第110話 分かれ道
広場での戦闘を終えた脱出メンバーは道なりに地獄を進んでいた。
起伏が激しく、道がデコボコしており自転車では走りにくい道だった。
最初の内は自転車で進んでいたが途中からデコボコ道へと変わり自転車だと転んで時間をロスしてしまうので歩いたほうが早いという結論に至り歩いて進んでいた。
長い時間歩いていると分かれ道に辿り着いた。
「おっ、分かれ道だ。皆どうする?」
肉浩がどちらに進むか皆に問いかける。
「どっち、とゆわれてもなぁ……」
蟲喰地獄の地図など持っていない脱出メンバーはどちらに進めばいいのか分からない。
「どっちに進めば出口に辿り着けるんだ……?」
人は本来、分かれ道があるとどちらに進めばいいのか悩むものである。
この手の場合、片方の道が外れでもう片方が当たりだ。当たりの道を運良く引くことが出来たら目的地に辿り着けるが、ハズレの道を引けば途中で引き返すことになる。
場合によっては両方出口に繋がっていたり、両方がハズレの道で正解のルートは別にある。ということもあるが今はとりあえず目の前の分かれ道のどちらに行くか決める。
「で?皆迷ってるならオイラが決めちゃいますよ。」
肉浩はマイコーから日本刀の鞘を受け取ると地面に立てた。
鞘から手を離しどっちに倒れるか全員が見守る。
どちらに進んでよいか分からない以上、運を天に任せるこのやり方は非常に合理的なのだが、全ては鞘が倒れた方向によって脱出メンバーのゆく先が決まる。
鞘くんの責任は重大である。
鞘くんにもしも感情があればこんな重大な決断をボクに任せないでほしいな。と思っている事だろう。
カタン
「………真っ直ぐ倒れたな………」
鞘は右でも左でもなく真上の方に倒れた。
「これは、やり直しですね………」
肉浩がやり直そうとして鞘を拾おうとするがマイコーがストップをかけた。
「待って、左だ。左に倒れている。」
「ほら、真上を指してるように見えるけどよく見たら僅かに左に傾いている。」
「………そうか?全く分からんが……」
マイコー以外は全く分からなかったが何時までも留まっている訳には行かないのでマイコーの言葉を信じ脱出メンバーは左の道に向かった。
暫く進むと一行は開けた場所に到着した。
「おっ、またこの前みたいな広場か?」
脱出メンバーが辿り着いた場所は沢山の巨大な岩が立ち並ぶ場所だった。
「こうゆう開けた所は敵に見つかりやすいからな。早いこと抜けちまおうぜ。」
「………いや、どうやらその必要は無くなったみたいだ。」
「………どうゆうことだ?………まさかッ!」
「そう、そのまさかだ。沢山の岩で姿は見えないが、囲まれている。200を超える下鬼だ。」
『その通りオニ!』
何処からともなく声が聞こえてくる。
「誰だ!」
『フッフッフまさか気付かれるとはなオニ。脱獄囚の一人に敵の位置が分かる怨力使いがいるという話は聞いていたオニが、本当に見つけ出すとは褒めてやるオニ。』
『貴様ら脱獄囚が気づかない内に奇襲で仕留める作戦だったオニが、その作戦は失敗に終わってしまったオニ。しかし問題ないオニ。奇襲が失敗に終わってしまったなら次の作戦でいくだけだオニ。』
『今だオニヤロー共!一斉に掛かって脱獄囚を捕まえろオニ!』
『『『オオオオオオオオーーーッ!!!』』』
下鬼達の士気が上がった。
「皆固まるんだ!来るぞ!」
下鬼達が集団で脱出メンバーを襲いにやってきた。