23 さみしいひと
友達がいる。家族も健在。恋人だっている。なのに、どこかずっと寂しいんだ。わかってくれるか?
友達と談笑していても、ふとした瞬間に孤独を感じるんだ。どんなに自分に関係のある話でも、なんでだか気がつくと空っぽの自分を眺めているような感覚になる。どうしてここにいるのかわからなくなる。
家族と共に過ごしていても、急に果たして自分がここにいていいものか不安になる。この平和な家庭に、自分がいることへの違和感。自分がいない方がこの家はもっと穏やかになるんじゃないだろうか。
恋人と過ごしている時も、なんだか途端に弱気になってしまう。この人と繋がれているのは奇跡にも等しくて、その奇跡とかいう細い糸でこの人を雁字搦めにしてしまってはいないだろうか。そんなことを考えてしまい、酷く辛くなるのだ。
ある夜、無性に寂しくなって雨の中を走った。走って、走って、走った先にあったのは、暗い川だった。飛び込んでしまおうかとも思った。でも、怖くなってしまった。それに、急にいなくなったらいろいろ面倒だろうし。そうやって理由をつけて、俺は家に帰った。雨は冷たかった。凍えそうだ。
こうして歩いている時、一番孤独を感じるんだ。急にそう感じた。涙か雨かわからないもので顔が濡れている。走ったせいで肺が痛い。この痛みが癒えるまでに、家につけるだろうか。この痛みだけは、自分のものであってほしい。自分に寄り添ってくれるものであってほしい。
そう思ったから、家に入る前に少し休んだ。気がつけば、服はもうびしょびしょになっていて、芯まで濡れ切っていた。これは、怒られるなぁ。誰も隣にいないと思っていたのに、こうして帰る家があって、心配してくれる人がいることに気がついた。
ああ、なんだ、全然独りじゃないな。なんだかそれすらもむなしくなるのに、どこかで温かく感じてしまう。ふ、と笑みがこぼれる。諦めのような感情で自身が満たされていく。だってそうだろう。どんなに寂しいと嘆いたところで、人は永遠に誰かと交われない。ならいっそ、交わらないまま平行に歩く人を見ればいいじゃないか。
なんだか少し気持ちが晴れた気がする。今後もきっと孤独を感じて寂しさを感じるときはある。それでも、そういうものなのだと、誰でもそうして生きているのだと思えば気も紛れるかもしれない。それでいい。最初からそれに気づいていればよかったんだ。
家の敷地に入って、門を開けて、階段を数段登って、そうして玄関に手をかける。
「ただいま」




