第11話 怨力
「この無限地獄は本来存在しないはずの地獄。閻魔様が勝手に地獄を増設し追加した地獄こそがこの無限地獄ってことだよ。」
またしても衝撃の事実を聞いて肉浩はフリーズする。完全に固まった肉浩をよそに藤彦は話を続ける。
「とにかく、脱獄して上から調査が入ればこの地獄の存在も上に知れ渡り閻魔様も処分は免れない。そうすればここにいる全員審判をやり直される。そうすれば天国に行けるもの、地獄でももっと軽い地獄に行けるものと全員マシな所に行くことができるってことだよ。」
ここまで聞いてさっきまで固まっていた肉浩が質問をする。
「やけに詳しいですよね。何でそんな地獄の細かいルール知ってるんですか?」
「前にも話したけど脱獄しようとしたとき書庫に辿り着いて、地獄のルールが書かれた本を読んだんだ。時間も忘れて読み耽った結果、鬼達に見つかって連れ戻されたけど結果的にあそこで読んでいて良かったよ。あれを読んで連れ戻されてから脱出の具体的な作戦を立てることができたのだからな。」
「とはいえこの作戦も一筋縄ではいかない。一つ一つの地獄がとんでもなく広い上に鬼達が連れ戻そうとしてくる。脱出するのは容易じゃないぞ。」
「鬼達はオイラ達人間よりも遥かに強い。その鬼達を束ねるのが各地獄に一人ずつ配置されている鬼獄長だ。正面からやりあって勝てる相手じゃない。」
「勝てないって、じゃあどうやって地獄を脱出するんですか?勝算はちゃんとあるってゆったからオイラ達はこの話に乗ったんですよ。」
「勿論、勝算はある。それこそがこの脱出作戦の鍵になる『怨力』と呼ばれる特別な力だよ。」
また初めて聞く言葉に戸惑う肉浩。
「怨力?何ですか怨力って?」
「怨力は霊体である死者が使える特別な力。実際に見てもらったほうが分かりやすいかな。」
藤彦は手のひらを地面につけた。すると
「おわっ、冷たっ!」
藤彦が触った床が凍りついた。
「これが、怨力だよ。オイラの怨力は温度を冷やして凍りつかせる力。人によって怨力は全然違う力になるんだ。例えば……」
藤彦は少し考え
「えーと……そうだ!おーい砕、お前さんの怨力二人に見せてやってくれ。」
藤彦が囚人の名前を呼ぶと他の囚人をかき分け二人の前に現れた。
「藤彦さんからご指名とは嬉しいのう。ワシは砕。二人共仲良うしてなぁ。」
「砕、早速お前さんの怨力見せてやってくれ。」
砕は藤彦の方を見て嬉しそうに頷いた。
「分かっとるさかいに。二人共、よう見ときや。」
右手が強い光に包まれた。
その光を見た肉浩は
「砕さんの怨力って、ただ光るだけ?」