83 傘
傘を買い替えた。
前の傘は少し前の強風でぽっきりと折れてしまい、使えなくなってしまった。お気に入りの傘だったのだが、まあ数年使っていたしよく仕事をしてくれたと思おう。
さて、新しい傘なのだが、店頭に赴いて一番最初に目に留まったものを購入した。
すばらしいのはまず色だ。派手過ぎもせず落ち着きすぎもしない、優しい色合いだ。好みの色系統だったこともあり、無意識に目が向いた。
さらには大きさもちょうどいい。大きすぎると人との距離を意識してしまうが、小さいと当然濡れやすいので、実際に開いて確かめさせてもらった。これがすばらしく丁度良い大きさだったのだ。
開いて分かったのが、骨の数だ。骨が適度に多く、丈夫と書かれていた。前の傘は柄が折れてしまったので骨自体はあまり気にしていなかったが、持った感じの重さと骨の数がちょうどよいバランスだと思った。
そう、持った時の重さもよかったのだ。傘だから長時間上に向けて持つことが前提で、なかなか重いと疲れてしまうのだが、骨の数が多いわりに軽かったので素晴らしいと思った。
さらに私の心を射止めたのは、持ち手のシックな木の感じだった。プラスチック製でも構わないのだが、やはり木は安心感があるというか、心地よいと感じるのだ。
そんなこんなで購入したこの傘だが、まあまあいいお値段がしてしまった。財布には手痛いが、この傘の感じならまた数年は持ってくれるだろう。そのくらい働いてくれれば採算も合うというものだ。袋に包まれた傘を持って、喜ばしい気持ちのまま外に出た。
外は気持ちのいい快晴だった。傘がなくて困っていたのだから、雨の日に出掛けるわけがない。それに、買ったばかりの傘は本来の機能とはいえ早々に濡らしてしまいたくはないという気持ちがあるのだ。そんなことを考えながら帰宅して、傘のタグを切り、傘立てに挿した。
それから数日後、急を要する用事で外に出なければならないという時になって、雨が降り出してしまった。これはよい出番だと思い、新品の傘をばっと広げて外に出た。新品の傘はスムーズに開き、ぴんと張った布地でぱったたんと心地よく音を奏でた。急を要するとはいえ走らなくても良かったので、駅までの道をその音を聞きながら歩くことにした。持ち手が体温で徐々に温まり、馴染んでくるのがわかる。
雨の香りがする。傘の奏でる音も軽快で、水たまりをジャンプしてみる。そう大きくない水たまりはすぐに私の後ろへと移動し、私は再び歩き出す。
さらば今までの傘くん、お疲れ様。ようこそ今日からの新しい傘くん、これからよろしく。そんな気持ちで、雨の日を歩いていく。




