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八十八話 見捨てられた浅井軍なんです


 決断を下してからの織田軍の行動は早い。


 この作戦のキーマンとなる羽柴秀吉は、軍議の後、すぐさま配下を集めて行動に移った。

 彼が最初に目指したのは、小谷城の西方に位置する拠点・山本山城だ。


 山本山城は浅井家の家臣である阿閉貞征が守っているが、この阿閉貞征は既に織田方への内応を約束しており、そのタイミングを窺っている状況であった。

 小谷城への総攻撃を仕掛けるとあって、彼を味方に引き入れるのにこれ以上の好機は無い。

 秀吉は山本山城に自ら出向いて頭を下げ、彼を誠意をもって迎えて見せた。


 こうして小谷城とは目と鼻の先である山本山城までもが織田方に落ち、いよいよ孤立無援となった小谷城に、織田家の軍勢が襲い掛かった。



 羽柴隊は小谷城のグルリと迂回し、背後に位置する大嶽砦を急襲。そして織田信忠率いる主力軍が小谷城を包囲。

 浅井軍の動きを完全に封じつつ、織田軍は朝倉が動くのを待っていた……。




◇◇◇




「朝倉軍が……動かない? 何かの間違いではないのか?」

「はっ、越前国の国境付近で偵察しておりましたが、朝倉軍の部隊を見かけるどころか、戦に備えて物資や兵が動いている様子も見られませんでした」


 信忠軍の本陣に転がり込んできた夜鷹衆の偵察部隊長・(とび)の報告に、その場に居合わせた者たちは疑問の表情を浮かべた。


「何を考えているのだ……朝倉は。臆病にも程があるぞ」


 信忠は腕を組み、考え込んでしまった。



 朝倉軍が動かないというのは、織田軍にとって想定外の事態である。しかし、状況が悪くなったという訳ではなく、むしろ好転したと言っても過言ではなかったのだ。


 前回にも話した通り、浅井・朝倉にはそれぞれ、お互いしか味方が残っていない。

 両者にとって、これが共闘して織田軍と決戦できる最期の機会であるのは明白だ。


 当然、浅井軍は朝倉軍に救援要請を送っているだろうし、だからこそ、彼らは援軍を信じて小谷城での徹底した籠城戦に挑み、未だに高い士気を保てているのだろう。


 しかし、朝倉が来ないとなれば話は変わってくる。

 浅井の援軍に動かない……それは『裏切り』だ。朝倉は浅井を見捨てたのだ。


 朝倉は保身のために最後の味方を切り捨て、浅井は最後の望みを絶たれることになる。

 織田軍にとっては、それは願ってもないことだ。

 結局は浅井が先か、朝倉が先かの違いだけなのだから。むしろ両者を同時に相手取る必要が無い分、織田軍にとって戦局は好転したと言えるということだ。



「どうする?」


 氏郷隊に配属され、今回の戦が織田家の一員としてのデビュー戦となる三郎……改め、『織田景虎』が、信忠と俺の顔を交互に覗き込む。



 余談であるが、旧名・北条三郎は織田家に養子として迎えられるにあたり、「いい加減に名前が三郎のままでは恰好がつかんだろう」と、新しい名前が与えられることになった。

 そこで何故か命名権が俺と信忠に渡ってきたのだが(命名権というか、名前を考える権利。ゴーサインを出すのは当然信長様)、そこで俺が発案した「景虎」という名前が、これまた何故か審査を通り、そのまま決定してしまったのだ。


 三郎は従来の歴史でいう『上杉景虎』にあたる人物なので、自分の中でややこしい名前がつけられることを回避するためにそう提案したのだが……。まさか採用されるなんて予想もしてなかった。


 信長曰く、「父上(織田信秀)と同じ名を持つ三郎に、父上の異名である、尾張の『虎』の字をかけておるのか。中々面白いではないか。気に入った!」とのことだが、当然そんな深読みはしていませんでした、ハイ。偶然です。


 それなら弾正忠信長の「忠」やら「信」の字を取って「忠虎」か「信虎」とかって名前になりそうなものだが、そうならなかった理由は俺にもわからん。あ、信虎は武田信玄の父親か……。


 歴史の修正力(タイムパラドックス)っていうのかな? 従来の歴史に向かって運命が動いているのか……よくわからんが、俺にとっては最も馴染みの深い名前に収まってくれて、ありがたいことだ。


 閑話休題。




「万が一、朝倉軍が攻めてこなかった場合は、そのまま我々が小谷城を攻め落とす手筈で問題ないだろう。一先ず、大嶽砦を攻めている秀吉殿との連携を取らねばな」


 信忠に代わって、俺が皆に言う。

 朝倉が来ぬならば、先に全力で浅井軍を滅ぼすだけだ。予定が狂ったが、何も問題は無い。


「常夜、秀吉殿の元へ向かい、大嶽砦への突入を前倒しして開始するよう頼んでくれ。我々もそれに合わせ、小谷城本丸への攻撃を開始する。鳶は引き続き、朝倉の監視・偵察を続けてくれ」

「「御意ッ!」」


 常夜と鳶の二人はそれぞれの任務の遂行のため、すぐさま走り去っていった。

 そして残る仲間たちへ、俺と信忠は向き直った。


「さて、想定外ではあるが、我らの見せ場がやってきた。小谷城は堅守で知られる名城だが、既に奴らの守備は丸裸だ。恐れるものはなにもない、迅速に小谷城を攻め落とすぞ!」

「「「おおっ!!」」」


 信忠の宣言に、皆が声を上げた。





1572年、春。

浅井を見捨てるという朝倉の想定外の行動に、織田軍は一転して浅井攻めを開始することになった。

久助たちの目標は堅城・小谷城。長年にわたって織田家を苦しめた浅井との最終決戦が始まるんです。


(おまけ)


~今考えた 夜鷹衆 組織図~


頭領   :滝川 久助 (通称:夜雀)

副頭領  :佐治 新助 (現在不在)

副頭領代理:ミケ


赤帯隊(久助の側近、護衛部隊)

隊長 :ミケ

副隊長:常夜 


黒帯隊(諜報・索敵部隊)

隊長 :鳶丸(モブ)


金帯隊(戦闘・暗殺部隊)

隊長 :(みさご)(モブ・未登場)

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