表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

木崎さんオークション【その後】

 僕は津山利絃(りいと)

 なんの取り柄もないクラスの底辺男子高校生。今日まで彼女は居たことがないし、告白経験もないしされたこともない。



 始業前、教室に木崎さんが入って来た。

 憧れの木崎さん。

 誰とも会話しない木崎さん。前はあんなじゃなかったのに。

 いつからか木崎さんには変な噂が立つようになった。誰も行ってはいけないプール準備室に居たとか、化粧が変になったとか。『男の影響じゃない?』と言われてるけれど、ズバリを見た人はまだ居ない。

 前に木崎さんは何故か1週間休んだ。

 担任は病欠と言って居たがなんだったんだろう?


 木崎さんが僕の席を超えて前に出る。

 そして前から二番目の自身の席に着く。

 木崎さんが僕と話すことはまずない。



【31万円】



 木崎さんの背中を見るとその数字が頭に浮かぶ。

 なんだろう?

 たまにこういう事がある。

 いつも31万円という文字が頭に浮かぶんだ。

 なんの数字なのかは思い出せない。





 ー ー ー ー ー






 私は木崎りこ。

 私には好きな男子がいる。

 西脇伊織君。

 顔が綺麗で夏場にチラリと見える胸板にどきりとする。人気の西脇君だが彼女は居ない筈。

 今は西脇君が遠く見える。


 先月、私は地理の先生に襲われた。

 突然のことに訳も分からず必死に抵抗しようとしたのに、うまく身体は動かずあっけなく事は済まされた。

 それから何故か私は先生の言いなりだった。

 昔の私は性行為に保守的だった筈なのに、あの期間は何故かザルだった。

 好きでもない先生の言いなりで学校の中、駅の中、車の中、ホテル、山の中。

 何かおかしい。


 でもこの間、突然先生に反撃したいと思った。

 しばらくただの人形のような私だったのに、突然キレた。

 一度も反抗した事なかったのにスマホのカメラを起動して先生と私と部屋に転がる証拠を撮りまくった!

 そして慌てて服をかき集めて走って逃げた。

 あまりの恐怖と罪悪感と気持ち悪さに耐えられず1週間学校を休んだ。


 家族が心配しているから勇気を出して学校に行く。

 本当は行きたくない。先生に会いたくない。要求して来たらどうしよう。怖い。

 自分でも覚えている。私は抵抗してなかった。

 まるで当たり前のように体を開いた。脅されてもいないのに。

 でも今は画像データがある。そして先生を嫌いだ。

 いざとなったらこれを盾にする!



 廊下。

 10メートル先に先生。


 近づいてくる。

 どんどん近づいてくる。

 息が苦しい。




 すれ違った。





 先生は何も言わなかった。



【0円】

 何故か頭にその言葉が浮かんだ。





 ー ー ー ー ー





 私は八代光輝(こうき)

 高校で地理の教師をしている。


 あの日あの2−4の教室に居て記憶が残っているのは勝利者の私だけだ。

 突然の入札参加許可。

 木崎君の参加と共に私も戦場に参加することを許された。

 突然の事だったが、瞬時に私は理解した。


 時の魔女が現れたのだ。

 この戦場では唯一の社会人の私は有利すぎた。


 私が時の魔女を()()()()()のはこれで3回目。

 この不思議な現象を私なりに推理した。

 記憶は勝った者にしか残らない。女性側すら覚えてはいない。

 それが魔女の決めたルール。


 そして、いつとは言えないが()()()()

 落札による関係が終わっても縋ってはいけない。諦めが肝心だ。

 そして貯金も大事だ。

 木崎君は良かった。流石は十代、二年生イチの美少女。味も感触も反応も最高。

 ()()()()()()()良かったがこれで終わった。寂しくなるな。


 一度木崎君に聞いた事がある。

「津山君はどう思ってるんだい?」


 津山。

 彼はオークション最後まで目が血走って居た。

 確信した。彼が敵の入札者だと。

 他の男は死んだ目か、敗北者の目をしていたし。


「津山君だけは死んでも嫌」


 私の下で身体は荒くなっているのに人形のような表情をした彼女は迷いなく答えた。


「じゃあ私は?」


「早く終わってよ」

 つまらなそうに彼女は答えた。私の方は楽しいがな。

 私のことは嫌いみたいだが、津山程ではないらしい。


「ならば、感謝して欲しいものだな。津山から助けたんだから」

 そう言ったら彼女は静かになった。皮肉だが彼女を最悪な相手から救ったのは私だ。

 意味が分かっているのだろうか?




 廊下の向こうに木崎君が居る。彼女は顔がひきつっている。


 歩き、ゆっくりすれ違う。


 求めてはいけない。

 今回は写真も撮られている。

 もう終わりにしよう。




 貯金をしよう。





 ー ー ー ー ー ー





 私は木崎りこ。


 私の教室に魔女がやって来た。

 いや、あれは魔女なのだろうか?




 金色チリ毛で短髪。


 140センチくらいの身長で私達より幼い顔立ちで、見た目年齢は中1くらい?


 くたびれて伸びたタンクトップでノーブラ。ホットパンツ、ソックスはなく素足。




 そんな変な少女が突然わが2ー4の教室の黒板の前にぽんっと現れた。そう、何も無いところから突然現れた。しかも、空中にあぐらをかいて浮いている。




 目の錯覚?


 夢?




 その少女は数1の授業で教壇に居た七瀬先生(女性)の頭を邪魔だとばかりにぐいっと押し倒すと教壇に押し付けた。


 七瀬先生はなんの抵抗もなく、教壇に顔だけうつぶす。まるで人形のよう。


 七瀬先生は人形でもなければ死体でもない。ちゃんとさっきまで教壇で喋っていた。




 不思議な少女は七瀬先生の上あたりまで前進した。空中をだ。


 そして私達を見下ろしながらこう言った。




「2ー4の女子諸君。これからオークションを開催するよ」




 なんだ?


 この不思議な少女は。


 オークション?







 私は何故か確信した。

 この戦いは勝たねばならない。

 どんな手を使ってでも。


 いざとなったら・・・・


 私はスマホを握りしめた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ