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76 廃校

  廃校へやってきた。私の母校だ。

 母校は、私の卒業の数代後に廃校になった。私の代もまあ子供が少なかったが、それより下はもっと少なかったらしく、児童が0人になったことで廃校になったそうだ。

 同窓会も、懐かしい先生に会うことも叶わなかった。現在は県が管理するただの古い建物だ。

 校門に立つと、幼かったあの日を思い出すようで懐かしい。もう人気のない校舎から、今でもまだ友達が駆けだしてくるような気がする。

 そうだ、この校門が開いている時間に登校して、クラスの皆とおはようって言いあったんだっけ。なにぶん田舎の学校だったので、教室数に比べて児童が少なく、使われていない空き教室なんかも結構あったから、先生が来る前の少しの時間に、中に入って遊んでたっけ。

 そうだ、クラスは基本一学年一つで、クラス替えがある都会の学校が羨ましかったんだ。転校生が都会から来たってわかった時は皆取り囲んで、まあ皆って言っても数人だけど、質問攻めしたんだっけ。

 時代だなぁ、と思うのは、私の時代にはすでに使われていなかった焼却炉と、私の時代にはまだ鶏とうさぎがいた飼育小屋だ。そうそう、野犬がいたから夜に襲われたりしないか不安で、有刺鉄線を張ってもらったりしたっけ。結局在学中に野犬に食われた動物はいなかった。

 遊具もそのままだ。鉄棒に雲梯、そうそう、あのタイヤが半分埋まった奴は私の在学中に作られた奴だ。馬とびみたいなことをやってたけど、私は運動神経が悪くて一番大きなタイヤはいつまでも飛べなかった。

 さわさわ、と校門の隣の木が揺れる。この木、なんの木だっけ。なんか有名な気だった気はする。桜ではない。ドングリはつけない。さて、思い出せない。

 再び視線を校舎に戻す。修学旅行が台風で中止になった時は、代わりにと校舎でお泊り会をした。あのドキドキする不思議な感覚は、私にとって大切な思い出だ。人数が少なかったから、空き教室を開けるまでもなく、男子も女子も先生も、一つの教室で寝たんだ。夜の校舎が怖くて、先生と一緒にトイレに行ったな。

 この学校が、好きだった。廃校になると聞いて、私はまずショックを受けた。衝撃で何も考えられなかった。なんだか、子供の頃の学校は永遠のそれのような気がしていたから。それでも再び現実に目を向けると、廃校の事実が今度は悲しみになって私を襲った。廃校になる前に連絡をしたくて、でも当時は学業が忙しくてできなかった。

 さわさわ、と木が揺れる。私はあの時、無理にでも連絡を取った方が幸せだっただろうか。果たしてそれは、わからない。ただ、もう使われなくなった校舎がそこにあるだけで、もうそこは私に答えを教えてくれはしなかった。これからは、私が答えを見つけ出さねばならないと、高校卒業以来に思った。

 「じゃあ、ね」

 また、は言わないよ。その確証はないんだから。

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