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48 上に立つもの

 私が就職した会社の社長は、この会社を立ち上げた女性起業家だ。この時代、わざわざ「女性」と書くことも少し違和感を覚えるが、本人がそれを強みと考えているのだからまあいいだろう。

 社長は大学生時代に起業を考えてからというもの、学業の傍ら必要になるスキルを習得するための日々を送っていたそうだ。今では様々な予定に追われる日々だと、以前にインタビュー記事で見かけた。

 私はネット面接で採用されたが、まさか面接アプリに軽いノリで入ってきた女性が社長だとは思わなかった。あれには心底驚いた。

 私達は皆普段から生身で会うことが少ない。いわゆるテレワークで業務をこなすのが普通な会社だからだが、会社がそんな風だから当然ながら私は社長にも滅多に合わない。というよりも会うとなった時はオフ会のノリで、業務に関することはおいておかれる。そうして生身で会った時の社長は、最初に会った時のような、友達のような話し方でそこにいる。それでいて発言は親戚のお姉さんを彷彿とさせるような、家族もまとめて心配してくるようなことが多い。

 そんな社長は、自分の考えをよく人に話す。

 「私は自分を疑っている」だとか、「自分の価値なんてものは自分で見出すものじゃないと思ってる」だとか、まあ日常のふらっとした会話でそんなことを言われる。そんな重い話をぱっとするものだから、私は社長は色んなことを考えているんだなと思うしかない。きっと、色んなことを考えているから、考えた端からアウトプットしないと考えが交錯しすぎるのだ。

 そんな社長の言葉の中で、一番印象深い言葉がある。

 「人の上に立つと決めた瞬間から、自分には何もないと思うようになった。何も持っていない、何事でも一番にはなれない、けれど少しでも上を目指すことを諦めない人になろうと思った。何もないからこそ人は貪欲になれる。私は自分を磨き続けることにした。その姿が手本になればいいと思って。輝かしい姿を手本にするよりも、磨き続ける姿を手本にする方がいいんじゃないかと思って。空であれ、貪欲であれ、手本であれとね」

 一字一句同じではないものの、おおよそこんなことを言っていた。だから社長は、部活の先輩のような、友達のような人なのだ。

 社長は笑顔でこうも言った。

 「実際には私は努力なんて大嫌いな人だから、まともに手本になれてる気はしないけどね。でも、学ぶ姿勢を諦めようとは思わないよ」

 社長は社員を眺めながらそう笑った。社長がこの人だと思った、珠玉の人材が集まっていると言ったこの会社。きっと、社長は社員からも学ぼうと思っている。私はそんな社長に一生ついて行こうと思った。

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