第80話 灼熱地獄長との戦い その7
「ぐっ……うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ
オニッ」
鬼獄長は拳を抑えて悶絶していた。確かに鬼獄長のパンチは肉浩の頭を撃ち抜いたが、肉浩にはまるでダメージが無くパンチを繰り出した鬼獄長がダメージを受けていたのだ。
鬼獄長は何が起きたのか分からずパニックになっていた。
(な……何が起きたオニ!?何故拳から血が出るオニ!?何故コイツはオレ様のパンチを受けてダメージが無いオニ!?)
「貴様、一体何をしたオニ?」
肉浩は鬼獄長の質問に返事をする元気すら残っていなかった。
「何をしたのかと聞いているんだオニ!答えろオニ!!」
返事がないことに腹を立てた鬼獄長は肉浩の頭を思い切り蹴飛ばした。しかし
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッオニッ」
肉浩は無事で蹴った足から血が出る。あまりの痛みにまたしても悶絶する鬼獄長。
(な………何故だオニ。何故攻撃するとオレ様にダメージが……)
(おかしい、聞いていた怨力と違うオニ。怨力は一人につき一つまでの筈だオニ。)
鬼獄長は肉浩と少し距離を取り石を拾って肉浩に向けて投げた。
ゴズッ
結果は石が粉々に砕けてしまった。肉浩にはダメージが入っていないようだ。
(何故だ!何故だオニ!何故奴はこんなにもしぶといんだオニ!)
鬼獄長はパニックになって冷静な判断が下せないでいた。倒せないのであれば他の脱獄囚を始末すべき所だが鬼獄長は肉浩を一番先に始末することに拘った。
それが命取りになるとも知らずに
「ならばこれならどうだオニ!」
鬼獄長は肉浩の頭を踏みつけた。
「じわじわと体重を掛けてゆけばどうなるかなオニ?」
鬼獄長はそのままじわじわと体重を掛ける。すると
「うおっ、足が重いオニ……こいつ、すべての攻撃を反射出来るオニか?」
鬼獄長は足をどけようとすると肉浩が右手で鬼獄長の足を掴んだ。
「な、なんだオニ!?貴様!まだ動けたオニか!?」
肉浩はそのまま怨力を発動した。
バキッ
「ぐわああああああああああああああ」
鬼獄長の足が捻じ曲げれてへし折れた。曲がっては行けない方向に曲がっている。
鬼獄長は足を抑えて悶絶する。
「き……貴様……まだそんな力が……あったオニか……」
鬼獄長は肉浩に恐怖を覚えた。途中までは完全に鬼獄長が勝っていたのに気付けば瀕死の脱獄囚一人に完全に追い詰められていた。
鬼獄長は得体の知れない何かを感じ取った。
(コイツ……何かヤバいオニ!オレ様の本能がそう言っているオニ!逃げるしか無いオニ!!)
鬼獄長は逃げようと後ろを振り返ると意識を失った脱獄囚達が目に入った。
(そうだオニ!こいつらから先に始末すれば良いんだオニ。幸い奴は動けないオニ。奴以外の六人を全て始末してやるオニ!)
鬼獄長は倒れている脱獄囚の元へ這って近づいてゆく。肉浩は追いかけようとするが限界を越えており這うことすらままならなかった。
「やめろ……オイラと戦っているのに……背を向けるな!!」
肉浩の声は鬼獄長には届かなかった。鬼獄長はゆっくりと確実に脱獄囚に近づいてゆく。
(まずいぞ、何とかしないと皆やられる。しかしもう体が動かねぇ……)
自分自身にもどかしさを感じつつも打開策を考えるが、この状況を切り抜ける案は思いつかなかった。
(頼む!オイラの体、これで最期になってもいい!動いてくれ!!頼む!!!)
肉浩は最期の力を右腕に込めた。すると
バイィィィィィィィィン
右腕の力だけで8m程上に飛んだ。肉浩自身が一番驚き困惑していた。しかしこのまま着地地点を調整すれば鬼獄長に近づくことができる。このチャンスを無駄にするわけにはいかなかった。肉浩は拳を握りしめ鬼獄長に向かって落下する。
鬼獄長は藤彦のすぐ近くまで辿り着いた。まずはこの男から始末してやろう。そう思い右手で藤彦の頭を掴んだ。その瞬間自分の頭上に影ができ不思議に思い上を見ると肉浩が上から降ってきた。
「あああああああああああああああああああ」
肉浩は落下の勢いで鬼獄長の頭に拳を撃ち込んだ。
「うごっ」
鬼獄長は肉浩のパンチをまともに喰らいそのまま倒れ込んだ。
肉浩は鬼獄長の体がクッションとなったことで落下の衝撃は軽減されたが全身の骨が折れているため体中に激痛が走った。しかしここで意識を失うわけにはいかない。
(まだだ!誰か一人でもこの地獄の外に出さないと。この暑い中では目を覚ます前に死んでしまう!もう死んでるけど。)
肉浩は近くにいた藤彦の口に左手の指を突っ込み右手で這って引きずる。幸い目の前にに出口の扉がある。
「ぐ、ううううう」
目の前に出口の扉があるが肉浩にとってその目の前の距離が途方もない距離だった。這いずる度全身から悲鳴が上がる。
特に左腕が一番痛かった。折れた左腕で藤彦を引きずるのは困難を極めた。
「あ、諦めるもんか……」
肉浩は最後の気力を振り絞り何とか灼熱地獄を脱出した。
出口を抜けた先は灼熱地獄の熱気が流れてくるものの灼熱地獄にいるよりはよっぽど涼しかった。
全ての気力を使い果たした肉浩はそのまま意識を手放した。




