28 ドール
私はお人形です。いわゆるドールで、木製の体と弱々しい布でできています。髪はたしか、人毛が含まれていると聞きました。定かではないです。
私の最初のご主人様は、11歳の女の子でした。私のことをよくかわいがってくれました。けれど、私は何も答えることができません。可愛いねと言われても、ありがとうとは言えないのです。ご主人様は、大人になるにつれ私を見ることが減っていきました。気がつけば私は倉庫の奥で埃をかぶっていました。
数年が経った頃、薄汚れた私を見て、ご主人様は直しに出すことにしたようで、私は一度ご主人様の手を離れました。
修理屋で、「大事に使われていたようだ」と聞きました。けれど、それを喜ぶ心も私にはありません。ただガラスの瞳で世界を見るだけ。それだけしかできないのです。服を取り換えて、髪も新しいものをつけてもらって、顔色だって明るく塗りなおしてもらいました。これでご主人様の元に帰れるのです。
ご主人様が店にやって来て、私は店の奥から久しぶりにご主人様の顔を見ました。その顔はなんだかやつれて見えました。
お家に帰ると、ご主人様は私を新しいご主人様に紹介しました。その子は、まだようやく目が開いたようなかわいい子でした。私は新しいご主人様の隣に寝かせられて、ふわふわの肌を見ました。温かい手が私の手を握り、それがどうとも思えないままその子は笑いました。
私はご主人様と共に一日中寝転がっていました。前のご主人様の時のように座ったりすることは少ないです。斜めになった頭では、天井と目の端に映るご主人様を見ることしかできません。自分では動けないのだから当たり前です。
ある時から、私の隣にご主人様がいるのは夜だけになりました。隣にあった温もりが消えたことを表す言葉の必要性も感じないまま、私はそれを受け入れました。そんな日が繰り返されたある日、前のご主人様が私を抱き上げて小さな椅子に座らせました。目の前には、拙くも確かに歩いている幼いご主人様の姿がありました。私は少しだけ斜めを向いた世界で、その光景を見続けていました。
それからまた時が経った頃、ご主人様は私に何かを向けました。それは顔料を含んだ何かでした。私はそれの名前を知りません。それが何度か私の顔をかすめて、しばらくするとご主人様は私以外にもそれを向けていました。私はそれをどうすることもできません。止めることも褒めることも叱ることもできません。
前のご主人様が部屋に入ってきて、悲鳴を上げて、ご主人様の手を掴んで大きな声で何かを言いました。ご主人様は泣いていましたが、前のご主人様も泣きそうな顔をしていました。
それから私はまた修理に出されました。またご主人様が戻ってくるまで、この仲間がいっぱいいる場所で待つのだと思いました。けれど、ご主人様も、前のご主人様も、いつまでたっても私を迎えに来ませんでした。
しばらくして、仲間が売れていく中、私は店に並んだまま世界を見ていました。私はどうやら不人気なようです。何がそうしているのかもわからないまま、私はただ次のご主人様を待ちました。ただただ待ちました。
店のご主人が床に伏して、人が駆け寄る中でも待ちました。けれど、もう時間が経ち過ぎたようです。私を含むいくつかの仲間は、明日燃やされます。木製のドールは時間経過に弱いのです。
私は何も分かりません。感情も、人の事情も、自分自身のことも。何かに生まれ変われたら、わかるでしょうか。




