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41 おだやかな昼下がり

 昔から、家族とはいさかいが多いと思う。普通のことだし、言い争うこともせず問題を放置するよりかは幾分もましだとは思うが、話し合いが足りないとも感じてきた。末子の私は兄弟よりも家族のいさかいに触れてきていたから、わかることだった。

 特に、父とは過ごす時間も少なく、喋ることも少なく、言い争いすら発生しないことが多かった。母はそんな父を私の前でのみ愚痴を言っては下げ続けた。私は父の事情をあまり知らなかったから、知らないまま貶すことはあまりしたくなかった。母の話の中だけで形作られた父の姿を貶すのは、嫌だった。

 そんな折、幸か不幸かパンデミックが発生し、家族が共に過ごす時間が増えた。家を出ていた兄弟はそもそもあまり会わなかったが、その分家にずっといる私と両親は話す機会が増えた。

 まず、母は仕事柄出勤しないわけにはいかなかったので、平日は夜しか家にいなかった。父はというと、テレワークを中心に働ける仕事だったので、家にいることが増えた。私は、当時学生だったので、家で勉強することが多かった。自室では集中できなかったので、二人でダイニングに並んで仕事と勉強を続けていた。

 昼になると、父は昼ご飯を作り始めた。私のお昼ご飯は母が買ってくれることが多かったので、父とは違うメニューが多かったが、時々同じメニューが食べたくなって、父が作った後に自分で作ったりすることもあった。

 何分ズボラな性格なので、いろんなことが適当になりがちだったが、昼ご飯くらいならばそこまで手を抜かずに作れるものが多かった。そこで、時々父が一緒に作ってくれることがあった。

 父の作るラーメンやそばなどは、ちょっとした手間を加えて少し豪華になっており、その少しの贅沢が私は大好きだった。昔から、ラーメンに卵を入れたり、そばにネギをちらしたりする、その少しの味が何とも言えず好きだった。

 ただ、ここまで来てありがとうなんて言えない私がいた。昔から変わらない不器用な性格の父と、ひねくれて育ってしまった私のことだ。そこに粋な言葉なんて言えようはずもない。

 だからこそ、私はせめて「いただきます」と「ごちそうさまでした」を言うのだ。父は短く「ん」と返すだけで、そこに何か感情があるとも思えないが、私にはこれが精いっぱいだった。

 昼ご飯を食べ終わって、片付けを終え、再びそれぞれの作業に戻るとき。そこには、昔なら考えられなかったおだやかな空気が流れていた。

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