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第44話 漆黒地獄 その3

「なあ、無限地獄から脱獄囚が出たって話は聞いているか?」

脱獄囚が出た事は漆黒地獄にも伝わっている筈、それなのに脱獄囚の捜索がなされず拷問が行われていた事に違和感を覚えて質問した。



「そんなことがあったオニか?オイラは何も聞いていないオニよ。」



「やはり変だな………」

肉浩の怨力で認識を捻じ曲げられた下鬼は今や肉浩の従順な下僕、ゆわれた事は素直に従うし質問には嘘偽りなく正直に答える。



漆黒地獄に脱獄囚の情報が届いていないことを疑問に思う藤彦。

案内している下鬼が新入りだから何も聞かされていないのか、深淵地獄長が処分を恐れて報告をしなかったのか、それとも何らかの理由で情報を伝えられなかったのか、色々考えるも答えに辿り着かない。



「考えても分からないし、今は先に進むことを考えよう。」

モヤモヤしつつも気持ちを切り替え先へ進む。





_____________________





鬼獄長は脱獄囚が漆黒地獄に来たと知らせを聞いても全く動じなかった。

無限地獄長や深淵地獄長は脱獄囚が出たと分かると直ぐに手を打ち脱獄囚を捕らえるため拷問を中止し脱獄囚を血眼になって探していたが漆黒地獄長は脱獄囚の知らせを聞いても落ち着いていた。



「脱獄囚とは懐かしいのうオニ。何百年振りかのうオニ。」



「まぁ、ワシを倒さん限りこの地獄から出ることは出来んからのうオニ。ワシはこうして囚人達が来るのを待って居ればよいのじゃオニ。」

そう言って鬼獄長は椅子に座り熱いコーヒーを飲む。



「まずは出口まで辿り着けるかのうオニ。まあ、既に二つの地獄を攻略した連中じゃオニ。これくらいは余裕じゃろてオニ。」



「さて、脱獄囚はワシの元まで辿り着けるかのうオニ。今から楽しみじゃオニ。」

鬼獄長は獄長室を後にした。





_____________________





下鬼の案内の元歩いていると一同がある違和感を覚えていた。



案内している鬼の歩くペースが明らかに落ちているのだ。



「おいどうした?ペースが落ちてるぞ。すまんが先を急いでるんだ。もっと早く歩いてくれないか?」

肉浩が早く歩くよう催促すると



「すまんオニ。いつもならこの時間にはもう寝てるから眠くて仕方ないんだオニ。しかも晩ごはんも食べてないからお腹ペコペコオニよ……」



「……そういえば忘れてたな。鬼は生きてるから食事も睡眠も必要なんだった。」



「どうするんや?これ以上案内は出来そうにあらへんで?」



「仕方ない。もう帰っていいよ。」

肉浩の言葉を受けた下鬼は帰っていった。



「……さて、どないしよか?」

案内役の鬼が帰っていったのでこれからどうするか考える一同。



「このまま闇雲に進んでも出口には辿り着けない。最悪の場合出口とは反対側に進んでいるかもしれない。」



「どうする?他の下鬼を仲間に引き入れて案内させようか?」



「今の時間鬼はねんねしてるぞ。」



「起きるまで待つべきか?下手に動けば出口から遠ざかるかも知れないし。」



「そうだな、待とうか。」

脱出メンバーは鬼が起きる時間まで茂みに隠れて待つことに決めた。



ジリリリリリリリリリリリリリリ



けたたましい音が鳴り響き鬼達が起床する。

鬼達が囚人を連れて拷問を始めた。



「さあ〜て今日の拷問は〜グツグツに溶かしたこの銅の風呂に入ってもらうオニよ〜。」

液体になった銅の風呂が運ばれてきた。よほど高温なのか風呂の中でポコポコと音を立てている。



「うへぇ、釜茹でかぁ……」ヒソヒソ

嫌な記憶を思い出した肉浩。こんな拷問を毎日受けているのかと思うと漆黒地獄の囚人に同情した。



「さあ、早く入れオニ。後が支えてるんだオニ。」

そう言って下鬼は囚人を風呂に蹴落とした。



「ぎやああああああああああああああ」

囚人の悲鳴が漆黒地獄に響き渡る。

悲鳴を聞いた他の囚人が震え上がる。



「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

「い、嫌だ!やめてくれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

「うわあああああああああああ」

囚人の一人が恐怖のあまり逃げ出した。しかし暗闇の中で何かに衝突する。



「ぶああああああああああ」

何かに衝突して転ぶ囚人を鬼が捕まえる。



「おい貴様!逃げ出そうとしたオニな?岩にぶつかるとはドジな奴だオニ。丁度いいオニ。次は貴様があの風呂に入るオニよ。」



「い、嫌だ!助けてくれぇぇぇぇ」

抵抗虚しく風呂に叩き落される。



「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

囚人の断末魔が地獄に響き渡った。



「ひえぇ……容赦ねぇなぁ。」ヒソヒソ

「そろそろやるか?」ヒソヒソ

「オーケー。ほないくで?」ヒソヒソ



砕が怨力を使い辺りを明るく照らす。

鬼達は眩しい光に目を瞑る。



「おわあっ」

「な、何事だオニ?」

「ま、眩しいオニ。」



鬼達の目が眩んでいるうちに藤彦がでて鬼達を一人残して全員倒す。



残った鬼は肉浩が体に触れて仲間に引き入れる。



視力が戻った鬼は周りを見て驚いた。同胞は全てやられており目の前には知らない囚人が立っている。



「お……お前は一体何者だオニ!これはお前の仕業オニか?」

下鬼の質問に答えることもなく命令を下す。



「出口まで案内しろ。」



「質問に答え………………分かったオニ。出口はこっちだオニ。」

脱出メンバーは下鬼に付いていく。



拷問を受けていた囚人達はポカンと見ていることしか出来なかった。

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