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君を想う  作者: ツヴァイ
7/22

逃走

ライラ視点です。

暴言しか吐いてない。

 ――――ヒロインである私が、何でこんな目に


 そう思ったのは、何百回目だろうか。馬車に揺られながら、何処で間違ってしまったのかと考えた。でも、何度考えてもゲーム通りに会話を選択し、親密度を上げてきた。間違ってはない。


 攻略対象である第一王子は、優秀な王弟に王位を脅かされ、息子を省みない王と王子を蔑む貴族や王子を疎む婚約者に怒りと憎悪の感情を向けていった。そして、いつしか彼は横柄で残酷な性格へと形成されていった。



 王国第一騎士団団長の子息ケネスは、小さな頃から可愛らしいものが好きだった。しかし、それを兄弟達に見つかり、父親である団長に告げ口され、軟弱者と罵られた。兄弟達からは馬鹿にされ、可愛らしいものは処分された。騎士団に強制的に入団させられたケネスだったが、騎士団内で努力した。が、団長の事を良く思わない者達によって度々、訓練と言う虐めを受けるようになる。それは、父親に知られ、また軟弱者と罵られた。その言葉で心に張っていた糸が切れたケネスは壊れた。無口になり、暴力的になっていった。



 魔術師団団長の子息ジョナサンは、幼い頃から『神童』と言われていた。団長である父親より優れた魔術師になるだろうと期待されていたが、…そこまでだった。ジョナサンの力は、一向に伸びなかった。これには、父親も周りの者達も落胆した。期待していた分、落差が大きく、父親は無関心になり、親類縁者は、遠巻きになった。ジョナサンは、この時から無気力になり、何事にも興味を示さなくなった。



 現宰相の公爵家の子息ジルベルトは、幼い頃にトラウマを抱え、他人と距離を取っていた。生来の寂しがり屋である彼は人が集まる所を見るのが好きだった。しかし、それを気味悪がられたいると傷付き、引っ込み思案な性格になっていった。


 彼等をゲームの知識で落としたのに、王弟であるレナードが女になって現れるとは思ってもいなかった。

 ゲームの設定と変わっているとは思うが、ロイト達は攻略できた。つまり、ここはまだゲームの世界。ゲームの世界なら、まだ私がヒロインの筈。なのに、どうしてうまく行かないのか。

 主に会話で進行していくゲームだった。彼等と寝たのが、不味かったのか。いや、彼等は喜んでいた。そうだろう、こんな美少女が自分だけに愛を囁き、抱けるのだから。


 馬車が崖から落ちて、逃げる事ができた。誰が、最果てのなんの面白味もない修道院なんて入るものですか。

 暫く、山の中を彷徨う事になった。なんの予兆もなく雨が振りだした。山の天候は変わりやすいと知っていたけど、こんな傘も何も無い所で降らないでよ。雨を避ける為に大きな木の虚を見つけ、そこに避難する。


 ウトウトし始めたライラは思いを馳せた。レナードが男だったら、こんな苦労しなかったのに。あの美しい顔で愛され、抱かれ、彼にそっくりな顔の子供を生むのを楽しみにしていた。優しい彼の事だから、宝石やドレスなんかを強請れば沢山買ってくれただろう。

 なのにレナードは女だった。こんな裏切りは無い。その上、私の美しい髪を切った。私には、もう必要ないからと。私の美貌に嫉妬したのだろう。なんせ私は、美しく、気高く、貞淑で教養ある淑女なのだから。こんな完璧な私を貶めて冤罪を着せたあの女を許さない。


 散々彷徨っていた私のドレスは、スリットが入ったように足の付け根付近まで割け、薄汚れてしまった。それでも、輝かんばかりの私の美貌は損なわれる事は無い。


 ヨロヨロと歩いていると煙が見えた。近付いていくと、小さな村だった。


「あらあら、どうしたの?」


「悪いやつらに追われているんです」


「まあ、大変ね。ちょっと待っててね。村長に話をしてくるから」


 親切にも、その女はライラを自宅に連れて行って、体を綺麗にし、着る服を用意してくれた。女が出ていくと、早速用意してくれた服に着替える。


 草臥れた服だ。ライラは流行の最先端だったドレス を見る。しかし、もうこのドレスは着れない。渋々、服を着て女を待った。


 暫くすると、ニコニコしながら女が帰ってきた。


「村長が貴女に会いたいって言ってるの」


「え?」


 女に手を引かれて村長の家に連れてこられた。村長の家は、他の家に比べて十倍位に大きかった。その屋敷と言っても良い、家の中に入って行くと家令が待っていた。


「御主人様は、こちらで御座います」


 村長なのになんか貴族みたいな扱いだなと思いつつも家令に着いていく。


「おお、待っておったぞ。ふむ。確かに美しいな」


 案内された部屋の中にいた村長は、肥え太った男だった。五十代位だろうか、男が動く度に脂肪が揺れる。なんだコレ。


「女、名は?」


 無礼にも私に名前を聞いてきた。成る程、美しい私に興味があるのね。自分は、醜いから。でも、私は醜いブタに興味は無いわ。私は美しい男しか受け付けないの。


「ライラよ。普通、貴方の方から名乗るものじゃないの?」


「それもそうだな。デイブだ」


 そのまんまね。デブなんて。名は体を表すって言うものね。


「それで、ライラよ。お前は追われているのだろう。暫く、匿ってやろう」


 有難い。山の中を彷徨ってクタクタだ。少し休みたいところだったのよね。


「ありがとう」


「その代わり…」


 男が動くとそこには、キングサイズのベッドがあった。つまり、匿うという見返りに体を要求されているという事ね。


「お断りします」


 誰が、お前みたいな男に抱かれるか。クソが。美しい私からブタの体臭がするなんて、考えたくもない。


「そう言うな」


 私の体を舐め回すように見てきてキモい。ニヤニヤしてるし、うわぁ、キモい。キモい。キモい。ムリ。私は美しい男にしか、抱かれたくない!


 逃げようとしたが、あっさり捕まり、ベッドに縫い付けられた。


「何するのよ!!」


「若い体は久し振りだ。肌がピチピチだ。吸い付くようだ」


 手を頭の上で拘束され、私の首元に顔を埋めて、肌を舐め回される。耳には、不快な水音が響く。更にスカートの裾から手を入れられ、太股を触られ、鳥肌が立つ。気持ち悪い!


「やめて!変態!!」


「大丈夫。儂に任せておけ」


 結局、ブタに抱かれる羽目になった。独りよがりで、全然良くなかった。まだ、ロイト達の方がましだ。私が初めてではない事を罵り、落胆していたが、私の知った事ではない。

 ただ、定期的にデブに抱かれれば、屋敷内で暮らして良い事になった。なんで、こんな事に。私の体は、そんなに安くないのよ。


読んでいただき、ありがとうございます。

ゲームのキャラ設定と現実とではまた違う事に気付いていないライラ。そして、彼女は口汚いです。あと、貞淑と教養は行方不明。

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