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49 紙の箱庭

 少年は飛び起きた。くずかごの中のような、有象無象が放り込まれた箱の中で。少年は顔を回す。

 見慣れた風景だ。

 巨大なはさみにぼろぼろになった消しゴムとそのカス、折り途中の折り紙か、それとも放棄した紙くずか。もはやどれもが変わり映えしない日常で、変化を求めることもない。

 ふと、明かりが射し込む。慣性で少年の体が少し傾いて、また逆方向に力がかかって止まる。巨大な手が入り込んできて、なにかをがさがさと探す。お目当てのものを見つけたらしい手は、それを掴むと全てをそのままにしてまたそれを暗がりに押し込んだ。

 少年はまた顔を回す。はさみの場所はあまり変わらないが、消しゴムはいくつかのかけらがごろごろと少年の足元に転がっていた。折り紙は少年の視線に当たらない場所に行ってしまったようだ。

 少年はなぜ先ほど飛び起きたのかを考えてみた。なにか恐ろしい夢でも見ていただろうか。それとも不可解な何かを思いついただろうか。あまり覚えていないようだ。

 少年は横になった。何を考えているのか、誰にも分らない。少年はさきほど光が当たった場所を見た。光は間接的に薄い線をもってして少年のいる場所を照らす。とはいえ影の境界もあいまいなほどに弱々しい光ではあるが。

 少年の思考は、泥濘のようにぐつらぐつらと不安定なままだ。何を考えていたのか、それすら思い出せない。少年は寝てしまった。

 再び少年が起きたのは、自分の体がゆさぶられているような感覚を覚えた時だった。再びあの巨大な手が少年のそばをごそごそと物色している。

 少年は体を僅かに起こし、手の届かなさそうな端に逃げる。手はそれすらも執拗に追うように隅々まで何かを探している。

 少年は慌ててさらに逃げた。手は追いかけてくる。少年は逃げ惑った。手はすぐそこまで来ている。

 少年はついに掴まれて、眩しい場所に連れていかれた。

 「いつもお道具箱の中じゃ狭いもんね」

 少年は何も言わずに人形のように黙っていた。

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