第23話 無限地獄長との戦い その3
鬼獄長は肉浩に向かって走り出す。間合いを詰めてパンチを繰り出した。
「速いが、躱せない程じゃない。」
肉浩は攻撃を躱し鬼獄長の顎に蹴りを入れた。
「そんな貧弱な攻撃、効かんオニな。」
鬼獄長と人間では身体能力に差がありすぎる。全力の蹴りも鬼獄長にとってはそよ風に等しかった。
「本当にそうかな?歯が一本折れてるぞ?」
その言葉を聞いた鬼獄長は自分の口の中の異物感に気が付いた。吐き出すと確かに自分の歯だった。
「バカなオニ、痛くも痒くもないただの蹴りでオニ……」
本当は怨力で歯を捻じ曲げてへし折っただけなのだが得意げになり鬼獄長を挑発する。
「どうした?あれだけデカい口叩いてその程度か?」
「な、舐めるなオニ!勝負はまだまだここからオニ!」
鬼獄長は肉浩に右ストレートをお見舞いする。
その攻撃を何故か避けようとしない肉浩。
「何をしているんだ肉浩!避けろォォォォォォッ!」
鬼獄長の右ストレートが肉浩の顔面に直撃する。
凄まじい威力で人間位ミンチに出来るほどの威力があった。
鬼獄長は勝利を確信した。
「勝負、あったオニな。」
鬼獄長は拳を引き抜こうとした。しかし
「ぬ、抜けないオニ!どうなってるオニ!?」
よく見ると肉浩が鬼獄長の右腕をがっしりと掴んでいた。
「貴様!な、何故まだ生きてるオニ!?いやもう死んでるオニけど。」
全力の右ストレート、勿論手加減などしていない。人間であれば当たりどころが悪ければ即死する程の威力の攻撃を顔面に喰らいまだ生きているのだ。いや死んでるけど。
「生憎オイラは不死身のヒロ。こんな攻撃でくたばる位なら不死身なんて異名はついてねぇよ。」
そのまま怨力を発動する。捻じ曲げて腕の骨をへし折る作戦だった。
「ぐわああああ貴様何をしたオニ!?」
鬼獄長は腕に圧を感じ腕を引き剥がそうとするもびくともしなかった。
(バカな、人間に力負けしているオニだと!?そんなはずはないオニ。)
鬼獄長は引き剥がそうと自由に動かせる左手で棍棒を握って振り下ろした。しかし
「な、なぜまだ倒れないオニ!?こいつ、本当に不死身オニか!?」
しかし鬼獄長はその認識が間違いだったことにすぐ気付いた。
(棍棒が無くなってるオニ!いつの間に無くなったオニ!?)
「棍棒はここだよ。」
鬼獄長は声のした方向を見るとマイコーが棍棒を持って立っていた。
藤彦はその様子を誇らしそうに見ていた。
「肉浩もそうだが、マイコーもやるじゃねぇか。だからゆっただろ?お前達は必ず役に立つってな。」
脱出作戦開始する前、藤彦が二人に怨力の訓練をつけていた頃を思いだす。
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『藤彦さん。ボクの怨力で役に立てるとは思えない。これならまだヒロの怨力の方が役に立つ位だ。』
マイコーの怨力は触れたものを自分の手のひらに移動させる力だった。しかし触れたのならそのまま掴んで手に取ればいいだけだ。正直使い所は限定的で脱出作戦において役に立つとは思えなかった。
そんなマイコーの相談を受けた藤彦は
『肉浩と同じ事ゆうんだな。いいか?お前達はもっと自分に自信を持て、この脱出作戦にはお前達の力が必要になる時が必ずやってくる。その時は頼りにしてるからな。』
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鬼獄長との戦いの中、マイコーはこっそり棍棒に触れていたお陰で肉浩のピンチを助ける事ができた。
「くそぉ、ならばこれならどうだオニ!!」
鬼獄長は左ストレートを肉浩に向けて放った。
「そうはさせるかッ!!」
藤彦が氷の柱を作り出し鬼獄長に向けて放った。見事に鬼獄長の左腕にヒットしパンチの軌道がずれる。
すると バキッ と鈍い音が響いた。
「ぐわあああああああああああああ」
鬼獄長の悲鳴が地獄に響き渡った。
肉浩が鬼獄長の右腕を怨力で捻じ曲げへし折った。
鬼獄長の右腕は曲がってはいけない方向に曲がっていた。
「さすが鬼獄長だ。へし折るのにこんなに時間が掛っちまった。」
そういった肉浩の顔は酷いことになっていた。
顔面の骨は粉々に砕け皮膚を突き破っていた。
元々整っていた綺麗なハンサム顔が親でも分からないような顔になっていた。
しかし鬼獄長のパンチを受けこの程度で済んだのは奇跡としかゆいようがなかった。
肉浩は戦闘不能となり肉浩以外の6人が鬼獄長の前に立ちはだかる。
6人とも満身創痍だが、肉浩よりかはマシであった。
腕を折られた鬼獄長は骨折した右腕を抑えて悶絶していた。
「くそぅ、やってくれたオニな!」
「もう諦めろ。オイラ達は止められない。」
肉浩は鬼獄長に降参するよう促した。しかし
「ふざけるな!!オイラは鬼獄長だオニ。貴様ら地獄へ落とされた囚人達に拷問し、自分の罪と向き合わせるのがオイラの仕事オニ。貴様らの様な極悪人に好き勝手やられちゃ鬼獄長としてのメンツが立たんオニ!この命果てようとも!この地獄から出すわけにはいかないんだオニ!!」
鬼獄長の覚悟は本物だった。瞳を見ただけで分かるその信念。止めるには力でねじ伏せるしかない。脱出メンバーはそう悟った。
「やるしかないのか……」
最後の戦いが幕を開けた。




