73 うぐいす
ほーきょ、けっけきょと、下手なさえずりが聞こえる。うぐいすは上手な鳴き方ができないとメスに選んでもらえないから、うぐいすが多い地域では上手い鳴き方をする奴が多いのだとか。それを考えると、こんな都会ではめったにうまい奴がいないのかと思うが、時々意外なほどにうまい奴がいる。
近所の公園には木がたくさんあるから、そこから聞こえてきているのか、それとも近所の庭木からだろうか。拙い鳴き方のそいつにはこれから少しずつでもうまくなってほしいと願う。
年の功なのか、時々春先でも異様に上手く鳴くやつがいる。一年も使わなかった鳴き方なら忘れていそうなものだけれど、あいつらは意外と覚えている。時々自然の素晴らしさに感嘆させられる。
そういえばうぐいすは何月かに鳴く鳥と言われていたか。最近では暖かくなるのが早いものだから、そこからずれているかもしれない。それはそれで悲しいが、それでも毎年鳴いてくれるのがなんだか待ち遠しいのだ。
鳴き声以上に何も知らない鳥だな、と思った。姿を想像すると少し大きなメジロだとか、少し小さなカッコウだとかそんなイメージしかない。うぐいす色なんていうのだから、優しい黄緑色なのかなとは思うが。何を食べるのかも知らない。桜の蜜を吸うのはメジロだな。はやにえをするのはモズだった。虫を食べているような気もするが、何かの木の実を食べていてもおかしくないかもしれない。本当に何も知らないものだからびっくりする。
鳴き声と時期だけが一人歩きして、気がつけば春の代名詞の一つになっているくせに、普通に過ごしていては何も知れないとは。
窓の外を見やる。気持ちのいい、いや花粉なんかが飛んでいてかすんではいるがいい晴れだ。花粉症ではないのだから布団を干せばよかった。また下手なさえずりが聞こえた。練習中なのか、先程より上手い気はする。ほーけっきょと、気の抜ける声がする。今はなんとなく、それでいい。




