第26話 深淵地獄
「なッ、何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
脱出メンバーが目撃したのは底の見えない大きな穴だった。
巨大な穴が果てしなく続いている。深淵地獄と呼ぶに相応しい場所であった。
「ここが深淵地獄だ。この地獄の殆どが大きな穴になっている。落ちれば最期、落下死が待っているぞ。」
脱出メンバーはゆいようの無い緊張感に包まれる。
これから自分達が挑む場所がいかにヤバい所なのかを物語っている。
「こんな深い穴がずっと続いているのか……でもこれじゃ先へ進めませんよ?」
「そこら中に足場がある筈だ。探してみろ。」
藤彦がそう言うと肉浩は足場を一人で探しに行った。
「いいのかい藤彦さん。さっき単独行動は危ないって言って説教かましてたくせに。」
「大丈夫だ。今の時間鬼はねんねしてるし足場だって至る所にある。遠くまではゆかんだろう。」
そう言うと肉浩の声が聞こえてきた。
「藤彦さん!足場見つけました!」
「おおよくやった肉浩。皆、肉浩の所へ集合するぞ。」
肉浩は改めて足場を見る。とても細く長い鉄骨だった。
鉄骨の先は全く見えず遥か彼方まで伸びていることが分かった。
対して横には細く試しに足を乗せてみると肉浩の足の幅よりも少し細い位だった。
試しに足場に体重を掛けてみると鉄骨は曲がったり動いたり軋んだりなど全くしなかった。
どうやらこの鉄骨の足場は見た目とは裏腹に相当頑丈に作られているようだ。
とはゆえこんなに細い足場を渡って進まなくてはならないと考えると不安になる。
足場の近くに集まった所で藤彦が作戦の説明をする。
「この足場の続く先が深淵地獄の出口になる。つまり某達はこの足場を進んでゆく必要がある。注意事項だがさっきもゆった通り落ちたら死ぬ。いやもう死んでるけど。この細い足場を落ちずに進む必要がある。」
脱出メンバー全員が足場に注目する。
細い幅の全体重を預けるには些か不安さが残る細い鉄骨の足場。
深淵地獄の囚人達は皆ここで只管鉄骨を渡らされてると思うと同情してしまう。
「この細い足場では走ることなどままならないだろう。必然的に落ちないようゆっくり歩くことになる。しかしちんたらしていればそれだけ鬼に発見される危険性も上がる。戦闘回数は間違いなく無限地獄より多くなる。」
「そしてなによりこの深淵地獄の鬼達は皆翼がある。鬼達は足場なんか無くても飛んで来るからな。」
つまり鬼達は落ちる心配は無いが自分達は落ちないように戦わなくてはいけないということだ。
深淵地獄が最も脱出が困難という言葉を思い出した肉浩。急げば穴に落ち落ちないようゆっくり行けば鬼に遭遇するリスクが上がる。
「しかし落ちてしまえば全て終わり、確実に死ぬ。いやもう死んでるけど。しかしこの長さどれだけゆっくり慎重に行っても何処かで集中力が切れ落ちる。だからこんな作戦を立てた。世助、頼むぞ。」
藤彦がそう言うと世助は七人分のロープとナイフを作り出した。
「作戦はこうだ。この縄を自分の体に巻きつけ、反対側を足場に輪っかになるように巻きつけるんだ。こんな風にな。」
藤彦は実際にやってみる。
「これでよし、と。こうすれば仮に落ちても縄が落下を防いでくれる。鬼が襲ってこない内は足場に巻き付けた縄を動かしながら進むんだ。鬼の姿が見えたら某に教えてくれ。氷で足場を作る。その時はナイフで縄を切るんだ。縄で繋がれていると移動に制限がかかるからな。」
「以上が作戦だ。何か質問はあるかな?」
誰も何もゆわない。全員作戦を理解したようだった。
「無いみたいだな。では出発するぞ。」
脱出メンバーは細い足場を進み始めた。




