第10話 脱出作戦
「説明すると言ったがやることはこの地獄をなんとか抜け現世の扉に飛び込む。やることはそれだけだ。」
聞いたことのない言葉が飛び出し肉浩は混乱するがすかさず質問する。
「ちょっと待って、現世の扉って何なんですか?」
「おっとすまない。君達にはまだ説明してなかったな。君達は審判を受けたとき閻魔様の後ろに大きな扉を見なかったかい?」
肉浩は閻魔に裁かれた時の事を思い出す。
「…………そういえばあった、確かにあった。あれが現世の扉なんですか?」
「そうだ。セカンドチャンスで生き返ることを選んだ者や輪廻転生で現世へ行く魂はあの扉から行くことになるんだ。あそこへ飛び込めばこの地獄からオサラバ出来るって訳だよ。」
「………まさか全員で目指すつもりですか?」
「いや、全員は無理だ。戦力的な意味では数は多い方がいいがあまりに多いとそれだけ鬼達に見つかりやすくなるし、何より機動力が落ちてしまう。某は少数精鋭でなるべく早く真実の扉を目指す作戦で行くべきと考えているんだ。」
「それじゃあ連れていけない人は全員見殺しということですか?」
「いや、一人で良いんだ。真実の扉を通るのは一人で良いんだ。」
藤彦が続けて話す。
「すまない、まだ説明してなかったな。囚人が脱獄して現世に戻れば当然地獄を管理する閻魔様の責任が問われる。上が調査に入るんだ。そうすればこの無限地獄の存在が上に知られ、地獄のルールを破った閻魔様は処分を受け某達囚人は審判をやり直される。脱出は最悪一人でも問題ないんだ。」
「そ、そうだったのか、まぁ確かに全員で脱出するよりかは現実的だよな。でも本当に脱出すれば審判はやり直されるのか?もみ消されたりする可能性は?」
「確かに、その可能性はある。実際審判の内容については上が閻魔様に一任している。上手く隠蔽する可能性の方がずっと高い。」
「じゃあ、もし脱出できたとしても揉み消されて終わったらなんの意味もないのでは?」
ごもっともな疑問をぶつける肉浩に対し、藤彦は落ち着いて疑問に答えた。
「それについては大丈夫だ。審判に関しては揉み消し出来ても上が調査するのは審判だけじゃない。この地獄の管理体制全てだ。揉み消しが出来なくて上に調査に入られるとマズイ事実があるんだ。」
「それは、この無限地獄のことだよ。」