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ひまわりと君。  作者: 真夏の果実。
1/1

初恋と誕生日

中学最後の夏

僕は君と出会った…

まだ幼かった君は僕のことをどう思っていただろうか

正直僕は、ただの子どもだとしか思っていなかった。

でも、そんな君との小さな約束が僕の人生を大きく変えるなんてこのときはこれっぽっちも思っていなかったんだ。



「拓也ーっ!!起きなさい」


夏休みだってのに朝から姉の美可子の甲高い声で目が覚める。

外の太陽もさっさと起きろと言っているかのようにギラギラ輝いて僕の睡眠を妨害してくる。


「…う〜ん」


そう言って僕は布団に潜り込むが数秒後に姉が部屋に突撃してくるのだ。


「起きなさいって!!」


姉は勢い良く僕の布団を剥がしこれ以上眠らせてはくれないらしい


「なんだよー俺昨日は3時まで頑張って勉強してたんだからもうちょっと寝かせてくれよ、せめてあと10分」


僕は属に言う受験生ってやつなので毎日夜中まで勉強しているため夏休みなんてあってないようなものなのだ。

そんな僕の今の楽しみなんて寝ることと食べることぐらい

彼女?そんな存在がいたら僕の夏休みはとても充実したものになっていただろうね。


「夏休みなんだからいつでも寝れるでしょ」


姉の一言で一気に現実に引き戻される。


「あと5分でいいので寝かせてください」


そんなお願いをしても姉は容赦なく僕の布団を奪い、枕を奪い、しまいにはベッドから引きずり降ろされた。


「もー!!なんだってんだよ」


もう眠気も冷めて若干不機嫌モードな僕を見て姉はニヤリと笑った。


「ちょっとお願いがあって」


「何?」


姉のお願いなんてロクな話じゃないとわかりつつも逃してはくれそうにないのでとりあえず話だけでも聞くことにした。


「今日さ雪乃の家に行くんだけど〜ちょっと手伝ってほしいことがあるの」


さっきまで適当に話を聞いてさっさと終わらせようと思ったがそうもいかなくなった。

なぜならその雪乃という女性は僕の初恋の人だからである。


「なんの用か知らないけど、嫌だって言っても連れてくんだろ」


嫌々な素振りを見せつつ内心心は踊っていた。


「じゃあ、早く着替えて」


姉に言われるがままに服を着替えて歯を磨き髪をセットした。

そして、姉と一緒に雪乃さんの家へと向かった。

雪乃さんの家は車で20分ほど走ったところにある住宅街。

雪乃さんが学生のとき以来の再会でドキドキが止まらなかった。


ピンポーン


「はーい」


インターフォンを鳴らすと女の人の声がして

パタパタと走ってくる音がドアの向こうから聞こえた。


ガチャ


「いらっしゃい、あら?拓也くん?久しぶりね」


そう言った雪乃さんは学生時代とは違う大人の色気がムンムンで思春期真っ盛りの僕には少々刺激が強すぎた。


「こここんにちは、お久しぶりででです」


無駄に緊張してうまく喋れない。


「何あんた!愛しの雪乃に会って上がっちゃった?」


今日ほど姉を嫌いだと思った日はない。

雪乃さんは僕が好意を寄せていることを知らないからだ。

姉の一言で雪乃さんはすごく驚いた顔をしていた。


「何言ってんだよ、変なこと言うなよな」


慌てて誤魔化しては見たものの雪乃さんと目を合わせることができなかった。


「あっごめんなさいね、入って入って」


雪乃さんにそう言われ僕達はリビングに通された。


「ママー」


リビングに入ると眼鏡をかけた女の子が駆け寄ってきた。


「茉優ちゃんお客さんよ、ご挨拶は?」


「こんにちは」


そう言って女の子はテレビの前に座ってアニメを見だした。


「あれ?本日の主役は?」


姉がそう言って誰かを探している。


「今、パパとアイス買いに言ってるわ」


この会話を聞いてもうおわかりだと思うが雪乃さんは結婚している。

6年前にできちゃった結婚ってやつをしているのだ。

旦那さんは3つ年上の超エリート

高身長高学歴おまけにイケメン…

僕なんて足元にも及ばない。スペック高すぎ…

ただできちゃった結婚なのはちょっと気になるけど

トータルで見て僕に勝ち目はない。

そもそも同じ土俵にすら立ててないのだ。


ガチャ


「ただいまー」


玄関のドアが開き雪乃さんの旦那さんが帰ってきた。


「おかえりなさい洋介さん、ご無沙汰してます」


「美可子ちゃん来てくれたんだね、拓也くんも」


そう言って洋介さんは台所の冷蔵庫にアイスをしまった。


「ママ〜お外暑かった〜」


玄関から一人の女の子が歩いてきた。

そして、僕の姿を見た瞬間固まった。


「愛結ちゃん、お客さんよご挨拶は?」


雪乃さんにそう言われたがその子は雪乃さんの影に隠れて下を向いた。


「ごめんなさいね、この子人見知りで…」


「全然大丈夫っすよ」


そうは言ったものの…

僕はこのあとの展開を予想していたので嫌な予感しかしなかった。


「よし、じゃあ準備しよっかー!!」


姉がそう言って俺を見た。そして…


「あんた子守りね」


「は?」


嫌な予感的中…


「俺、一人で見るの?」


「ごめんなさいね、買い出し全然できてなくて」


雪乃さんが申し訳なさそうにそう言った。


「いや、全然大丈夫ですよ!!」


気づいたらそう言っていた。馬鹿野郎。


「拓也くんごめんね、俺もちょっと会社に用があって」


洋介さんはそう言って足早に家を出た。


「じゃあ、よろしく」


「ごめんね」


姉と雪乃さんもそう言って家を出た。


「やだーママー」


みんな居なくなった瞬間女の子たちは泣き出した。


「すぐ帰ってくるから大丈夫だよ」


そう言うと片方の女の子の茉優ちゃんだけ泣き止み


「まあ、お菓子食べ放題だしいっか〜」


そう言って戸棚をあさりお菓子の入った箱を持ってきた。


「茉優ちゃん…だっけ?何歳」


「6歳」


6歳!?6歳でこんな切り替え早いもん?と驚いてると


「おじさん何歳?」


おじさんだと?と思いつつここは大人の対応


「お兄さんは15歳だよ」


と爽やかな笑顔で答えると


「思ったより若かったわ」


と言って茉優は笑った。

そんな茉優とは裏腹に愛結はずっと泣いている。


「愛結ちゃん大丈夫だよ!すぐ帰ってくるからお兄ちゃんと一緒に遊んでようよ」


「やだ」


即答だ。帰ってくるまで一生泣いてやるの構え。

子守りなどしたことのない俺は悩んだ。

すると茉優が…


「もー5歳になるのに泣くんじゃないよ」


そう言って愛結を押した。

愛結は驚いて一瞬泣きやんだがさっきよりさらに激しく泣き出した。

しかし、茉優はお構い無しで


「あの子泣き虫だから!ほっときゃ寝るよ!そんなことよりお馬さんしてー」


そう言って僕を馬にして大喜びで遊んでいた。

馬になりながら僕は


「愛結ちゃんも乗る?」


と言ってみたものの無視。まぁそうなるよね。

しばらくすると愛結は泣きやんでソファーで眠っていた。

そして、茉優もいつの間にか眠りにつき僕も眠っていた。






「拓也!!拓也!!起きろ!!」


再び姉の甲高い声で目が覚める。


「ん?おかえり…」


「おかえりじゃないよ、愛結ちゃんは?」


姉の一言に僕は飛び起きた。

さっきまで一緒に寝ていた愛結がいない…




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