高橋さんオークション【開始】
私の名前は高橋咲。
公立高校３年で、進学を諦めた負け組の女子だ。
我が校は公立だがこの地域ではいい方の高校。
負け組といったのは私のことで高校のことではない。
私の教室に魔女がやって来た。
いや、あれは魔女なのだろうか？
金色チリ毛で短髪。
140センチくらいの身長で私達より幼い顔立ちで、見た目年齢は中１くらい？
くたびれて伸びたタンクトップでノーブラ。ホットパンツ、ソックスはなく素足。胸はノーブラだがパンツはちゃんと履いて居て安心した。ホットパンツなのであぐらをかいているのでは股間の隙間から具が見えてしまう。
そんな変な少女が突然わが３−２の黒板の前にぽんっと現れた。そう、何も無いところから突然現れた。しかも、空中にあぐらをかいて浮いている。
人が浮いて居る！
目の錯覚？
夢？
その少女は担任の八代先生(男性)の頭を邪魔だとばかりにぐいっと押し倒すと教壇に押し付けた。
八代先生はなんの抵抗もなく、教壇に顔だけうつぶす。まるで人形のよう。
八代先生は人形でもなければ死体でもない。ちゃんとさっきまで教壇で喋っていた。
不思議な少女は八代先生の上あたりまで前進した。空中をだ。
そして私達を見下ろしながらこう言った。
「３−２の男子諸君。これからオークションを開催するよ」
なんだ？
この不思議な少女は。
オークション？
男子諸君と言ったのは何故？
私の体は硬直してぴくりとも動かない。
まるで石膏像のよう、眼球すら動かせない。そして視界の中の男子はキョロキョロと周りを見回すが、皆無言。
そして女子は皆ピクリとも動かない。私と一緒だ。
「男子諸君、混乱しているね。アタシは時の魔女。君達の敵であり味方だ。今この教室の時間と女子の時間を止めている。あ、この先生もね。男子だけが私と共にあり、この時間の狭間に居ると思って欲しいの。それで、これからオークションを開催するよ。男子には参加する権利がある。支払いは即金なら落札金額そのまま。当日払いでもその金額。一週間以内の支払いなら二割増しで。分割なら落札金額の三割増。ただし、一月以内だよ。そして支払能力を越えたと私が判断したら退場してもらう。まあ、この中にはとんでもない金持ちとかは居ないようだね」
そこまで言い放って時の魔女と名乗る少女は黙った。
だがまた喋り出す
「だからさっき言っただろう。時の魔女だって」
これは明らかに誰かの質問に対する返答。
「信じろよ。こんな事ができるのがお前らと同じな訳ないだろう」
きっと魔女かどうかの質問の返答だ。
たしかにその少女は宙に浮いているし、登場の仕方がありえない。
魔女かどうかはわからないけれど、なにかの超能力者。
「お前ロリコンか？」
そういってぐいっととある席に向かってガンを飛ばす少女。
その視線の先は私よりも後ろの席だから見えない。誰だろう？
「まあ、カリカリするな。オクに付き合えよ」
そう言えば喋らずに意思の疎通をしている相手は誰？
それからも謎の会話が続く。
「大丈夫。全員の声は聞こえてるから。あ、全男子だった」
男子だけ？
私は？
『君の声も聞こえてるよ』
驚いた！
少女の声と同じ声が私の頭の中に響く。そう、頭の中だ。
聞こえ方が明らかに違う。超能力者？
『だから時の魔女だってば』
魔女・・・・
「はあ、質問は一旦やめ。本題を進めよう。男子諸君、今日のオークション商品はこれ！女子１１番高橋咲ちゃん。このクラス２番人気の咲ちゃんを自由にする権利！していいことはは落札金額で変わるけど咲ちゃんを自由にできるのは勝利者だけ！欲しい人居る？」
魔女と名乗る少女が私のことを出品物だと宣言すると、私の体が座って居る椅子ごとふわりと浮いた！怖い！
机が膝にあたり、ごごっと音を立ててずれ、更に高く浮いて頭が天井当たる寸前まで浮いた。そのまま黒板の方へふわっと移動する。そこでくるっと方向転換すると、クラスの皆を見渡せる位置に止まった。いや、見られて居るのは私だ。
「おお、全員・・・でもないか。1人不参加か」
誰？
頭の中に直接声がする。
『君にだけ教えてあげよう。西脇だよ。彼は不参加だよ』
私はがっかりした。
彼に好かれるだなんてうぬぼれては居ないけれどショックだ。
『仕方ない。西脇は以前、他の人に落札されたからね。彼は落札した主人の許可無く誰かに入札する権利は無い』
今なんて？
西脇さんが落札された？
なに？どういうこと？
『そうだよ。君は以前、出品された西脇を資金不足で落とせなかった。その日の勝者は随分悪どい手を使って強引に勝ったけど。もっともその時の君の記憶は消させて貰った。他の皆の記憶もだけど』
そして少女は耳に聞こえる声で喋り始める。
「さて、商品紹介だ。皆も知ってる高橋咲ちゃん。地味目な彼女だが、地味なのに人気の訳は当然これ！９２センチのおっぱいだ！ ブラにはGと書いてあるけど本当はHだよね！そこの木崎りこちゃんも立派だけど、この子の前では子供同然！真の挟む、埋めるということは咲ちゃんでしかできない！だからって太ってる訳じゃないのは流石だよね！」
な！
一体何を言うの！
確かに私の胸はは大きい、目立つ。
でも、男に興味を持たれるのが嫌で誰にもサイズは言わないし、大きく見えないように服も工夫して居たのに！
どうしてワザワザいうの？
しかも教室一番前で晒されながらって！
「お、みんな興味深々だね。しかもこのダサメガネを取ればこの通り。いい顔してるよ、そこらへんのモデルよりも売れること間違いなし！」
少女は石膏のように動けない私から安メガネを取りはらった。
やめて！
それも私の大事なカモフラージュアイテム！
わざと１００均のメガネしてるのに！
「お？ 10,000円。 まだ早いって。説明は最後まで聞こう。咲ちゃんは経験者でしかもプロだ」
！！
言わないで！
まさか言うの？？
それだけは言わないで！！
「咲ちゃんの身体はリピーターが相次ぐ逸品！ この体で働いてない父親を支えて居たんだからね！まあ正しくは父親が客を家に連れて来てたんだけど」
それだけは知られたくなかったのに・・・・・・
必死に守って来た私の秘密。
目の前の男子の顔が変わる。
きっと私を汚物だと思ってる。
１０歳の時に気の弱い母は逃げた。
それからは鬼畜な父親の言いなり。
働かない父の代わりに私は働かされた。
未成年が働けるところなんて無い。
やらされたのは非合法な仕事。
そして誰にも知られたく無い仕事。
初仕事は１４歳の時だった。
教室の男子が私を汚物を見るような目で見る。
でもね、私を買いに来るのも男なんだよ。
売り物の女は汚い？
買う男は汚く無いの？
あんた達の父親の中に見たことある奴も居るかもね。
こっちが嬉しそうにしてないと怒る男。
こっちが痛そうにしてないと喜ばなくて更に痛くして来る男。
こっちが聞かれたく無い事を根掘り葉掘り聞き出そうとする男。
ヤる前に説教、ヤって説教、偉そうに説教したのにおかわり要求する男。
小娘っぽくしてないと詐欺だ！と文句を言う男。
サービスの仕方を偉そうに教育(？)する男。
でもね、誰も救ってなんかくれない。
「はい、１,０００円。２,０００円。５,０００円」
『あちゃあ、やっす！ 咲ちゃんには入札者情報を教えてあげよう。１,０００円と言ったのは田代で脱童目的だね。でも残念。１,０００円じゃそこまでさせられないね。２,０００円は三鷹で５,０００円は津山』
げ、津山。
ヘドが出るような男経験には慣れている私だけれど津山クンとはやりたく無い。
勉強ダメ、運動ダメ、弱くてオタクで空気の読み方がわからなくて見てるだけでイライラする津山・・・クン。嫌いだ。
はは。でも、そもそもこちらからお願いするような男なんて来る訳ないか。
こんな私だもんね。
千円単位で上がる値段とその入札者情報と何をされるか、何まで許可されるかを私に教えて来る魔女。
行為OKが出たのはたったの１２,０００円だった。安っす。案外私の父親は私を高値で売り抜いてくれて居たらしい。褒められた事じゃないけど。
そして、魔女の解説を聞いていると、誰1人として私を恋人にしようとしてくれる人が居ない。
した事ないからヤりたいだけ。
セフレ。
胸目当て。
酷いのには仲間でマワしたいてのも。（魔女曰く、その値段では無理だそうだ）
「２５,０００円。２６,０００円。う〜ん低いなあ」
しかも最高値がよりにもよってキモ津山クン。
津山クンはストレス解消のような脱童貞を企んでいると言う。・・・最低。
さっき私の秘密を暴露されたし最低な日だ。
『あ、咲ちゃん。オークション終わったら君も含めて全員の記憶を消すから安心して』
っは！そりゃどうも。
それならまだマシか。
やっぱり、本当の私を知ると男ってあんな目をしてくるのね。分かってたけど。
私だって好きで男取ってた訳じゃないのに。
「安すぎ。仕方ないなあ、入札者追加しよう」
その時、下の方でごそごそ動く音がした。
私は目線すら動かせないが、その位置に居るのは1人しか居ない筈。
八代先生？
「おっ、５０，０００円」
