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第144話 3人目の脱落者

『おおーっと!何という事でしょうかオニ!ドームの中で凄まじい大爆発が起きてしまったオニ!これは獄長の安否が気になりますオニ!」



ドームの中で巨大な爆発が起こりドームが爆発の衝撃により氷の破片と化し四方八方に飛び散った。



「なッ、何なんだ!?突然爆発したぞ!?」

肉浩はこの爆発が何なのか理解できなかった。そんな疑問も一瞬で消え去りすぐに海澤の安否が気になった。

この爆発、普通に考えれば人間が耐えられるような威力じゃない。肉浩は嫌な予感が頭をよぎった。



煙が晴れるとそこには黒焦げになって倒れてる鬼獄長と海澤の姿があった。





____________________





時は遡ること少し前、鬼獄長に頭を鷲掴みにされ絶体絶命の海澤。

しかし海澤は全く動揺しておらず不敵な笑みを浮かべた。



先程藤彦に自分の考えた作戦を話していた。

海澤が合図を送ると藤彦は氷のドームを作り出し海澤と鬼獄長を覆って閉じ込めた。



しかし当然鬼獄長のパワーを持ってすればこの程度の氷のドームの破壊は簡単なことであり寧ろ増援を呼べなくなったこの状況は海澤にとって不利な状況なのだ。



鬼獄長は海澤の頭を掴んでいる腕に力を込める。ここで海澤は鬼獄長を倒すための作戦を決行した。



ブクブクブクブクブク



海澤は血ノ池の水を使って怨力で血ノ池の温度を上げ水蒸気爆発を起こしたのだった。



爆発が起き巻き込まれるまでの時間は一瞬。その一瞬の間に海澤は過去の記憶が一気に蘇る。所謂走馬灯とゆう奴である。





____________________





海澤は物心つく前に父を病気で無くしていた。

海澤の母は息子に不自由な思いをさせまいと身を粉にして働いていた。

そんな母を幼い頃からずっと見ていた海澤は母に少しでも苦労をかけまいと子供ながらにとても大人しかった。



しかしその大人しさが裏目に出たのか小学生の頃は同級生によく虐められていた。

海澤はここでやり返せば母に迷惑がかかる。ただでさえ忙しい母にこれ以上迷惑をかけたくないと思いやり返すことも担任や母に虐めを相談することもせずにただ虐めに耐えていた。



中学に上がる頃には虐めは無くなり穏やかな学生生活を送ることができた。



その後高校、大学と特に虐めに合うこともなく平穏な学生生活だった。

しかし大学を卒業後、その平穏な生活に終止符が打たれた。



新卒で入った会社がブラックだった。余りに多すぎる仕事量に家に帰れずに会社に泊まり込む日も少なくなかった。酷い時は一睡も出来ない日もあった。



しかしそんな環境でも海澤は弱音も吐かずに仕事をこなした。



海澤が入社して数年たったある日、一人の女性が中途で入社した。

海澤はこんなブラック会社に入社するとは運のない人だと憐れに思った。



彼女は生後半年の息子がいた。旦那とも離婚しているシングルマザーだった。

その上子供は生まれつき体が弱くよく体調を崩していた。しかし海澤の会社でそんなことで早退などさせてもらえなかった。



そんな彼女を海澤は自分の母と重ねた。どれだけ気丈に振る舞っていても子育てと仕事の両立はしんどいものである。母子家庭で育った海澤は彼女を放っておけなかった。



『彼女の仕事は私が引き受けます。』



海澤は彼女の仕事を進んで手伝った。海澤は優秀で自分に課せられた仕事をテキパキこなして終わらせ手伝った。



彼女も最初の内は感謝していたがいつの間にかそれが当たり前になってゆき手伝っても感謝されることはなくなり『コレやっといて〜』と雑に押し付けて来るようになった。



その上彼女の仕事を手伝うのは彼女に気があるからだと、あらぬ噂が会社の中で流れてしまい海澤は心身共に限界だった。

その上彼女本人がその噂を本気にして気持ち悪い、セクハラだと面と向かって言われて海澤の心の中で何かがプツンと切れた。



数日後、海澤は自宅で首を吊って亡くなっている状態で発見された。



そして海澤はセカンドチャンスで生き返ることを拒否し無限地獄に落とされたのである。



海澤は脱出作戦が始まる前に藤彦にある話をしていた。



『藤彦さん。オレは生き返りたくない。現世の扉には貴方が飛び込んでくれ。』



『勿論、最後まで残ったのがオレだけならその時はオレが飛び込むさ。だけどオレはもう生きる事に疲れたよ。何というか、生きるのって大変だったからなぁ。』





____________________





(オレはどうやらここまでだ。皆、後は頼んだぜ。)



爆発に飲まれた海澤は薄れゆく意識の中、皆の脱出作戦の成功を祈り散っていったのである。





____________________



  海澤 真紘


 血ノ池地獄にて


   脱 落



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