五話 来たる戦の備えなんです
手短に書こうとしたら、過去最高の長さになった。
何を言っているかわからねーと思うが(ry
主人公の立場的にも、北条方の初登場はもう少し後になります。
北条ファンの方々には申し訳ありませんが、もう暫くお待ちください。
早く北条氏政を出したい・・・。
1567年、秋。
あの謁見の後、俺達は居城・蟹江城に戻り、しばらくは内政や軍事整備を進めていた。
父から譲られた領地は広くはないが基盤がしっかりと出来ており、混乱も無く受け継ぐことが出来た。
奇妙丸様も物珍しそうな顔をしながら俺の仕事を見ていた。どこへ行くにも離れず付いてくるのだが、そんなに面白いだろうか・・・? まぁ勉強熱心なのはいいことだな。うん。
ちなみに蟹江城っていうのは、現在で言うと名古屋市のちょっと西あたりに位置した平城だな。
この城は史実の滝川一益にとって重要な城になるんだが・・・まぁそれはいいだろう。
俺は北条家に会いに行かなきゃならねぇんだ。いつまでも尾張に縛り付けられてる訳にはいかん。
早く出世して、史実よりも早く関東方面を任されるような大物にならないと。
ま、そのためにこうやって戦の準備をしてるんだ。焦りは禁物、コツコツとね。
読者の皆さん、北条氏が出てくるまでもうちょっと待ってくれよな。
なんちゃって。
◇◇◇
「して、久助よ。この巨大な物体はなんなのだ・・・?」
「あぁ、これはな・・・」
というわけでだが、俺達は今日、織田領内のとある港の村に来ていた。
軍事整備の一環としてここまでやってきたのだが、わざわざ海の近くまで来たのには理由がある。
実は、前々から信長様より、今後しばらくは伊勢・長嶋方面の守備に就けと任命されていた。
これは史実通りの流れであるので、この先に起こる戦が俺には予想出来る。
その為、この先の戦で必要となるであろう、とある『兵器』の開発を以前からコツコツと行っていたのだ。
今日はそれの製作具合を視察しに奇妙丸様とやってきた。ということで、冒頭の会話に戻る。
余談だが、奇妙丸様や新助など同世代の友人といえる人達には「久助」と呼んで貰うよう頼んだ。一益と呼ばれ続けていたら、大切な自分の本名を忘れちゃいそうで怖かったんだ。
その代わり奇妙丸様からは「ならば俺に対しても友人のような言葉遣いをしろ」とタメ口で話すことを強要されることとなった。
喋りやすいからいいんだが、周りの目が怖い・・・。
「今度の戦に使う予定のモンなんだが、その説明をアイツに・・・」
「アイツとは?」
「えーとちょっと待てよ、そこの大工、頭領を呼んできてくれないか?」
俺は木材を運んでいた作業員の大工を捕まえて、目的の人物を呼んで貰った。
数分待つと、その大きな物体の中から一人の男が出て来て俺達に声をかけた。
「おう、久助のボウズじゃねぇか! それに奇妙丸様まていらっしゃるたぁな! 今日はどうしたんだ?」
「ボウズはやめてくれ、俺だって一応成人したんだからよ・・・。あと俺はもう久助じゃなく一益だ。どっちで呼んでもいいが、一応な」
「ハッハッハ!! すまねぇな! 久助の旦那!!」
豪快に笑う、いかにも海の男といった風貌のイカツイ男。
都会暮らしのお坊ちゃんである奇妙丸様がその風貌に若干引いているが、この男こそが目的の人物だ。
「奇妙丸、紹介するよ。この男は嘉隆。九鬼嘉隆だ。父と縁のある人物で、水軍の扱いに長けた男なんだ」
「奇妙丸様、はじめてお目にかかる。俺が九鬼嘉隆だ。最近織田家に仕えることになった新参者だが、久助の旦那の命で、今はここで造船作業と水軍の調練をさせてもらってるぜ」
と、嘉隆は奇妙丸に頭を下げた。
〇〇〇
九鬼嘉隆は戦国時代中期に織田家・豊臣家の水軍を頭領として支え続けてきた、通称・海賊大名である。
この時代から関ケ原まで戦国の世を戦い抜いた猛将だ。
戦国時代を代表する水軍と言えば他には毛利の村上水軍が有名だが、その村上水軍にも勝利している、天下一の水軍頭領と言っても過言ではないだろう。
ちなみに余談だが、この九鬼嘉隆の子孫はプロ野球選手をやっているらしい。やっぱり優れた遺伝子ってあるんだなぁ。
△△△
「其方が九鬼か。俺とは顔を合わせたことは無かったはずだが?」
「奇妙丸様はその仕草や雰囲気まで信長様とそっくりだ。一目見りゃわかるってもんよ。しかし、"奇妙な顔をした奇妙丸"って聞いてたが、うむ、なんとも美男子じゃねぇか! ワハハ!!」
なるほど。と奇妙丸は頷く。
確かに奇妙丸という名は「奇妙な顔をしているから」という理由で信長様に付けられた幼名だが、まぁ男児三日会わざれば刮目して見よと言うし、成長すれば顔付きだって変わるさ。
奇妙丸はファザコンなので父から貰った名前を大層気に入っているし、顔立ちは殆ど気にしていない。『男は顔ではない!腕っぷしだ!』と言っていた。
イケメンのアンタが言っても全く説得力が無いんだが・・・。爆発しろ。
「して・・・、あの建造物はなんだ? 砦でも作っているのか?」
と、奇妙丸が尋ねる。おっとそうだな、いい加減話を本筋に戻すか。
「あぁ、詳しくは嘉隆が説明してくれるが・・・、あれはな、『船』なんだよ」
「ふ、船ェ!? アレがか!? あんなデカいものが水に浮くのか!?」
奇妙丸はらしくも無く驚愕する。
そう、俺が嘉隆に造らせていたのは海戦用の船・・・それも普通の船ではない。鉄甲船と言われるヤツだ。
「あの船は『鉄甲船』と呼んでな、元は久助の旦那の発案なんだ。読んで字の通り、従来の安宅船に大量の鉄板で周囲を囲んだ、鉄壁の守りを持つ要塞型装甲軍艦だ!」
嘉隆の大まかな説明の通り、この『鉄甲船』は一言で言うと、装甲を鉄で固めて防御力を格段に向上させた船である。
史実でも滝川・九鬼が率いる水軍に導入され、他の船を圧倒する巨大さ、弓矢や鉄砲を通さない堅牢さ、そして大砲による火力によって、従来の海戦の常識を粉々に打ち砕いたという逸話は有名だ。
本来の史実では、1578年の第二次木津川口の戦いで初導入される鉄甲船だが、そこは知識チートの見せ所だ。
造れるなら早めに造っちまおう! ということで、信長様に許可を頂き、10年程前倒しで造船に着手していたのだ。
更にそれだけではない。この船は従来の鉄甲船よりも更にデカイ。
生前に「俺が戦国時代に船を造るなら、どんな船にするか」みたいなのを自由研究のテーマにしたことがあったので、その時の記憶を頼りに、この戦国時代の技術の塊のようなバケモノ戦艦を造ってしまったのだ。
「俺にも最初は信じられなかったんだがな、重くて水に浮かない鉄で囲っても、水に沈む船底部分を広く確保することで、水に浮き、しかも揺れにくい船ができるって言うんだ。これは久助の旦那から聞いたんだ。スゲエよな」
ウンウン、と頷きながら嘉隆は言う。照れるな。
巨大な鉄甲船が沈まずに海に浮くのは、従来より広く取った船底部分に溜まる空気が浮力で水を押し返すからだ。
その辺の細かい話は物理学の領域で俺の専門外なので割愛するが、そんな工夫で、デカく揺れにくい、安定した巨大戦艦が出来たというわけだ。
他にも船全体の重心を下げて波の影響を減らしたとか、ビルジキールのようなモノをとりつけて揺れを軽減させたとか、船体前方を現代の戦艦のように細く尖らせ、水の抵抗を減らしたとか・・・とにかく、思いつく限りの色々な工夫をしたのだ。
「なるほどな・・・。こんなものまで思いつくとは、流石は神童・滝川久助だな!」
「まあな・・・神童まで言われるとちょっとむず痒いけど」
受け売りの知識をぶっこんだだけだけど、素直に誉め言葉を受け取っておこう。
▽▽▽
そんなこんなで、鉄甲船の内部まで完成具合を視察し、奇妙丸も大満足で今回の視察は終わった。
「アレが大海原に打ち出る姿を見るのが楽しみだぞ!」と興奮して言っていたな。うん、俺も楽しみだ。
今日の鉄甲船以外にも、俺がコツコツと造っている軍事兵器はあるのだが、
それらはおいおい、実践投入する時に紹介していこう。
楽しみは、後に取っておくべきだよな。フフフ・・・。
1567年 新兵器の視察を終え、一益は初陣の時を迎えるんです。
次回、ようやく初陣、北伊勢侵攻です。




