第15話 無限地獄脱出の旅
ついに脱出作戦が始まった。鬼達が寝静まっている今できるだけ進まなくてはならない。全力疾走で地獄を駆け抜ける。
生前ならこんな速度で走ればすぐにバテていただろうが今はどれだけ走ろうと全く疲れない。
全く終わりが見えない中時間も忘れて走り続けているとついに鬼達の起床の時間がやってきた。
ジリリリリリリリリリ
けたたましい音が地獄に鳴り響いた。
「くそ、もうそんな時間になったか。」
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「さぁーて、今日も拷問やって行くオニよ。ってあれ?囚人の数が少ないような……寝坊オニか?おい下鬼!今すぐ監獄部屋にいる囚人を連れてくるオニ!」
「わっ、分かりましたオニ!!」
下鬼は監獄部屋に行く。
「おい、拷問の時間はとっくに始まってるオニ。いつまで寝てるオニか?」
下鬼は布団を引っ剥がす。
「こっ、これは人形!た、大変だオニ!」
下鬼が血相を変えて広場へ戻る。
「ご、獄長!大変ですオニ!囚人七名がどこにもいませんオニ!おそらく脱獄しましたオニ!!」
「な、なんだってオニ!!」
「獄長!どうしましょうオニ!」
「探せ!探すんだオニ!確かに昨日までは全員いたオニ!奴らはそう遠くまでは行ってないはずだオニ!この無限地獄から絶対に出してはならんオニ!他の下鬼達にも連絡し総力を上げて探すんだオニ!」
「わ、分りましたオニ!!」
下鬼達が連絡を取りに向かう。
「くそ、脱獄を許せばオイラが閻魔様に怒られてしまうオニ。何としても連れ戻さなくてはオニ。」
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「うぉあっ」
足を取られて肉浩が転ぶ。地獄の大地はデコボコしていて走りにくい。
「ヒロ大丈夫?」
マイコーが手を差し伸べる。マイコーの手を取り立ち上がる。
「すまねぇ、こんなところで躓いてる暇はないのに。」
「すまないが急いでくれ。もう某達の脱獄は知られてる頃だ。いつ追手がやってきてもおかしくない。」
この脱出作戦においてスピードが命。できるだけ早くこの地獄を抜けて追手との戦闘を最小限に抑える。
「もう大丈夫だ。みんなすまねぇ。」
肉浩が立ち上がり走り出す。しかしデコボコした道が全力疾走の妨げになる。
「クソっ、やっぱうまく走れねぇ。おまけに周りには障害物も無いから見つかりやすいぞ。」
改めて周りを見渡すと延々と続く何もないデコボコ道。至る所で炎が上がっている。どれだけ走っても景色に変化が見られない。
「藤彦さん、この地獄はあとどれくらいで抜けられるんだ?」
「まだまだ終わりは遠いぞ。何も考えず走れ。」
するとここまで無言だった森田が突然喋った。
「藤彦さん、追手が来た。6時の方向、大きさ的に下鬼二人、距離3.4km」
森田の言葉を聞いた藤彦が皆に司令を出す。
「よし、このまま走れ。もう少し引き付けるぞ。射程距離に入ったら森田と海澤で撃退してくれ。」
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「いたぞー!逃げ出した囚人七名全員いるオニ!!」
「俺達で捕まえるオニ!!」
囚人達も全力で走っているが鬼の足の速さには遠く及ばない。どんどん距離が詰められていく。
「お前たち!無駄な抵抗は止めて戻るオニ!今なら獄長も許してくれるオニよ!」
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「うわぁ鬼達がすぐそこまで来てるぞ!」
どれだけ走っても引きはがすどころかどんどん距離を詰められ焦る肉浩。
「今だ!やれ!」
藤彦が司令を出す。
「くらえ!」
「ウオオオオオオオオオオォォォォォォ!!」
海澤は巨大な炎の柱を鬼にぶつけ、森田は大声によって発生した音波で攻撃した。
「「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ」」
まともに食らった鬼は倒れて動かなくなった。