75 メッセージ
ピロン、という着信音と共に、スマホがふっと明るくなる。何かの通知だろうかと思い認証を解くと、そこにはクラスラインのカースト上位が送ってきたスタンプが。
「あー、だる」
私は作業の手を止めて、椅子から立ち上がり、ベッドにダイブした。ばふ、という音と共に髪の毛が顔にかかってくる。天井のライトを見たいわけではないが、髪は邪魔くさいので手で払いのける。
「なにこれ、何が言いたいの?」
意味不明なスタンプが一つ送られると、皆が自分の持っている使い道のないスタンプを披露しだした。
「なんなのほんと、こんなことに時間割くの?」
アホらしくなって、でもメッセージを送ってこの流れを断ち切るのも気まずくてやめた。後で見ればいいや、と思ってマナーモードにしてスマホを机の上に置く。天井のライトを見ていると、だんだん目が痛くなってくる。目を逸らすと、光の形に影が見える。
「…抜けたいな」
でも抜けるのもやっぱり気まずい。抜けたやつは早々に無視の対象になってるし。そんなリスクは負いたくない。そう思いながらうとうとしていると、母親から風呂への催促が入る。
翌日。学校に行くとカースト上位に話しかけられた。
「昨日なんでスタンプ送んなかったの?」
「え、ああ」
見るのを忘れていた。
「あー、ちょっと勉強してて、最初はみたけどそんな時間なくて」
「ふぅん」
カースト上位は去っていった。なにあれ。こわ。たかがスタンプ一つ送んなかっただけで狩りの対象?どんだけ自分のプライド守りたいの。そもそも送んなきゃいけないって言われてなくない?
「構ってほしかったんでしょ。なんかスタンプ祭りになってたから寝る前におやすみってスタンプ送ったら「なにそれ」って言われたし」
「ほんとなにそれ」
「やー、多分気にしてほしかったんでしょ。どうした?って」
スタンプ一つでそこまで察せるか。言葉を使え。人類の叡智だろ。それとも鳴き声一つで全部察してほしいボス猿か?
でも、全部察してほしい時くらいある。でも別の人間にはそんな事不可能だって気がついてるから、だから黙ってるんだ。私はラインを開いて送られたスタンプを見る。誰もお前の気持ち察してないんじゃない、これ。
馬鹿らしくなって、私はラインを閉じた。
その日の夜。おやすみのスタンプが送られてきた。おばあちゃんからだ。でも、私まだ起きてるよ。これから勉強だもん。ねぇ、身内ですら察してないじゃん。この機能、万能じゃないよ。これにすがるなんてやめた方がいいよ。
私は適当に返信して、国語辞典を開いて勉強を始めた。




