第92話 幻影地獄長との戦い
轍との戦闘を終えた肉浩は息つく暇もなく負傷者の介抱を始めた。
先ずは轍にボコボコにされた世助とマイコーを介抱する。世助が一番重症だった。
轍の攻撃をまともに喰らい意識を失っている。
「酷い有様だけどよく生きてた。いやもう死んでるけど。」
くだらない冗談は程々にし世助とマイコーを安全な場所まで運んだ。
海澤の介抱は藤彦が行っていた。
海澤は両腕の骨が粉々になっていたが他に目立った外傷はなくその腕も徐々に治り始めていた。
「大丈夫か?今安全なところまで運んでやる。」
藤彦は海澤を抱えて安全な場所まで運ぶ。
「これでよし、と。」
「よし、後は三人が回復すれば出発できますよね。」
負傷者の介抱が終わり近くの岩に腰掛けた肉浩。すると突然辺りが少し暗くなった。
見渡すと自分の周囲に影が出来ていた。
後ろを振り返ると鬼獄長が立っていた。肉浩は急いで戦闘態勢をとる。
「鬼獄長!?もう復活しやがった!」
さっきまで倒れていたのだが、いつの間にか起き上がり背後を取られていたのだ。
もし攻撃されていたらただでは済まなかっただろう。
「轍を倒したオニか。流石ここまで勝ち残って来た脱獄囚だと褒めておこうオニ。」
素直に脱獄囚に称賛を送る鬼獄長。その言葉により一層警戒を強める脱出メンバー。
「ただ称賛しに来た訳じゃないんだろ?」
「轍との戦いで大分消耗してるようオニなぁ。しかしオイラも左半身に痺れが残ってるオニ。卑怯とはゆってくれるなオニ。これも仕事なんでなオニ。」
轍の毒ガスで倒れた下鬼達が次々立ち上がってくる。あっという間に脱出メンバーは取り囲まれた。
「やれやれ、ようやく戦いが終わったと思ったら第二ラウンドだ。ついてねぇなぁ。」
脱出メンバーは各々戦闘態勢を整える。
「一斉に………掛かれオニ!」
「「「オオオオオオーーーーーッ!!!」」」
鬼獄長の号令で下鬼達の士気が上がる。
脱出メンバー目掛けて一斉に襲いかかって来た。
「フン!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオ」
藤彦と森田が攻撃する。
「「「どわあああああああああああああ」」」
氷と音波の広範囲の攻撃により下鬼が吹っ飛ばされる。
「お前達はやはり危険だオニ。今ここで潰しておくオニ。」
鬼獄長は藤彦の背後を取り棍棒を全力で振り下ろした。
キィィィィィィィィン
「これを止めるとは貴様、本当に人間オニか?」
肉浩が鬼獄長の棍棒を右手で止める。そのまま怨力で捻じ曲げ圧し折った。
「なるほど、氷と音波の使い手の広範囲攻撃も厄介なのは確かオニがそれ以上に貴様の得体のしれなさ、何よりも厄介オニなぁ。」
鬼獄長は右ストレートを、肉浩は左ストレートを繰り出した。
ゴン!!!
「「「うおああああああああああ」」」
「これは………凄いな。」
「なんてパワーのぶつかり合い………オレ達まで飛ばされそうだ。」
「皆、肉浩を信じようぜ!」
二人の拳がぶつかり合い凄まじい衝撃波を生み出し下鬼達は吹き飛ばされ脱出メンバーも吹き飛ばされないよう踏ん張るのが精一杯だった。
「やるなぁオニ!流石ここまでやって来ただけのことはあるオニ!」
「獄長も、相当イカれたパワーしてるぜ。」
お互い拳を引っ込め後ろに飛んで距離を取る。
鬼獄長は持ち前のスピードを活かし一瞬で肉浩の間合いに入り込む。
大抵の敵であれば何が起きたかも分からない内にやられてしまうスピードである。
ゴチン!!
肉浩の拳が鬼獄長の顔面を捕えた。
「うおおおおおおおおおおおおおお」
そのまま鬼獄長を殴り飛ばした。
「な……何故だオニ。オイラのスピードを見切ったとでもいうのかオニ!?」
「今の攻撃、少し遅かったぞ。左半身がちょいと痺れてるって言ってたな。そのせいじゃないか?」
「………!」
「さぁ立て、勝つのはオイラ達だ!この地獄を脱出し、皆を救うんだ!」
「オイラはこの幻影地獄の鬼獄長だオニ。この地獄から貴様らを出す訳にはいかないんだオニ!」
お互い譲れない信念の元、二人の拳がぶつかりあった。




