第90話 逆転サヨナラホームラン
轍は肉浩のパンチをモロに受け吹っ飛ばされる。
轍はすぐに立ち上がり殴られた所を手で拭う。すると拭った手に血がついていた。その血を見て轍は激昂した。
(血!?血だと!?たかが人間風情に殴られてこのワタクシが血を流しただと!?)
轍は怒りで我を忘れ頭に血が上る。
「ゆ……許さんぞ脱獄囚共!!下等生物の分際でよくもこのワタクシの美しい顔に傷を付けてくれたな!!この薄汚い家畜共が!!コロス!コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスブッコロス!!!」
脱出メンバーは皆死んでいるのだが激昂し我を忘れている轍に肉浩は追い打ちとゆわんばかりにさらに顔にパンチをかました。
バキッ
容赦のない拳が轍を襲う。轍はまたしても吹っ飛ばされる。
起き上がると轍は口の中に異物感を覚え吐き出した。
吐き出したものを見るとなんと、自分の奥歯がだった。肉浩のパンチを受け奥歯が圧し折れたのだった。
圧し折れた奥歯を見て轍は更に怒りのボルテージが増した。
(た……たかが人間風情が……このワタクシに対して!!3発も殴った上に奥歯を圧し折るとは!!!許さん!ゆるさんゆるさんゆるさんゆルさんゆルサんユルさんユルサんユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンユルサンゾ!!!!!)
「あああああああああああもう許さん!!薄汚い下等生物風情がああああああああ!!!高貴なるワタクシに対して!!一度ならず二度三度と無礼を働くとは!!貴様ら全員消し炭にしてくれるわあああああああああ!!!」
そう言うと轍は空高く飛び上がり右手を上に上げた。
すると凄まじいパワーが右手に集中してゆく。みるみる内に右手に大きな黒い球が作られている。
「ハッハッハッハッハッハッこの技は先代の幻影地獄長を葬った技だ!辺り一帯を更地にする程のパワーがあるぞ!貴様ら人間にこの技が耐えられるかな?」
「これは……ちょっとまずいなぁ。」
藤彦は黒い球を破壊するべく氷の塊を打ち込むが球の圧倒的なエネルギーに為すすべもなく全て吸収されてしまった。
諦めまいと世助はランチャーを作り出し黒い球に向かってぶっ放すが破壊することは叶わなかった。
「ハッハッハッ無駄だ。人間如きに破壊できるものか。このワタクシの最も強力な技だ。打ち破ることは出来ない!」
とうとう黒い球のエネルギーが完全に貯まりきった。轍は脱出メンバーに向かって球を放った。
「うわやべぇぞこれ!」
「こらあかんわ。なんとかせんと。」
「しかしこのパワー、どうしようもねぇぞ。」
脱出メンバーに黒い球が迫る。絶体絶命のピンチにどうすることもできず慌てふためいていた。但し、たった一人を除いて。
「うおおおおおおおお!!!」
肉浩は鬼獄長の棍棒を拾い迫りくる黒い球を打ち返そうとした。
ゴシン
「ぐおおおおおおおおおおおおおおお」
(なんてパワーだ。少しでも気を抜いたら飲み込まれる………)
肉浩は黒い球を相手に何とか粘っているが打ち返すには球が余りにも大きすぎた。
「ハッハッハッ無駄だ無駄だ。人間の力で打ち返せるものか。しかしこのパワーを前にして怯まず粘るとは信じられん。貴様本当に人間か?」
「ぐおおおおおおおおおお」
(ダメだ!パワーが強すぎてはね返せねぇ。しかしここでオイラが諦めたら………)
肉浩は皆の顔を思い浮かべた。脱出メンバーの皆だけでなく無限地獄に落とされた皆や生前の友達、そして最期まで向き合うことが出来なかった父の顔が浮かんだ。
(そうだ!オイラは必ず生き返りパパに会って一言謝るんだ!こんなところで終わるわけにはゆかねぇんだよ!!)
すると球の勢いが少しだけ弱まった気がした。本当に球の勢いが弱まったのか肉浩の想いが限界を越えた力を出せたのかは定かではないが少しだけ余裕ができた。それでも押し返すにはまだ球のパワーが大きすぎる。
「うおおおおおおおおおおおおおおお」
(まだだ!まだ終わるわけにはいかないんだ!パパ、皆、頼む。オイラに力を……この球を押し返すだけの力をくれ!)
肉浩の想いに体が答えたのか少しづつ球を押し返してゆく。
「がんばれ!肉浩!」
藤彦の応援が聞こえてきた。
「がんばれ!」
「いけ!押し返せ!」
「がんばれ!」
メンバーの応援が聞こえる。応援が背中を押したのか球を押し返す力がどんどん湧いてくる。
「うおりゃあああああああああああ」
ドーン
肉浩は棍棒をフルスイングし球を打ち返した。球は轍の横スレスレを通過し空中で弾け散った。
「どうだ!これがオイラ達の逆転サヨナラホームランだぜ!」
肉浩は轍に棍棒を向けてゆい放った。




