94 来世
親友に、来世は何になりたいかと聞いてみた。
「貝だな」
と答えられた。
なぜ貝なのか聞いた。
親友は少し悩んだ後、空を見ながら答えた。
「だって、貝って目があるんだろ。世界を見てはいたいけど、考えるのは嫌なんだよ。貝ってなんも考えてなさそうだろ」
それは貝が何か考えていたら失礼ではなかろうか。
「貝って基本何も言わないし、何も言う権利なかったら諦めもつくだろ。いいんだよ俺は諦めて」
なんて言っている。
まあそう考えるのは本人の自由なのでいい。
「俺は、なんかなまじ権利を中途半端に与えられているせいで悩んだりしてんじゃねぇかと思うんだよ」
それはこちらも同意見だ。
「俺らって、発言の自由は許されてるけど行動の自由はないだろ。そりゃ他人を害することを規制するのはわかるけど、金やら時間やらでがんじがらめだろ。それって動物的にはできるけど社会的に縛られているから不自由を感じるだけだろ。犬が空を飛べなくて不自由を感じることがあるかどうかって話だろ」
犬はまあまあ知能が高いから空を飛びたいと思うかもしれないが。
「貝ってうまいし。毒あるのもあるけど、まあまあな生物に好まれるだろ。死ぬにしても好まれて死にてぇよ」
そもそも死にたくないし食われたくないだろ。
「まあ、俺も貝好きだし」
お前が好きなのが牡蠣のクラムチャウダーなのは知っている。
「貝の中でも二枚貝がいいな。ホタテとか」
なんでだよ。巻貝とかいろいろあるのに。
「ホタテって泳げるらしいぞ。ホタテジェット」
ジェットとかいいながらパンチしてくんな。
「ま、生まれ変われるかなんて知らないし、生まれ変わったとしても記憶は引き継いでないだろうからな」
それはそうだが、この質問の全てを否定していないか。
「お前はなにになりたいんだ?」
僕か。僕は…。
「ああ、そうか。お前らしいな」
親友はそう笑って、立ち上がった。




