33 星を見る少年
小学生のみぎり、誕生日プレゼントで買ってもらった望遠鏡を使って、星空を見上げたことがあった。そこまで都会ではなかったからか、夜には星がよく見えた。
月のクレーター、土星の環、木星の四つの巨大衛星。宇宙の中では比較的近いそれらも、地球から万だの億だの、当時からすれば途方もないと思える数字で離れている。しかも単位は、当時ようやく知った㎞だという。1㎞を走るのですら疲れるのに、10憶㎞だなんて、どれだけ遠いのか想像がつかなかった。
もっと遠い星も見た。太陽系の惑星とは違って、光り輝く恒星が主だったけれど。そこまでいくと、もう自分の持っている望遠鏡じゃどれだけ拡大しても光る点にしかならなかった。それでも、星座の位置と照らし合わせて、どれどれがこういう星で、この星は何等星だと調べるのは楽しかった。クリスマスプレゼントにサンタに頼んだのは、星の図鑑だったほどだ。
そうして楽しく調べるうちに、自分で星を見つけて、命名してみたいと思うようになった。将来の夢は天文学者。そう堂々と言うようになったのは、それから3カ月ほど後のことだ。
だが、壁があった。中学では理科の成績が芳しくなく、また自分の行けるレベルと距離の高校では、天文を含む地学が学べなかった。そうしているうちに、大学に行ったとしても天文学者になんてなれるものかと思うようになってしまった。
そこで、せめて自分も宇宙に関わる仕事がしたいと思い、データ解析と画像処理を学ぶようになった。どうやら民間でも天体画像などを処理して人間の見ることのできる画像にする技術を持った集団がいると知ったからだ。
そうして画像を生成する仕事についたあと、余裕が生まれるたびに本屋に行くようになった。お目当てはいつだって、宇宙や星に関するものだ。
子供のころ貰った望遠鏡に、天来図鑑。そして、大人になってから買った宇宙に関する雑誌や本。すべてはあの頃の星空を見上げていた少年の心に贈られたものだ。あの頃の自分に、将来は天文学者にはなれないといえはしないだろう。だが、もしかしたら、今日自分が作った画像を見た少年少女が、将来を宇宙の謎のために伸ばしたいと思うのであれば、自分は天文学者になれなくても落ち込む必要はない、と言えるだろう。だって、どんな仕事をしていようとも、我々は宇宙に浮かぶ地球という孤島に暮らしているのだから。そこからは、いつだって宇宙が見えるはずだ。君の手だって、ほら、宇宙にある。




