第38話 選択
肉浩と鬼獄長の戦いはワンサイドゲームだった。
肉浩は鬼獄長に向かって真っ直ぐ走っていった。
鬼獄長は地面を蹴り上げ礫を飛ばす。
礫が命中し吹っ飛ばされる肉浩。
「ぐわああああああああああああ」
小さな破片が当たっただけとはいえ鬼の力は人間を遥かに超越しておりそんな鬼が全力で蹴り上げた破片は弾丸のようなスピードで飛んでいく。
それを喰らえばただでは済まない。
「オイラはこうして距離を保って地面を蹴り上げるだけでお前はどんどん消耗していくオニ。さあどうするオニ?お前が仲間に引き入れた鬼達はどんどんダウンしているオニ。」
味方に引き入れた鬼は数百いたがじわじわ倒されてゆく。鬼獄長の言う通り、仲間に手が及ぶのは時間の問題だ。しかし鬼獄長との戦いは時間稼ぎに徹して付かず離れずの戦法を取るため苦しい戦いを強いられていた。
(くそ、このままだとマズい。一発逆転の作戦でもない限り勝てない。)
「もう諦めたらどうだオニ?お前ではオイラは倒せないオニよ。今ここで降参すると言うのであれば無限地獄長に頼んで罰を軽くするよう口利きしてやることも出来るぞオニ。」
鬼獄長から予想もしなかった提案をされた。今ここで降参して脱獄した罰を軽くしてもらうか、最後まで抗うか。
今までの肉浩なら考えるまでもなく抗い続ける事を選んだだろう。しかしこの絶望的な譜面、これ以上やっても勝ち目はない。『降参』の二文字が肉浩の頭にチラついた。
「本当に……降参すれば……罰を軽くしてくれるのか……?」
「本当だともオニ。オイラも鬼じゃないオニ。今降参すれば無限地獄長に口利きして罰を軽くすることを約束するオニよ。」
「いやお前は鬼だろ。」
「さぁ、今すぐ決めろオニ。このまま勝ち目のない戦いを続けるオニか、降参して罰を軽くするオニか。」
肉浩は悩んでいた。ここで降参するべきか、最期まで抗うべきか、しかし抗った所で勝てるビジョンが見えない。降参して罰を軽くしてもらうべきか。降参する方に気持ちが傾きつつあった。
(このままやっても勝てない……もう降参するしかないのか………?)
肉浩は倒れた仲間の方に視線を向ける。
そこは鬼達の乱戦の場だった。仲間に引き入れた鬼達がなんとか粘ってはいるが全員やられるのも時間の問題だった。仲間を痛めつけられる様を見たくは無かった。
(皆済まない……オイラ達の脱獄の旅はここまでのようだ……)
肉浩は鬼獄長に降参する事を伝えようと口を開く。
「分かった……鬼獄長。この戦いオイラ達の負けだ。だからこう「肉浩!!!」
肉浩がここまで言うと遠くから声が聞こえてきた。
「最期まで諦めるな!降参する事は許さんぞ!最期まで足掻き抜け!!」
藤彦が意識を取り戻し肉浩に激励の言葉を送る。
「あの野郎!余計なことをゆいやがってオニ!」
(そうだ……オイラは何馬鹿なこと考えていたんだ………例え最後の一人になろうとも最後まで足掻くって最初に決めていたじゃないか……)
藤彦の言葉を受け目が覚めた肉浩。諦めモードだったがやる気に満ちた顔つきに変わった。
「さぁ続きを始めようぜ鬼獄長。オイラは最後まで諦めない。」
「愚か者がオニ……ならばせめてオイラの手で葬ってやるオニ!」




