃れようと必死にもがいた。

だがサカイ少佐の腕は強く、ヒカルは抜け出せなかった。

さらにサカイ少佐は顔を寄せ、ヒカルの額に自分の額を押し当てる。彼女の口から漂う酒の匂いに、ヒカルは思わず顔をしかめた。


それでも腕から逃れられない以上、我慢するしかなかった。

そのとき、サカイ少佐の目尻から涙がこぼれ落ちた。

ヒカルの目の前で、彼女は泣き始めた。


しかし普通の泣き方ではない。声も上げず、ただ大量の涙を流すだけ。よく見なければ、泣いていることにすら気づかないだろう。


「……カガミネ」

サカイ少佐が小さくささやく。

距離が近すぎたため、その声はヒカルの耳に確かに届いた。

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