七話 高岡城攻めなんです
ギリギリ日付変更前に間に合った!
初の戦闘回&城攻め回ということで、資料集めや描写の工夫が大変でした。
なお、この作品は視聴年齢制限なしを貫きたいので、敵将を斬り殺したりとかそういう、年齢制限がかかりそうな描写は回避しています。
首級を挙げたりなんかは描写の範囲外でしてると思ってください。
では本編をどうぞ。
北伊勢の諸大名を攻める織田軍の勢いは、神速の如しと言うべきものであった。
道中の小城や小勢など意に返さずと、怒涛の勢いで進軍する織田の大群に北伊勢の城将は恐怖し、
特に先鋒を務めた若き超新星・滝川一益の勇名は、今後、戦国の世に広く知れ渡ることとなる。
〇〇〇
俺達の部隊は道中の村や城砦に火を放ちながら驚くべき速度で南下し、知勇兼備の名将・山路弾正が守る伊勢高岡城を目指した。
驚異の速度で高岡城に向け進軍出来たのは、無論俺の策があってのことだ。
俺は北伊勢攻略に向け出陣する前に、あらかじめ北伊勢の諸勢力に「近々、織田の大群が伊勢平定を成すべく、大群をもって殲滅戦を行う準備をしている」という噂を流していたのだ。
小勢力の小競り合いを続けていた伊勢四十八家の家々一つ一つに、強大な織田家と真っ向から挑める戦力などあるわけがない。
織田家に対抗するには諸勢力が手を結んだり、他国の勢力・・・武田などの大勢力に織田の背後を牽制してもらうよう頼むしか無いのだ。
しかし、俺が流した噂に諸勢力の将達は震えあがっただろう。
美濃・稲葉山城を攻略中のはずの織田軍が突如こちらを攻めてくるというのだから、準備も何も出来ていない彼らに対抗手段は無い。
伊勢四十八家の諸勢力は噂話に惑わされ混乱した・・・これが俺の策の第一段階。真っ赤なウソだ。
北伊勢を攻めるのは真実だが、稲葉山城を攻略中であるのも事実であるため、実はこの伊勢侵攻に大群を投入することは出来ないんだ。
小隊ごとに各城を奇襲し、戦の準備が出来ていない所を速攻で攻め落とす戦略も考えたが、
俺はあえて情報を敵方に流して混乱させ、敵の士気が下がったところに追い打ちをかけることで戦意を削ぎ取る策を取ることにした。
孫子の兵法でも、
「十なれば即ちこれを囲み、五なれば即ちこれを攻め、倍なれば即ちこれを分かち、
敵すれば即ちよく闘い、少なければ即ちこれを逃れ、しかざれば即ちこれを避く。故に小敵の堅は大敵の檎なり」
ってあるしね。
簡単に言えば、「自軍が敵の10倍なら包囲せよ。5倍なら攻めよ。2倍なら敵を分断せよ。同等なら必死で戦え。劣るなら逃げ、不利ならそもそも戦うな」って感じの意味だ。
いくら奇襲策を取るとはいえ、決して多くはない滝川隊を更に小隊に分けて戦わせるのは確実性に欠けるし、自軍に被害も出るだろう。
それに少数部隊で北伊勢一の堅城・高岡城を攻め落とせるとは思えない。
故に、力のない小家は戦闘せずに降伏させ、堅城・高岡城攻略に全力を投じる。これが今作戦の全貌なんだ。
△△△
「殿。佐々様の部隊が高岡城西方に布陣完了しました」
「ご苦労。さて・・・、それでは城攻めといくか・・・」
俺達、織田軍先鋒である滝川隊は道中の小家は続々と降し、予定通りに高岡城を東西から包囲していた。
前もって混乱の火種を撒いておいた甲斐あってか、殆どの敵勢力は織田の軍勢と刀を交えることもなく降伏し、僅かにあった戦を挑む軍勢も、織田家の勢いの前には無力であった。
俺達、滝川隊は破竹の勢いで進軍し、高岡城付近に陣を張った。
だが、城攻めをするには先鋒軍だけでは数が不足するため、予め要請していた援軍である佐々隊が到着し包囲が完成するまで待っていたんだ。
これで本格的に城攻めが開始できるだろう。待ちに待った新兵器のお披露目だ・・・クックック。
ちなみに増援として信長様が派遣してくださったのは、織田家中のエリート軍団・黒母衣衆を率いる重臣、佐々成政様だ。
言わば、俺の初陣となる今回の戦のお目付け役だな。佐々様のような大物を態々回してくれた信長様には感謝せねば。
「まずは我々から攻勢に出る! 滝川軍足軽部隊、前進! 『火筒持ち』は『赤玉』を打ち上げよ!」
と、俺は皆に指示を出す。
新助が率いる足軽隊はオオッ!と声を上げ、法螺貝を鳴らす。高岡城攻略の第一手として打って出たのだ。
それとほぼ同時に、天に向かって一つの玉が打ち放たれ、それがドォォォォン!という轟音と共に炸裂し、赤色の火花と煙を昼空一面散らす。
これが俺がこの戦に導入する新兵器その一、『信号花火弾・赤玉』だ。
◇◇◇
これ、『新兵器』とか『信号花火弾』とか大した名前で呼んでいるが、要はただの何でもない打ち上げ花火である。
それも現代のようにカラフルで鮮やかなものでもない。とりあえず遠くからでも見える程度に目立って、色を伝えるという目的さえ果たせばいいだろうという、実に簡素な花火弾なんだ。
現代なら無線通信で部隊ごとにリアルタイムで連絡を取り合って連携攻撃を行うことができるが、勿論この時代に無線通信機なんて存在しないし、流石の知識チートでもトランシーバーは愚か電波信号を送受信することすら不可能だった。
そんなこと出来たら何も困らねぇわ・・・。タイトルも「近代科学で戦国の世をぶっ壊す!」とかに変えなきゃならんね。
それはいいとして・・・。物見の者を出して情報伝達するのでは、どうしても移動によるタイムラグが発生してしまう。
それを改善する為に導入したのが、今回の信号花火弾なわけだ。
今回はとりあえず『進軍』の赤玉、『退却』の黒玉を用意し、城東に陣を張った滝川隊と西に陣を張った佐々隊でリアルタイムに連携攻撃してみよう!という作戦なのだ。
この時代には本来花火は存在しているが、貴重な火薬の無駄遣いという理由で嫌厭されていた。
花火なんかにつかう火薬があったら、鉄砲に使うよねっていうことだ。
赤と黒の二種だけではいずれ敵軍に信号の意図を解析されてしまうだろうが、それはいずれ対策すればいいし、今回は問題ないだろう。
▽▽▽
滝川隊と佐々隊は花火弾によって交互に進軍と撤退を繰り返し、東西から敵軍を錯乱し続けた。
片側の軍が撤退するのと同時にもう片側の軍を突撃させることで、敵軍の追撃を防ぎ安全に撤退とせることが出来た。
更にこちらの軍は兵を休めることが出来るが、敵軍は東に西にと休む暇なく兵を展開して迎撃にあたらなければならない。
敵軍の兵の顔には疲労の色が見え、士気は見るからに下がっていた。
想像以上に、花火弾による連携波状攻撃作戦は効果覿面だったようだ。
佐々様もこの奇策に上手く順応し戦ってくれた。流石は織田が誇る黒母衣衆を率いる名将だ。
「頃合いだな。そろそろ仕上げだ。"アレ"を出す! 両味方部隊を敵城門から下げさせよ!」
「おっ、久助のダンナ。ついに"アレ"の出番か! アレの扱いは任せておきな!腕が鳴るぜ!」
「ああ、嘉隆。合図を出したら作戦通りに頼む。俺は降伏勧告のために敵城に向かう」
嘉隆に後を任せて配下に指示を出し、俺は馬に跨って城へ向かう。
遂に新兵器第二弾、とっておきの攻撃兵器のお披露目だ。
俺も嘉隆もこれを実践導入するのが楽しみでたまらなかったんだ。
試験段階では多少安定感に不安があったが、まぁ嘉隆なら大丈夫だろう。いずれはその手のプロになる男だしな。
俺は若干ニヤニヤしながらも馬を駆けさせる。
やがて高岡城を前に少し離れた場所に待機していた自軍の足軽兵団の少し後方まで来て馬を止めた。
そして俺は、手にしていた軍配を高らかに掲げ、そしてゆっくりと振り下ろした。
直後だった。
「ドゴォォォォォォォォォォォォォン!!!」
本陣側から聞いたことも無いような爆音が戦場全体に響き渡った。
そして俺以外の皆がその音に驚き、耳を塞いだり、その場にしゃがみ込む中、
俺だけは一人笑みを浮かべ、そして。
ガァァァァァァン!!!という音が高岡城から聞こえ、何事かと皆が視線を向けた時、
高岡城の一角が煙を上げ、崩れ落ちる光景を目の当たりにするのだった・・・。
作戦の成功に、俺は笑みが止まらない。
これが俺が隠していた"とっておき"。
新兵器ナンバー2。
『対城砲・鳴神』の威力だ!!
1567年、冬。 一益が初めて戦の常識をぶち壊した瞬間なんです。
大筒導入の意図や経緯、高岡城編完結などは次回に持ち越しです。時間が足りなかった・・・。




