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65 ねこのめ

 猫の目は、ビー玉のように丸くて透き通っている。横から見るとよくわかる。空を見上げる猫などは、その透き通った瞳で何を見ているのだろうか。

 猫の目は暗闇で光る。網膜の奥のタペタムという器官が光を反射して起こる現象だが、それがわからない時代には猫など暗闇で目を光らせる獣は、妖怪のそれと間違われたりしたものだ。

 それでは一つ、祖母から聞いた話をさせてもらおう。


 小さかった頃は、家の周囲には何もなく、あると言えば畑と神社と家の横の井戸だけだった。山が近かったものだから、猪に猿、野犬もよく家のそばをうろついていた。それらに見つかると何があるかわかったものではなかったから、夜には家を出るなと言われていた。

 ある時、ボロボロの子猫が家に迷い込んできた。青くて丸い目を精いっぱい見開いてこちらを見るものだから、助けてやりたくなった。少し離れたところに牧場があったから、そこのヤギ乳をもらって飲ませた。子猫はぴちゃぴちゃとそれを飲んで、寝てしまった。それが夕方のこと。

 翌日の朝、子猫は冷たくなっていた。あの丸くてみずみずしい目は、もう二度と開かれなくなった。

 その夜、大きな痩せた猫が家を訪れた。足元には二匹の子猫が付いて来ている。あの子猫の家族だと思ったので、使わなくなった布にくるんでいたその子猫を見せた。母猫は子猫の亡骸をざりと舐め、悲しそうな眼をした。その目はあの目と同じ、綺麗な青色をしていた。母猫は少しの間亡骸を見つめ、その後二匹の子猫を引き連れて庭木の下に隠れた。

 その後、布団に入ると夢を見た。あの母猫が現れて、ひょいと立ち上がって言葉を発したのだ。

 「子供を看取ってくださり、ありがとうございました。親から離れたら飢えて死ぬのが普通のところを、あの子は満たされて死んだ。それがどんなにやさしいことか、あなた方にお礼を言いたかったのです」

 しばらくの間あの母猫は子猫と共に庭木の下を住処にしていたが、カラスがやってくるようになると、子猫を連れてどこかに行ってしまった。母猫がそこにいるうちに親と一緒に子猫の亡骸を神社に持って行って清めてもらった。神主さんが何か説明してくれたが、あまり覚えていない。

 青い目の猫は少ないらしく、普段は緑か黄色の目をみかける。それでも猫を見ると青い目を探すし、青い目を見るとあの親子を思い出す。あの母猫と二匹の子猫が元気に生きたことを信じている。それでも青い目の猫はあの親子の生まれ変わりのような気がしてならないのだ。

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