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隠れた名店

皆さんどうも、ガクーンです。

では、お楽しみください。

「何でもやります!」


 本人はとてもやる気のある様子。金を貸してくれとか言ったら簡単に貸してくれそうな勢いだ。俺はそんなこと言わないけどな。


 蓮はそんな冗談を考えつつ、少しの間を置いて話し始める。



「ルミネさんにはとあるダンジョンをクリアしてきてほしいんです」


「とあるダンジョン?」


「はい」


「……どんなダンジョンか分からないけど、絶対クリアしてきます。それで……そのダンジョンの名前は?」


 ルミネは首を傾げながらもやる気を見せながら承諾する。



 サポーター。ズバリ、荷物持ちに必須なスキルがゲットできるダンジョン。中は暗くてジメジメしており、泥と灰がステージ上で飛び交う、とても不人気なステージで、俺でさえあのダンジョンは潜りたくないと思うほどに不愉快なダンジョン。


 そのダンジョンの名は……


 俺は一呼吸置き、そのステージの名を伝える。



「汚泥まみれるダンジョン」


「汚泥まみれるダンジョン? 名前からして既に大変そうなステージですね……」


 ルミネは顔をしかめながら答える。



「このダンジョンは特に難しいステージではありません。モンスターも出てくるわけではありませんし、特にクリア速度を気にする必要もありませんしね」


 蓮は一つ一つ丁寧に説明していく。



「じゃあ、簡単なステージなんですか? それなら任せてください。明日にでもすぐにクリアして……」


「え? めちゃクソ大変ですよ?」


「……ですよね」


 ルミネは肩を落とす。



「汚泥まみれるダンジョンはクリア自体、本人のやる気があれば出来ちゃいます。しかし、汚泥とダンジョンの名にある通り、汚い泥に埋め尽くされているステージとなっています。ぶっちゃけ、女性がやるステージではないです」


「そ、そんな……。では、何故そのステージを私に攻略しろと?」


 ルミネは嫌そうな顔をしながら攻略させる意図を聞いてくる。



「ルミネさんが必要とするスキルがゲットできるからです」


「え! スキルがですか!」


 ルミネは驚いた様子で詰め寄ってくる。



「ちょっ、離れてください」


「す、スキルが。私に必要なスキルがゲットできるって本当なんですか!?」


 蓮の肩を掴み、上下に揺らすルミネ。



「詳しく話しますから一回これを止めてください!」


「あっ、すいません!」


 ルミネは慌てて俺の肩を掴むのを止める。


 蓮はルミネに捕まれた部分を撫でながら話を再開し。



「いいですか。一度しか言わないですから良く聞いてくださいね」


「もちろんです!」


 ダンジョンの攻略法や取得できるスキル等の重要となるであろう情報を話したのであった。



 後でルミネの話を聞いたところ、彼女自身まだスキルを持っていなくてあんな事をしてしまったという。やはり、この世界ではスキルのゲット方法等があまり知られていないのではないだろうか。まぁ、他人がスキルをゲットしようが、興味ないから別にいいのだが。


 そうして蓮は一通り情報を話し終えた後、やけに絶望じみた表情を浮かべるルミネに頑張れと言うエールを送り、二人は分かれたのであった。



 ルミネがゲットしようとしているスキルの獲得条件の一部を少しだけ話をすると、汚泥まみれるダンジョンを数回クリアしたぐらいじゃゲット出来ない。という事だけ教えておこう。


 汚泥まみれるダンジョンは特殊ステージで、他とは違いそのダンジョンの攻略回数に応じてスキルや特別報酬が貰えるステージとなっている。


 それにルミネがその条件を聞いて落胆してしまうほどには大変な取得条件となっているから多分、この世界でもそのスキルを持っている者は少ないと思う。


 俺としてはこの程度で悲鳴をあげていたらこの先の攻略についてこられないと思うし、もし辛かったら止めてもいいよとだけ言っておいた。当の本人はこの一言で余計やる気を見せていたけど。



「んじゃまぁ、俺も自分の事に集中するか」


 蓮は昨日に引き続き、木漏れ日ダンジョンの周回を再開したのであった。



~~~


「よし……これで17だ」


 蓮はステータス画面を開き、やり遂げた表情をしていた。




 名  :冥利蓮  

 性別 :男

 LV :13→17


 HP :81→102


 STR:19→23[+14]

 DEF:18→21[+8]

 INT:13→15[+4]

 MND:18→22[+14]

 DEX:12→15[+3]

 AGI:23→29[+10]

 LUK:18→22[+10]


 スキル:疾走、馬鹿力




  HPが3桁台に突入し、AGI(素早さ)に至ってはもうすぐ30を超えそうだ。


 ここまでHPが上れば相当な事が無い限り難易度2ステージではやられる事はあるまい。



「よし。それじゃあ、あそこに行ってみるか」


 こうして蓮は木漏れ日の森ダンジョンの周回を終え、ダンジョン攻略で最も重要なモノを買いにとある場所へと足を運んだのだった。



~~~


「ばあさん。買いに来てやったぞ」


 俺はある店の扉を開け、大きな声でこの店の主に言い放つ。



「っ! あ、あんたは」


 おっ、いたいた。


 当の本人はカウンターの上で呑気に寝ていたらしく、俺の声で飛び上がって起きていた。



「もう忘れたのか? 昨日の事なのに?」


「忘れるわけないじゃろう! あと、儂はばあさんじゃなくて猫じゃ!」


「あーはいはい。そう言う設定だったな」


「だから設定じゃ無いとあれほど……」



 今日も元気に騒いでる。


 俺の目の前で騒いでいるこのばあさん……じゃなかった。この黒猫はこの店『マジリック』の店主、メリニャだ。


 ここのお店はポーションから武器や装備。スキルブックといった貴重なアイテムまであるという充実ぶり。しかも、それだけでは飽き足らず、なんとダンジョンで手に入れたアイテムまで他の店よりも高い値段で買い取ってくれるのだ。


 俺は興奮気味のメリニャをどうどう……っと言ってなだめる。



「なんかむかつくなだめ方じゃな……まぁいい。今日は何しに来た」


「だから初めに言ったでしょ。買い物しに来たって」


「……ほんとか?」


「本当だって」


「……分かった。何が欲しい」


 メリニャはやっという事を信じたのか、俺に耳を貸し始める。



「その前に……」


「今度はなんじゃ?」


「これを……」


 俺はメリニャが座るテーブルの前に、今日収穫したグランスライムの核数個と湖水花の束を置く。



「やっぱりまたこれか! でも貴重なグランスライムの核をこれほど……。はっ。また騙される所じゃった。だから昨日あれほど言っただろ。買取は冒険者ギルドでしろと。まったく……」


 怒っているのかシャーっと威嚇しながら言われてしまった。



「はいはい。今度から気を付けるって。それでなんだけど……」


「話を聞けっ!」


 こうして俺は目の前に広げたアイテムを無理やり相手に押し付け、本題へと入る。



「今の手持ちの持ち金、全部出して買える範囲で一番いい装備を見繕ってほしい。予算は……」


 俺はライセンスカードに記載されている自分の全財産をメリニャに見せる。



「……26万ポイントねぇ「買取金額も入れてくれよ」……分かっとるわ! 大体30万ポイントでいいじゃろ。ったく……面倒な客に捕まったもんじゃ」


「あっ、装備はAGI(素早さ)中心でよろしく」


「……本当に変わった奴じゃ」


 メリニャは文句は多いが見る目は本物で、その証拠に周りの武器店よりも良い物を扱っている。


 俺は前世でもマジリック店に頼りっきりで、再序盤から終盤まで大活躍のお店だった。


 今回も頼りにしてますよ。



 蓮は熱い目でメリニャを見る。


「……なんじゃ? 何見ておるんじゃ。や、やめろ……そんな目で儂を見るな……」


 毛を逆立てながら変な勘違いをしているメリニャをよそに、俺はそこから離れ、店の品を物色しに歩き始める。



 ポーションに上位の装備に……おおっ! こんな貴重な武器まで置いてんのか、


 傷を癒すポーションに今の俺では買えないようなお高い武器や装備が並ぶ中。



「おっ、これは……」


 俺は盗難防止のガラス製の棚に入っているあるアイテムに目を奪われる。



 とても分厚い本。読めない文字が表紙にこれでもかとぎっちり書かれており、中を開けると何も書かれていない白紙が広がっている。


 読む用途で使用しないなら、一体何に使うんだと思われるかもしれないが、この本にはある重要な役割が隠されている。


 この本の正体。それは……


 俺はガラスケースに手を貼り付け、中にある本を見つめる。



「スキルブック……いいなぁ」


 この本たちはスキルブックと呼ばれ、本を開き、ある一ページにのみ記されている文章を脳内でも声に出してもいいから読み上げるとそのスキルブックに対応したスキルがゲットできる優れモノなのだ。



 意外と中々優秀なスキルブックも扱ってる……って。


 俺は目をまん丸にし、驚いた顔で。



「流石にこれはぼったくりすぎだろ! おいばあさん! これは少し高過ぎじゃないか!」


 店主に聞こえるように叫ぶ。



 前世よりも遥かに高いスキルブックの値段。


 前世じゃ100万ポイントで買えるスキルブックもここでは桁が一つ違う。



「急に大声上げてなんじゃ……うん? スキルブックの事か。そりゃ当り前じゃ。スキルブックの落ちの悪さを知らんのか」


 メリニャは構ってられないと言った様子で俺の近くまで寄って去っていく。



 いや、良く知っているよ。


 周回してても滅多に落ちないからな。



 だが流石にこの値段は……


 その時、蓮の頭にとある考えがよぎる。



 待てよ。グランスライムの核や湖水花……一体いくらで売れていた?


 前世では良くてグランスライムの核が2500ポイント。湖水花が150ポイントって所だった。


 しかし、昨日と今日の買い取り金額を考えてみろ。グランスライムの核は冒険者ギルド買取1万ポイント。ここ、マリジックでは1万5000買取だぞ。相場が倍以上違う。



 蓮はもう一度スキルブックが陳列されている棚を良く観察する。


 これが1500万……これも……あれもだ。



「やっぱりだ」


 蓮は確信する。


 この世界。前世よりも相場が3~10倍ほど高くなっていやがる。


 でもなんだ。宿屋や食べ物の値段はそこまで大きい変化はない。


 蓮は顎に手を当て、深く思考し始める。



 何が高くなって何が変わっていないんだ?


 相場が高くなる線引きを導き出そうとする。


 あっ、そうか。ポーションや武器。装備やスキルブック等、高くなっているものは全てダンジョン産のものだった。


 ポーションはダンジョンで倒したモンスターの素材やダンジョンに生えている薬草等を使って調合。武器や装備もダンジョン内で倒したモンスターからドロップしたアイテムを使用して作られている。スキルブックはモンスターを倒した時に超低確率で落ちるから言わずもがな。



 蓮はスッキリした顔でうんうんとしきりに頷く。


「準備できたぞ……って。何そんな晴れやかな顔をしておるんじゃ? まったく得たいが知れんの。お主は」


「いいからいいから。それで……どんな装備用意してくれたの?」


「ふふっ。聞いて驚くなよ。儂がお主の為に用意した装備は……これじゃ!」


 こうしてメリニャは自信満々に、自身の猫の手で器用に装備の上にかけてあった布を引っ張り、蓮にお披露目するのであった。

お読みいただきありがとうございました。

この話が面白いと思って頂けたら高評価等よろしくお願いします!

では、また次回お会いしましょう。

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