木崎さんオークション 【加熱】
私は木崎りこ。
これは何?
身体が動かない、喋れない。
椅子に座ったまま宙に浮く私。
横にはまるで部屋でくつろいでいるかのようなラフな格好の宙に浮く少女。
そして、目の前で男子が無言で私を競っている。
そう、私は意識がある。
全て聞いて居た。
そして、不思議な少女が私の頭に語りかけてくる。
頭の中に響くややエコーが掛かった少女の声。
『やあ、りこちゃん。どうだい気分は』
最悪よ!
やめて!すぐやめて!
『駄目だね。君はもう売り物だ』
なんの権利があって!
私は売り物じゃない!
『ははは。人間は勝手に捕獲した動植物を売るじゃないか。それと同じだよ』
勝手に!
やめて!
放して!
『なに言ってんのよ。男どもはそれを分かった上で入札しに来たよ。男どもには君はただの商品だよ。折角だから解説しちゃおう』
少女がなにか言い始めた。
「5,000円!」
それは少女の声だが耳から聞こえた声。
一方、脳内にも同じ声がくる。
『お、5,000円と言ったのは柴田だね。因みに5,000円で落ちた場合、柴田とは明後日体育用具室で1回だけすることになるねえ』
そんな!
5,000円のせいでそんなところで!
嫌!
「8,000円!」
『8,000円は西脇だよ。嬉しい?』
西脇君は私の憧れの人!
綺麗な顔で、夏にシャツのボタンが外されて胸元が見えるとドキッとする。
彼なら私からお願いしたいくらいだ!
頑張れ西脇君!
「15,000円!」
『柴田が上乗せしたねえ。この金額だと、1ヶ月はやりたい放題だね。因みに男どもはりこちゃんをどう手に入れられるのか知らない。それでも入札してくるんだから凄いよね』
私の値段その程度?
何してるの!
西脇君頑張って!
「20,000円!」
『おや、松木だ。彼は君と鉄道撮影デートしたいらしい。君の写真も撮りたいようだ。この金額なら問題ないね』
電車興味無い・・・・
ついでに松木君にも興味ない。
「22,000円」
『黒井は君をアニメ浸けにするつもりだね。一緒にヒロインを崇拝させるつもりだとさ』
何それ?
私要らないじゃない!
そうして男子21人が全員入札してきた。
一つ一つの金額更新と入札者情報を全て説明してくる少女。
この内容は男子には聞こえてないらしい。私だけ。
彼女持ちなのに入札してきた堺君。まさかのぶちゃんとデキてたとは知らなかった。それでも私が欲しいの?のぶちゃん捨てるの?
あるいは私かのぶちゃんのどちらかが遊び?
嶋田くんに至っては別のクラスにセフレが三人居ると知らされた。少女の解説では女性からの満足度がピカイチだそうだ。彼に遊ばれた子は不幸ではなく幸せだと。でも私は遠慮したい。
幼馴染君も来た。ご免なさい、あなたの事は好きではないの。だから距離を取ってたの。
そして、オークションはどう考えても皆の手持ち小遣いの金額を越えた。
そして金額と共に私への要求可能内容も上がる。
SM、スカトロ、コスプレ、露出と変態な欲求もあれば、旅行とか、一緒にフルマラソンとかも居る。フルマラソンは勘弁してほしい。でも、西脇君とならフルマラソンどころかトライアスロンでも頑張れる!
そして私の値段はまだ上昇中。
「250,000円!」
『おや、西脇が抜かれたぞ。これは津山だね。津山は・・・・ほうほう、これはまた・・・とした。この金額なら許可だな』
津山君?
25万?
津山君はどこからそんなお金が?
駄目よ!
西脇君頑張って!
そして、西脇君は最後の二人になるまで頑張ってくれていた! ひょっとして西脇君は私の事を好き?単なる身体目的じゃなくて?
『折角だから君にもチャンスをあげよう。りこちゃんも入札していいよ。支払いは大変だぞ~』
ほんと!
なんとしても阻止する!
バイトもするし、なんだったら親に借りてでもなんとかする!
私が勝って西脇君と一緒になる! 津山君は嫌!死んでも嫌!
ー ー ー ー
25万!
よし、勝った!
誰だか知らないけれど競っていた相手が止まった!
ストップが掛かったのか、諦めたのか。
魔女は相手の名前を明かさないがチクチクと情報を小出しにしてくるし、入札者に一言コメントするのが聞こえる。
25万円。小遣いと蓄えと部屋の財産全てと1ヶ月以内で出来るバイト代とで出せる!
そして魔女は僕にまだストップを出さない!
支払い不能だと評価されたら魔女は入札停止をかけて来ると言ったが、まだ大丈夫!
そしてしばらく高値更新が来ない。きまったかな?
「260,000円!」
え?
誰だ!
とはいっても、僕からは相手は判らない。
時間を開けず高値入札!
270,000円だ!
「270,000円!」
よしっ!
頼むこれで!
「280,000円!」
くっ!
まだくるか!
何で・・・・
木崎さんは僕が守らなきゃいけないのに!