六十一話 戦の華なんです
執筆環境が一時的に変わったため、一部変かもしれません。
タブレットからの投稿と慣れないローマ字入力に苦戦しているため短めですが、PCが直るまではお付き合いください。
織田軍と浅井・朝倉連合軍の状勢は完全に逆転していた。
突如現れた織田軍の猛将・前田慶次を相手に、雨森弥兵衛などの戦力を投入するも討ち果たされ、連合軍は有力な戦力を次々と減らしていった。
前田慶次はそれほどに強かった。なにせ違う世界から来ているのだから、文字通り次元が違う強さである。
そもそも慶次の得物であるハルバードは、この世界には存在しない素材・製法で作られている。
この世界・この時代に使われている革や鉄製の鎧や、業物と呼ぶには及ばない程度の刀・槍では、彼の得物と打ち合うことすら許されない。
迎え撃つ刀、そして身を守る鎧ごと、慶次は豆腐を切るかの如く一閃にて斬り捨てるのだから、なんと理不尽なことだろうか。
防具に関しても同様だ。端から見たら軽装な彼の装備は、数打ち物の粗悪な刀ごときでは傷も付けることさえ叶わない。
この時代の武器で彼の装甲をぶち抜くのであれば、打撃系武器で肉体にダメージを負わせるだとか、爆弾で吹っ飛ばすだとか、それなりの得物で装甲の薄いところを斬りつけるとか、普通の人間相手ではない対策が必要であったりする。
だが、当然ながら浅井・朝倉の兵たちはそんなことを知るはずがない。
いつかは必ず打ち倒せると、叶うはずもない希望をもって兵を消耗し続けた結果、その損害は建て直しが利かないところまで来てしまった。
前田慶次ただ一人を相手に失った兵、その数なんと千。
後の世まで語り次がれる伝説となる「坂本の千人斬り」の活躍により、宇佐山城と城主・森可成ともに健在。
三万の兵力をもって攻め込んだ連合軍は、遂に戦果をあげることなく敗走を開始することとなる。
◇◇◇
まず真っ先に逃げ出したのは、案の定と言うべきか、予想通りと言うべきか、朝倉家総大将・朝倉義景であった。
彼は前田慶次に勝ち目がないと見るや、重臣の朝倉景健に殿と撤退指揮を任せ、早々に越前に引き返してしまった。
実は早々に諦めて撤退を決めた朝倉義景の判断が結果として正解であったのだが、それによって連合軍の戦線は崩壊する。
「なんだ、もうお開きかぁ?」
得物を肩に担ぎ直し、逃走を始める連合軍の兵を眺めながら、慶次はそう呟く。
もう向かってくる敵が居ないなら、慶次の仕事はここまでだ。逃げる相手を追っかける追撃戦なんて、そんなつまらない戦いなどさらさらするつもりのない慶次は、あとは他に連中に任せりゃいいかと、気の抜けたため息を吐いた。
「それにしても......」
眼前に広がる死体の山を見ながら、彼は思う。
「よくもまあ、この世界の命の軽いこと軽いこと」
自分で殺しておいてよく言えたものである。
彼が元居た世界でも、命を懸けた戦いと言うものは存在していた。彼も魔獣なんかと戦うハンター家業をして食い繋いでいた人間なので、いつも死が隣り合わせであったことに関しては、ここらに転がる骸と自分とで何も変わらない。
ただ違うのは、何のために命をかけて戦うのかと言うことだ。
彼らは国のため、領主のため、家のために命を捨てる覚悟で戦っている。
今日を生きるための金を得るために戦ってきた慶次の世界とは、根本的なものが違う。
命が惜しければ逃げればいい。逃げて、生き延びて、次勝てばいい。
簡単なことなのに、この国ではどうにも死すことを誉れとする風潮があるらしい。
それだけで、敵う筈もない敵に対し、笑いながら死んでいく。
そんなくだらない戦の流儀が、何となく、ちょっとだけ華やかに思えた。
「(戦の華は、こういう咲かせ方もあるのかねぇ......)」
誇りに散った武士らに黙祷を捧げ、彼は踵を返す。
「さーて、帰って一杯やるとすっかね」
そう言い残し、未だ戦闘が続く坂本の地を、もう用はないと言わんばかりに彼は後にしたのだった。
その戦場に、彼の求めたものはもう残っていなかったから。
1570年 秋。
形勢を覆した織田、逃げ出した浅井・朝倉、そして全てが遅かった徳川。
そして裏切りの徳川に鉄槌を下すため、長可の猛攻が始まるのです。
PCの復帰は相変わらず未定です。修理業者からも音沙汰がなく、ちょっと不安です。
でも頑張って執筆を続けていくので、間が空いても気長にお待ちください。
よろしくお願いします。
【追記:9/19】
突然ですが、ローファンタジーの新作
「女神サマのガイドブック ~異世界転生できなかったので、チートを貰って日本国内を観光することになりました~」
を連載開始しました。
旅行好きでそういう資格の勉強もしてる作者が国内の観光地を語る作品となっております。
是非よろしくお願いします。




