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爆縮と体温の機知(1)

夢のメセナ

意識の向こう側に

違う世界がある

トンネル 暗闇 白い幕

その先で

動く身体は

一世界の住人

話し声が聞こえてくる

瞬間 反転 暗転

真ん中に集まる

小さな明かり



さっきまでの声は

バスになって通り過ぎた

排ガスの臭い

煙は黒っぽい

もう少しで

お役御免になるのだろう

お爺さんバス

木のベンチ

真っ白な猫

隣に真っ黒な猫

邪魔はするなと

そっぽを向く

視線の先には

制服の女性



僕を見ながら

猫に駆け寄り

二匹の頭を撫でながら

「可愛いですね」

知らない顔の人に

話を振られた

優しい顔だ

でも口が動かない

何処かで嗅いだ人の香り

空気から

風が配っていく

瞬間 反転 暗転

真ん中に光が集まる

さっき見たから

身を委ねた



黄色い花が咲いていて

花びらが逆さまに

散っていく

空に向かうから

花を見ているのに

終わりは仰向けになった

二回 三回

繰り返していると

「綺麗ですね」

振り返ると

知らない顔の女性

感覚的には知っているのに

顔は分からなかった

記憶にはない作られた女性

気づいた瞬間 反転 暗転

知っている光景が

再び現れる



車の中で

ふと気づいて

隣に誰かが乗っていた

知らない顔なのに

知っている感覚の男性

後部座席には

何処かで見たような

顔の女性が二人

「コンビ二寄って」

一人が言うと

「喉かわいた」

もう一人が言っていた



左側は海沿いで

右側には民家が流れて行く

少し先に

コンビ二の看板が見えると

これは夢だと気づいた

だから

消えないように

決められている力に

任せていた

車はコンビ二に入る

四人で降りた

扉の音が大きく聞こえる

瞬間 反転 暗転

また

あの光景が広がってくる



自分の部屋で

女性と炬燵に入っていた

知っているのか

知らないのか

曖昧な人間と

一緒に居た

夢であると分かっていたから

少しだけ

悪戯にキスをした

相手は

特に怒りもせず笑っていて

二の腕あたりを

軽く叩かれた

二回目が当たった後

音が聞こえた

瞬間 暗転 暗転

今度は

現実の音がする



雀の鳴き声だった

目が覚めて

いつもより

感覚が良いと思った

僕は

頭が透明になるくらい

スッキリしていた

朝であることが

楽しかった

何の夢だったかも

思い出せた

夢の中の住人は

顔は思い出せたけれど

やっぱり知らない

いつものように

アラームが鳴った

いつもより

余裕がある形で止めた

冷たい水で顔を洗おう

なんとなく思って

布団の上に座った







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