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44 現代風に言うと

 俺の職場では、恋愛は許されてるけれど、結婚は認められていなかった。一企業が決めたんじゃなくて、国の方針でこの会社はだめだったらしい。なんでも仕事柄男が多い上に家に帰る時間も不定期で、そんな奴が夫や父になるのはいかんだろうみたいな。でも誰かがやらなくちゃいけない仕事だから、モテない、結婚したくない奴が多かった。もしくは、入った時は結婚するつもりがなかった奴とか。

 でも、多くの人がまだまだ働き盛りのうちに好い人を見つけて、結婚を考えるんだ。でも結局結婚できないから、皆悩んでいたんだ。そりゃ退職すれば結婚できるけど、この国じゃ一生に一つの仕事が当たり前だから、簡単に転職もできないし、辞めるって手段はなかった。

 そこに、ある部長が現れた。この部長ってのはすごい人で、それまでダメって言われてたことを色々変えてきたんだ。俺達は当然その部長に結婚禁止の社風を変えてほしいと望んだ。

 でも、結局部長にその権限も影響力もなかった。ただ、結婚しても会社に届けなくていいし、結婚祝いの宴会は名目を変えて開かれるようになった。

 俺達は指輪もつけられなければ写真を見ることも許されないが、家に帰れば彼女ではなく妻が迎えてくれるようになった。部長にだけは結婚したことを報告できたものだから、部下だけじゃなく他の部署からもその噂を聞きつけて部長の前で奥さん自慢をする奴も出始めた。

 けれど、当然ながらそんなことをしていれば会社の上の方にも報告が行く。最初は風の噂程度に、徐々に確実性を増して。当然、部長は本社に呼び出された。

 そして、俺達は仕事の最中にそれを知ることになった。

 部長が、地方の辺鄙もいいところに左遷される。部長と一緒に住んでいた「下宿している女性と娘さん」も一緒に行くそうだ。

 俺達は部長の左遷を嘆いた。なぜあんなにいい人がこんな目に遭わなくてはならないのかと。けれど、平社員だった俺達にそれを止める術はなかった。

 部長は左遷された。俺達の救いは、良心は、死んでしまった。

 それからは機械かのように仕事に打ち込むことになった。家に帰れば「名目上は彼女」の妻がいるが、そんなことを気にかけていられないほどに怒涛の仕事量が流れてくるようになった。

 やがてそんな社風もなくなっていって、国の方針も是正されてからは自由に結婚もできるようになったんだ。


 これが、俺のじいちゃんがバレンタインによくしてた話。

聖ウァレンティヌスは兵士の結婚禁止に反対してこっそり挙式を上げさせて処刑されて、その命日がバレンタインだそうで。

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