第89話 反撃の兆し
世助は体を動かそうと必死になっているが力が入らず殆ど動けなかった。
(頭痛もしてきた……轍と呼ばれるあの男の仕業なのか……?)
世助は体を動かそうとすることを止めて轍の術を破る方法を回らない頭で考え始めた。
(体に力が入らず頭痛に体が痺れる。この症状は神経毒か……?)
(神経毒だとすると奴はこの毒を無差別に振り撒いている事になる。毒の発生源がある筈だ。)
世助は周囲を見渡し毒の発生源を探すが
(恐らくそう遠くない所に発生源がある筈なんだ。くそっ、目が霞んできた……)
発生源を必死に探すも霞んだ目では良く見えない。
そうこうしている内に轍がマイコーを痛めつけ始めた。マイコーの叫び声が聞こえる。
(まずい!マイコーがやられている。なんとかしなくては……)
何とかしたいという気持ちとは裏腹に体はゆうことを聞かない。もどかしさを感じつつ何もできない自分とマイコーを痛めつけてる轍に怒りを覚えた。
(頼む……動いてくれ!ここまで来て死ぬ訳にはゆかねぇんだよ!もう死んでるけど。)
世助は藁にも縋る思いだった。だがその想いが届いたのか世助は体を起こして立ち上がることが出来た。
しかし立ち上がれたまではいいが立ち上がるだけで精一杯で助けに行くどころかその場から歩くことすら出来なかった。
(立ち上がれたはよいがこれでは戦えん、済まないマイコー……)
そうこうしてると轍は肉浩に標的を変え近づいてゆく。世助はとうとう力尽き仰向けに倒れた。
(くそ!仲間のピンチに何もできずに指を咥えて見てることしか出来ないのか……)
しかしこの時世助は仰向けに倒れたことによりこの絶望的な状況が覆る事になるとは一ミリも思いもしなかったのである。
(痛え、頭打った)
倒れた時受け身も取れず地面に思い切り頭をぶつけてしまった。しかし頭をぶつけたせいなのかは定かではないが、ほんの一瞬だけ、瞬き一瞬ほどの時間だったが目の霞みがとれくっきり見えた。
(ぼやけてた景色が、一瞬はっきり見えた……いや!そんなことよりあれは……?)
瞬き一瞬程の時間だったがはっきりと見えた。
(空中にシャボン玉が……浮いていた。一瞬だったがあれは見間違いなんかじゃない!!)
今はぼやけてしまっているが確かに見えた不自然に空に浮かぶシャボン玉。何故空にシャボン玉が浮かんでいるのか、頭は回らないがその答えは一瞬で出た。
(きっとあのシャボン玉から神経毒のガスを放出しているんだ!じゃなきゃあんなところにシャボン玉なんかある訳がない!)
世助はハンドガンを握りしめた。頭を打ったせいかどうかは定かではないが体にほんの少しだけ力が入る。
(今はぼやけて見えないが、あの位置にシャボン玉があった筈だ。)
世助は照準を定め引き金を引いた。
パァン
空中のシャボン玉が弾け散った。
(馬鹿な、何故バレた!?今までワタクシのシャボン玉の存在に気付けた者は誰一人として居なかった。それをあんな人間如きに………)
シャボン玉が弾け飛んだ瞬間、脱出メンバーは身体が楽になった。完全に本調子とはいかないものの体に力が入り、痺れが取れ頭がしっかり働くようになった。
轍はもう一度シャボン玉を作ろうと涎を貯めて膨らませるも直に弾け飛ぶ。
涎でシャボン玉を作るとなると直ぐに弾けてしまい作るのは難しい。
シャボン玉を作るのに苦戦してると肉浩が今までのお返しとゆわんばかりに轍の顔面に拳を叩き込んだ。
「ぶぐぉッ」
脱出メンバーは轍を取り囲み形勢逆転し轍は飄々とした態度を完全に崩し激昂した。
「取り囲んだ位で優位を取ったつもりか!自惚れるな人間風情が!!貴様ら下等生物がこのワタクシに勝とうだなんて烏滸がましいにも程があ」
バキッ
肉浩が轍を殴り飛ばした。




