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第47話 かつての因縁

「お前が、鬼獄長か?」

脱出メンバーの目の前に居たのは痩せ細った老人の鬼だった。

無限地獄長や深淵地獄長の様な筋骨隆々な鬼を想像していた脱出メンバーは予想外の姿に一瞬困惑した。



「いかにも。ワシがこの漆黒地獄の鬼獄長じゃオニ。」

弱々しい見た目に反し堂々とした態度で質問に答える鬼獄長。



「出口の蔓はお前の仕業だな?」



「いかにも。ワシの術で誰も出られんよう扉を蔓で覆って封鎖したのじゃオニ。」

堂々と質問に答える鬼獄長に違和感を覚えつつも藤彦は質問を続ける。



「つまりお前を倒せばあの蔓は無くなってオイラ達はこの地獄から出られるんだな?」



「いかにも。術者であるワシを倒せば術は解除されお前達は晴れてこの漆黒地獄から出られるという訳じゃオニ。」

その言葉を聞いた脱出メンバーは警戒を強める。いつ鬼獄長が襲いかかって来るか。どんな罠を用意しているのか。



「ならば今ここでお前を倒させてもらうぞ。悪いが老人の見た目をしているからといって手加減はしないからな。」

藤彦がそう言うと鬼獄長は大きな声で笑い始めた。



「ホーッホッホッホッホッホッ相変わらず野蛮な男じゃオニ。ワシはこの日を楽しみにしていたんじゃオニ。貴様のせいでワシはこの砂糖もミルクも入っていないコーヒーの様な苦汁を舐める思いをしたというのにオニ。」

そう言って机の上に置いてあったマグカップを手に取り中のコーヒーを一口飲んだ。



「何を言っているんだ。貴様と某は会ったことがあるのか?」

藤彦が疑問をぶつける。すると鬼獄長は残念そうな顔をした。



「成る程、覚えていないオニか……それはとても残念だオニ。ワシはあの日から貴様のことを一瞬たりとも忘れたことはなかったというのにオニ。」



「質問に答えろ!!貴様は一体何者なんだ!!」

藤彦はかなり激しめの口調で鬼獄長を問い詰める。



「お〜恐ろしいオニな。思い出せないなら思い出させてやるオニよ。この傷に見覚えは無いかオニ。」

鬼獄長は長く伸びた前髪を掻き分け額を脱獄囚に見せつける。額には大きな古傷があった。



「その傷は………まさか貴様、あの時の……」

藤彦は信じられないものを見るような表情を浮かべた。



「ようやく思い出したようオニな。そうオニ。あの時は随分と世話になったオニな。」



「バカな……あれはもう600年以上も前のことだぞ!?」



「そうだオニ!その時の鬼獄長がワシじゃオニ。忘れもしないワシがまだ鬼獄長になって間もない頃の話だオニ。」





____________________





『貴様が無限地獄から脱獄してきた脱獄囚オニな?』



『だったらどうする?某達を止められるのか?』



『止めてみせるさオニ。』

鬼獄長になってまだ間もなかったが自分の強さに絶対の自信を持っており、囚人を相手に勇敢に立ち向かったが結果は惨敗だった。手も足も出ずに敗北を喫した。



『バ………バカなオニ………ただの人間に敗けるなどオニ………』



『さあ皆、次に進むぞ。』

藤彦達は次なる地獄へ向かう。



『ま………待てオニ………オレはまだやれるぞオニ……』

鬼獄長は意識を手放した。





____________________





「嘘だろ!?あれから一度も代替わりせずずっと鬼獄長やってたのか!?」

衝撃の事実を知った藤彦は驚愕する。無限地獄長はこの600年で五回変わったが漆黒地獄長は一度も変わっていなかったのだ。



「その後貴様は他の地獄で捕らえられ無限地獄に送り返されたと聞いたのじゃオニ。しかしワシは貴様がこの程度で諦めるような男では無いと思ったのじゃオニ。だからこそワシはまたこうして貴様がやってくる日を待ったのじゃオニ。あの日のリベンジをするためにオニ。」



「ずいぶん…執念深いんだな。某へのリベンジのためにずっと鬼獄長を引退せずまた某がやってくるのを待ったってのか。」

藤彦は呆れを通り越して感心していた。しかしここで負けるわけにはいかない。目の前のコイツはまだ通過点に過ぎないのだから。



「道中、鬼が襲ってこなくて嘸かし快適だったじゃろうオニ?当然じゃオニ。ワシは他の鬼達には何も伝えておらんからのうオニ。おっと、勘違いしてくれるなオニ。貴様らに楽をさせるためではないぞオニ。ゲームは今からスタートじゃオニ。」



「ゲームの内容は簡単じゃオニ。ワシは貴様らから逃げるオニ。貴様らはワシを追いかけ他の鬼達から逃げるオニ。鬼達はお前たちを追いかけるオニ。名付けて『ダブル鬼ごっこ』じゃオニ!!」



「いやごっこじゃなくて本物の鬼だろ!?」



「さあ、ダブル鬼ごっこスタートじゃオニ!!」

そう言うと鬼獄長は壁の警報ボタンを押した。すると漆黒地獄に声が響き渡る。



『緊急事態発生!緊急事態発生!無限地獄より脱獄囚が逃走しました。現在漆黒地獄に到達した模様。拷問官は直ちに脱獄囚を取り押さえよ。繰り返します………』



「さあ、これで下鬼達が貴様らを捕まえに来るぞオニ。追っ手を躱しワシを倒せるかなオニ?」

鬼獄長は獄長室の窓から逃げていった。



「まずい、鬼獄長を追うんだ!絶対に見失うな!」

鬼獄長と脱獄囚の鬼ごっこが始まった。

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