断罪〈上〉
思いついて書き始めました。
今日、気付いたらブックマークに登録してくださった方々が、いらっしゃいました。こんな拙い文章を読んでいただき、あまつさえ登録してくださった方々が、いらっしゃるなんて!神様!仏様!いや、女神様!
「!」
絶叫に驚いて、振り返ったジルベルトは驚きで言葉を無くした。
「ぶふっ!!ぶははははは!!!」
一人一部始終を見ていたグレンだけが、耐えきれずに吹き出して、お腹を抱えて笑いだした。
どうしてかと言うと彼ら三人の頭髪が無残にも毟れていた。ロイトは激痛にのた打ち回り、ジョナサンは激痛を堪えて蹲り、ケネスは愕然としていた。そんな三人の後方にレナードが、三人の頭髪を握って無表情で彼らを見ていた。
「これはお仕置きだよ」
無表情のレナードは毟った髪をその場で投げ捨てると三人に吐き捨てるように言った。
「なん…」
「僕らが何をしたと言うんだ!!」
怒りで顔を真っ赤にさせて震えるケネスと唾を飛ばしながら叫ぶジョナサン。
「君達は、ジルベルトに何をした?」
また、その場から掻き消えるレナード。今度はゴキン、ベキンという音が聞こえる。
「「「うぎゃぁぁぁぁぁ 」」」
再び、絶叫が聞こえる。三人は、レナードによって足の骨を折られた為、その場に立っていられずに倒れ込んだ。
「痛ぇーよぉー」
屈強な肉体を持つケネスだったが、あまりの激痛に涙と脂汗が止まらない。
「俺の、俺の足がぁ!!!」
激痛にその場で叫ぶ事しか出来ないロイト。身を捩れば、その少しの刺激で折れた患部に激痛が走るからだ。
肉体の痛みに弱いジョナサンは早々に気絶している。白目を向いて、鼻水と涎は止めどない。
阿鼻叫喚。
恥も外聞も無く、彼等は涙と鼻水を垂れ流している。足を押さえようにも肩の関節さえも外されて身動きができない。
「あ~ぁ、君達は、一番怒らせてはいけない者を怒らせちゃったね。因果応報とだけ言っておくね」
グレンは薄ら笑いを浮かべながら、その場で胡座を掻いて観戦しだした。
「ジルベルトが優しいのを良い事に色々させていたね?例えば、ライラとのデートの為、演劇のチケットを取らせ、四人分の代金は当然のように踏み倒し、他の生徒の前で罵ったり、制服を無意味に脱がせ、その服を時には裂いたり、時には燃やし、投げ捨て、踏みつけた。後は、ただ見ていただけなのに睨んだと言い、暴行した。顔を殴る事はしなかったね。バレるからかな?主に腹を蹴っていたね。短剣で試し斬りだとか言って、斬りつけたり、刺したりもしていたね。火掻き棒で『お前の穢れた魂を浄化してやる』と意味不明な事を言いながら、熱した棒をジルベルトに当てていたね。それから…」
レナードは、指折り数えながら、一つ一つ彼等の行いを羅列していく。それに徐々に顔色を悪くするロイト達。
「もう良いだろ!」
脂汗が止まらないロイトは真っ青な顔でレナードを睨む。この事態を引き起こしたという自覚がないまま。
「そうだ!俺達はライラとジルベルトの為にやったんだ!!」
ケネスも顔だけレナードに向け、自分達に責は無いのだと宣う。その言葉にレナードははっきりとした侮蔑の色を強くする。
「…手前勝手な言い分だな」
その言葉に三人は、グレンを見た。そこには、冷淡な顔をしたグレンと青い顔に瞳を濁られたジルベルト、眦を吊り上げて鬼の形相をしたナルサスがいた。
「だからって骨を折る事ねぇだろ!!!!」
自分達の旗色が悪くなっている事に気付いたロイトだったが、こんな仕打ちをされる程の事をしたとは思っていない。何処までも自分が正しく、正義なのだと思っているし、ライラの関心を引きたかった行動に不随する影響を考えていなかった。それはレナードが言っていた王族としての自覚が足りないという事に帰結する。
「え?なんでだい?ジルベルトの心の傷は一生治らないんだよ?それに比べたら君達の髪は、また生えるし、骨だってくっついて治るじゃないか。軽いものだろう?」
心底、不思議そうに首を傾げるレナードに三人は、骨が折れて激痛に苛まれ、脂汗を流しながらも美しい笑顔に見蕩れてしまった。そして、その残酷さにも気付いた。
「ああ、それから『妨害』の件だけどね。まず、ロイトの階段突き落とし現場にジルベルトのペンが落ちていたと言っていたけど、あれ位なら、誰だってジルベルトの机から盗めるからね?本人が落としたとは限らないし、画鋲だって教科書を破ったのだって、誰だってできる。手紙だって、そうだよ。手紙が残っていれば、筆跡や紙、インク等から調べられるけどね」
淡々と情報分析していくレナード。実際これらは、まず現行犯でなければ、ジルベルトがやったとは断定できないモノばかりだった。
「これなら非力な女性でもできる事ばかりだね」
そう言って、チラリとライラを見るレナード。それに釣られて、その場の全員が、彼女に視線を向けた。
「え?私?…えっ、違うわ!!」
突然水を向けられた事に戸惑うライラ。その様子は小動物のようだったが、レナードはそんな様子に一切興味はない。
「事実、君が全てやっていたんだろう?」
断定的なレナードの発言に流石にライラはムッとしたのか、言葉を荒くする。
「違うわ!!証拠も無いのに適当な事を言わないで!!」
「君は、なんで、ロイトの手紙の事を知ってるんだい?」
「そんなの、ロイトから…」
訳が分からないといった表情をするライラ。それでも追求を止めようとはしないレナードは少し藍色の瞳を細める。
「そう。では、なんで手紙の色や差出人の事を知っているんだい?」
「だって、さっきロイトが…」
「言ってないよ。『嘘の手紙』としか言っていない。色や差出人を知っているのは、出した本人か、受け取ったロイトしかいないんだよ」
「それは……だって…ジョナサンやケネスだって知ってるでしょ!!いつも一緒にいるんだし!!」
「知らないな。ジョナサン知ってるか?」
激痛も忘れて、不思議そうにするロイトは復活したジョナサンに問う。
「いや、僕も知らないな」
その問われたジョナサンも不思議そうにしている。これにはライラは事態が不味い方に向き始めたと感付いたが、証拠など無いのだからと高を括った。
「見た方が、早いかな?」
ほんのりと桃色をした頬を長く白い指で数回叩いて、自分の懐に手を入れる。
「え?」
懐から出てきたのは水晶玉をだったそれは、映像を記録するもので、広く一般にも知られている。その記録された映像を再生するとジルベルトの机からペンを盗み、ロイトを突き落とした後にペンを見つけやすい場所に置くライラ、ロイトの靴に画鋲を仕込むライラ、無人の教室で教科書を破るライラ。
ロイトの机に自分の名前を書いた青い手紙を入れるライラ。彼女が足早に去ると、そのすぐ後にロイトが教室にやって来て机の手紙に気付く。差出人を確認、手紙を開封して中を読むと、教室にあるゴミ箱に捨て、立ち去る所で映像を止める。ロイト以外の一同は、映像で初めて手紙が青い手紙であった事を知った。
映像を見たロイト達から非難の目を向けられ、ライラは顔面蒼白でブルブル震え出した。
「それと、証拠ね。手紙だよ。紙は、一般に広く流通しているものだった。インクは、特注でね。ロイトが、君の為だけに調合させたインクだったんだよ。だから持っているのは、君しかいない」
懐から映像で見た青い手紙を取り出して皆に見せるように左右に振る。
崖っぷちまで追い込まれるライラに追い討ちをかけるレナード。どんな小さな芽も摘み取っていく。全ては、ジルベルトの為に。
読んでいただき、ありがとうございました。
天使の顔の暴力悪魔登場ですね。