彼方&ケモっ子 遥 彼方様(@Togassi1)
絵師の遥 彼方様(Twitter@Togassi1)の企画参加作品です。
イラストとキャラ設定を見て、そこからショートストーリーを考えようという企画になります。
▼企画詳細
https://twitter.com/Togassi1/status/1426781366830604293
真夜中の帝都高速道。
新月の暗闇を二人乗りのバイクが切り裂いていく。
最近は電力不足が深刻であり、高速道路の照明さえしばしばこうして停電する。
――ただし、今夜照明が消えている原因は停電ではなかったが。
「このままじゃらちあかない! ボクが足止めする!」
「ちょっ! 待ちなさい、ケモ!」
バイクのハンドルを握る少女の静止を無視し、後部座席の少女がバイクから飛び降りる。
時速120キロを超えていたにもかかわらず、ケモと呼ばれた少女は音も立てずアスファルトに着地した。
遠くから徐々に近づく金属音に反応し、少女の耳がピクリと動く。
だが、少女の耳は人間のそれではなかった。
茶色の髪をかき分けて、猫を思わせる2対の耳が立っていた。
少女の丸く拡がった瞳孔に、金属音の正体がついに映し出された。
――人型の頭部には眼球も耳もなくマネキンのようで
――丸く巨大な胴体はひび割れと赤錆だらけで
――そこから無数に伸びる多関節の金属肢は昆虫を連想させ
まるで球形の金属塊に、幼児がでたらめにガラクタを差し込んだような異形がそこにはいた。
異形は獣耳の少女の目の前まで迫ると無造作に前腕を振り下ろす。
先端にはあちこちが欠けた鋸歯が備えられていた。
その凶悪な一振りは、目標を失って虚しくアスファルトに突き刺さった。
「そんなノロノロの攻撃当たるもんかっ」
いつの間にか異形の上空へ飛び上がっていた少女は、そのままマネキン頭に向かって飛びかかる。
少女が鉤爪の如く五指を開くと、指先から紫色の光が伸びた。
およそ200年前に発見され、70年前に帝都に壊滅的な被害をもたらした新元素――魔素によって顕現された、魔力の爪である。
少女が両手を交差するように振るうと、マネキン頭が一瞬で無数の鉄くずに分解される。
原型を留めないそれを蹴り飛ばし、一回転して着地した。
「自律型魔導機巧っていってもこんなもんなんだ。逃げて損したー」
動かなくなった異形に背を向け、少女が歩きはじめようとする。
が、すぐに足を止めた。
バイクの少女がこちらに拳銃を向け、鬼気迫る形相をしていたからだ。
「ケモ、どうしてあんたは私の言うことが聞けないの?」
「そっ、そんな怒ることないじゃん!? 物騒なもの引っ込めてよ!」
思わず後ずさりする獣耳の少女。
しかし、バイクの少女に「動くな!」と一喝されて凍りつく。
「今日という今日はもう許さないからね」
「カナタ、じょ、冗談だよね……?」
「本気だよ」
バイクの少女が拳銃の引き金を引く。
銃口が火を吹き、拳銃のものとは思えない凄まじい重低音が轟く。
思わず目をつぶったケモの背後で、金属をぶちまけた音が聞こえた。
目を開いて振り返ると、無数の金属腕を振り上げた異形が全身から火花を散らしながらぎくしゃくと全身を震わせている。
その胴には黒い穴が穿たれ、周囲には千切れ飛んだ金属腕や、ネジや鉄板の欠片、用途のわからない部品が散乱している。
「あんたの爪じゃこういう大型の核まで届かないの。弾薬だってタダじゃないんだから。もう二度と勝手はしないでよね」
「もう! ドッキリなんてひどくない!?」
「言うことを聞かないケモがいけないんですー。ついでに弾代が稼げるまではおやつ抜きね」
「カナタの鬼ぃー! 悪魔ー! 人でなしー!!」
「はいはい、どうせ私の3分の1は機械ですからねー」
やいやいと言い争いをしながら、二人の少女は再びバイクに跨り、帝都の闇に消えていった。




