57 梅
梅の花薫る季節がやってきた。白い花弁に黄色い蕊をつけて、ふふっと笑っている。
庭に梅が二本ある。どちらも大ぶりな実をつける、大梅だ。しかし片方は植える年が遅かったので、まだまだ小さいので、小梅と呼ばれている。
梅は家の一年のサイクルを支えている。
春の前には白い花で土作りをさっさと終えるべきだと教えてくれる。家庭菜園用の土はこの時期にはすべて用意してあるのだ。
夏前には葉が青々と茂り、葉に隠れて小さな実が成りつつあるのを見ることができる。この時期になると水周りの仕事をむしろ欲しがるようになってくる。
夏になると実はいよいよ丸く、収穫を待ちわびる。梅雨の長雨や台風によって実が落ちることもあるが、それを耐えた実はほんのり赤く、けれど全体はまだまだ青く枝にぶら下がる。
頃合いになると家族総出で梅の実を収穫し、紙袋に入れて一週間ほど置いておく。すると梅の香りが強くなり、あれだけ固く張っていた表面は少しの柔らかさを持ち始める。そうすると、父は梅酒を、母は梅シロップを作る。時折家の実だけでは足りなかったり、または小梅で梅干しを作る用に買ってきたりもする。
秋になると葉が落ち、それを掃き集めて土塚に捨てる。すると土塚の中の虫たちが葉を分解し、良質な土を作ってくれるのだ。
冬になって風がよく通るようになると、夏の間に伸びた梅の枝を切る。真っ直ぐ上へ上へと伸びている。これを切らねば翌年風通しが悪くなって虫が付きやすくなるのだ。「桜伐る馬鹿梅伐らぬ馬鹿」とはよく言ったものだ。
冬が過ぎる間は梅にときどき水をやる程度だ。根っこが乾きすぎないように、晴れの日の日数を数える。
春が来ると、前年に切った枝をコンロで燃やす。ついでに炭にも火をつけて、バーベキューをするのが恒例だ。燃えた後の灰と僅かな炭は家庭菜園の土に混ぜる。
梅の花は我が家の一年の始まりの花だ。これからの日々を穏やかに過ごせるような、そんな予感のする香りがする。




